時雨の夜咄茶事2023〜速水滌源居 - 2023.12.05 Tue
茶道速水流家元のお宅である速水滌源居、北野天満宮、平野神社のご近所である。

今宵はこちらで夜咄茶事、<時雨の茶事>である。
初めて時雨の茶事に参席したのはコロナ禍渦中の2020年、3年前であった。途中でほんとうに時雨れてきて肌寒い日で、客も3名という(4名中おひとり気分不良にて)理想的な夜咄であった。今年久々に参席。
門を入って露地行灯に導かれるまま、奥へ奥へ。幽玄の世界の始まり。(いや、これだけの蝋燭をつけるのはさぞお手間であったことだろう)
まったく電灯を使わないので、露地も真っ暗、足下も手燭だけではちょっとおぼつかないくらい。ただし、十四夜の月が明るくてありがたい。昔の人の月への憧れがなんとなくわかる。
広間にて初座
本日はお客さん5名、正客様、次客様が本願寺派のお坊様。
座敷も短檠と手燭だけなので、目が慣れるまではおぼつかない。
手燭の灯りで見る掛け物は光格天皇の弟宮・聖護院宮盈仁親王(えいにんしんのう)の漢詩。
流祖速水宗達は、裏千家一燈の弟子、もともと御典医の名家出身であり、茶の湯の研究をした学究肌の人であったため、盈仁親王の茶道指南を通じて、お茶を愛した光格天皇(18世紀 朝議朝権の復活に熱心であった)の支持を受け、御所風の茶風(襲の色目の帛紗なども)を確立していった御家である。
炭手前で、釜を上げると見える炭火が暗い座敷では頼もしい。釜は「滌源居」の鋳込みがあり、流祖の頃から使われていたという釜。
羽根が野雁であって、よく見ると虎縞、、どうも宗匠はタイガースファンらしい(^_^;(のちに虎柄の備前酒器もでてた)
光格天皇から仁孝天皇へかわる大嘗祭で使われた建物の古材で作られたという、さすがの香合、ぶりぶりで、花食鳥蒔絵。これも暗い中で扱うので要注意。
懐石の時には思いっきり膳燭をだしていただいたので明るく。膳燭には50号くらいの大きな和蝋燭、これは迫力あって明るい。お酒は白酒(しろき・大嘗祭に使われるお酒になぞらえて)、宗匠はお酒がお強い。八寸の時など千鳥でだれだけきこしめされたか(^_^;
(画像は3年前のもの)
最後に川端道喜さんの「雪餅」を食べて中立。
宗匠から建仁寺の茶会の時に「道喜さんではお菓子は黒文字を使わずに手で食べて欲しいといわれている」とお聞きしているので、手づかみ。黒文字でぐちゃぐちゃにつぶすよりはスマートだと私も思う。(きんとんなどは別だが、、、)
中立の時には奥庭の前にある四阿の小間茶室にて待つ。3年前はこのときに時雨れてきてとても寒かった。この小間にともされた瓢の灯りと煙草盆の火入れの火のあたたかさ(視覚的にのみだが)がありがたかったことが忘れられない。
今年は寒さはましである。四阿の暗さと庭の遠慮がちなライトアップ両方を楽しんで、銅鑼の音を待つ。
後座の花は竹一重切(流祖だったか?)の花入に椿、ハシバミ。
炉の火は赤々と。濃茶は久々に回し飲みの一碗、白っぽい古萩である。茶入は宗達箱の黄瀬戸、これも白っぽいので、暗い中に映える。
そして本日の主役、「しぐれ」の茶杓である。
この茶杓は、流祖宗達が削り光格天皇に献上、その茶杓が巡り巡って堂上家の一つ、勧修寺家へ、そして勧修寺家より「時雨」の銘と和歌とともに速水家に下賜、戻ってきた茶杓なのである。
蟻腰、長年の使用でつやつや、結構男前な茶杓であった。天皇さんの手にも触れたと思うと感慨深いなあ。
続き薄で使われた薄器は竹製で、蓋裏に花押、蓋表面に楓の漆絵。描いたのは本願寺の大谷尊由(明治〜昭和)、ここらへんお正客様次客様を意識。尊由はかの有名な大谷探検隊の大谷光瑞の弟になる。
かくして暗い座敷で各自御礼をのべてお開きとなる。
ああ、やっぱり夜咄はいいなあ。電灯に慣れた目や生活習慣では思いもつかないが、きっと昔の人は暗闇はこわかっただろうし、蝋燭の明かりは影が多い。灯火で見る茶道具もまた風情があるのである。
滌源居を辞して外に出れば22時ごろ、中天に上った月がいかにもさやけき、と言い表したいくらいであった。
宇治縣神社〜藪内の茶事2023秋 - 2023.12.02 Sat

年2回春と秋の薮之内の若武者の茶事。
恒例のお楽しみになっていて、もう宇治へのドライブもナビいらなくなった。(初期の頃よ〜く道間違えた)
縣神社の奥にある露地の木々も少し遅いながら紅葉。
前日のお掃除も大変だったと思うが、きれいに清められた蹲居を使って席入り。
茶室・棠庵(とうあん)は薮之内十二代・猗々斎(先々代)作。
点前座がほぼ燕庵である。間取りは三畳台目+相伴席の燕庵に遠慮して四畳半+台目、毎年藪内流家元による献茶式がおこなわれる格式ある茶室。
上下2つの下地窓を通した光がを背景に点前する姿は美しい。
今回ご連客の中に薮之内の家元でお稽古されている方がいたので、いままで疑問に思っていた所作の数々をお聞きできて良かった。
一番流派バリエーションのある炭手前で、ついだ炭の一番上に置く枝炭を、釜の底でぐりぐりして割る、というのを不思議に思っていたが、粉にして火の通りをよくするためで、寒い時期には盛大に、暖かくなると遠慮して少し、というのがロジカルであった。
あと炭の置き方は三方向の導火線になっていることも。いままでなんとなく自流と違うな〜と思っていたことに見識をあらたにできた。
弾きの織部香合はよくあるが、4つの小さい足がついているのは初めて見た、と思ったら、薮之内の家伝の形なんだってね。初代剣仲は織部の義弟になるから、これが本歌か。
懐石は広間にて。
広間においてある茶壺の紐の結び方が独特。これは茶壺の中を使ってしまって空になったときの結び方なんだそうだ。
元々、男子ながら懐石つくるのお上手だったが、奥様が懐石をされるようになって、さらにバージョンアップ。向付のキンメのお造り見た目もお味もとても結構。
自分が作るとどうも中まで火が通らず生くさい蓮根餅も、美味しい。コツを伝授してほしい。白髪ネギのあしらいも。
同じく宇治の興聖寺で陶展中のいつもつるんでいる茶友さんたちと一緒の席だったので、ほんま楽しかった♪
ちなみに陶展の様子はこちら。↓
老松さんのきんとん「錦秋」をいただいて中立。
後座の床
ちなみに給仕口は広間に通じるショートカットになっていて、使い勝手が良い。
特筆すべきは水指、唐津のゆがんだ片口なんだが、この片口に合わせて立体的に作られた塗り蓋。よくこんな3Dに作ったね〜と感動。
濃茶は茶入が一入の「冠者」。薩摩に似たイメージで、耳付なところが太郎冠者の棒しばりみたいなイメージだからか。茶杓は宙宝の「千秋」。各服でいただいたお茶碗はきれいな枇杷色の御本茶碗であった。
薄茶はまた席を改めて、今度は水指が古清水の透かし彫りのある二重になっているやつ。お茶碗にも古清水がでていて、この時代の京焼はしぶくていいねえ。(辰砂が高価だったので、赤色がほとんどない)
香合が狸香合で??と思ったら、ご亭主、学生の頃興福寺・宝蔵院隆槍術をされており、伝統的に正月の初稽古の時に狸汁をふるまう<狸汁会>というのがあって、それにちなんでとのこと。ちなみにいつの頃からか、狸のかわりにコンニャクを使うようになったそうである。(そりゃそうよね、お寺で生臭はアカンし、狸の肉は超くさいらしいし(^_^;)
下に敷いた唐草模様の古帛紗は○ザワヤで買った布でみずから仕立てはったそうだ。なんでもできるんねえ。
(紅葉の季節のコーディネート?)
薄器は女郎花の蒔絵の棗であるが、女郎花は流派的に大切な花とかで、薮之内中興の五代・竹心のお好みだそうだ。黒い中にすっと一本立つ金蒔絵の女郎花の風情がよろしかった。
今回も薮ノ内流に関して学ぶこと多々、なにより楽しい和やかな一会、感謝である。
東京で若い茶人さんの茶事 - 2023.11.13 Mon
何度か、うちの茶事にもお弟子さんと来てくれたことのある東京の茶友さん。お若いのにたくさんのお弟子さん、しかも多彩な職能のお弟子さんがおられる。彼自身もお茶の教授者ではあるけれど、お茶にまつわるあれこれ、いろんなイベントをリアルでネットで仕掛けるイベンターでもある。
かれこれ10年以上前からその存在は存じ上げていたが、その頃は彼もまだ今より若く、その破格な活動に顔をしかめる先達者もいただろうと思う。しかし、そんな重圧をものともせずに今まで続けてこられた活動は多くの若者を茶の湯の世界にひきよせて、いまや一目おかれる存在になったと思う。
一度茶事によんでね〜とくりかえし言うもんだな(^_^;やっとお招きいただいた。
場所は東京、彼が道場にしている大きな数寄屋のお家である。
数寄屋の一室の壁をまるごとガラスのサンルームにしたという待合には挽きかけの茶臼が!
一気に口切り気分になった客はわいわい言いながら、それぞれごりごり臼を挽く。反時計回りだよね、挽く早さは、、、早すぎると熱をもって風味がそこなわれる、、、云々蘊蓄大会。ここでもう客の心をわしづかみ。
待合には小林逸翁の「天衣無縫」の軸。それまでのいわゆる近代数寄者と異なり、普通の人が日常生活の中で楽しむ茶の湯をひろめようとした逸翁、なにかご亭主に通じる物があるのかも。
大きな備前の鉢が蹲居になっていたが、これ、なんと私も存じ上げているところの(茶入も持ってます〜)出雲の陶芸家、安喰ヒロさんの作品。なにかの東京のイベントで初対面であったにもかかわらずぽんとプレゼントしてくれたんだとか。ヒロさんには一見して感じるもの、響き合うものがあったに違いない。
本席は八畳の広間にて。「関〜南北東西活路通」は孤篷庵の今のご住職の字。
本日の客は皆茶事の手練れ、つわもの揃い、みんなご亭主よりはるかに年上、きっと茶事に招くのにちょっと「関」を越えることを求められているというご心境か?(^_^;
そして茶壺。脇床に飾られた香合はリモージュという彼らしさ。
格式高く紹鴎棚。(これの扱い、私はあんまりできない)これに入れるべき背の低い水指は、オールドノリタケのおそらくボンボン入れ?の見立て。

懐石方もお弟子さんである。
普通炉開きには汁は白味噌がお決まりだが、この日の関東は11月というのに夏日の暑さで汗まみれ、塩からい赤だしがほんまに美味しかった。心遣いがにくい。
二椀目の汁がカボチャのすり流しになっていて実がチーズ!とか、魚のすり身入り蓮根餅の煮物椀とか、パルメザンチーズをふりかけたケールとか、八寸の里芋はバルサミコをまぶしてあるとか、思わず参考にと、メモメモ。この懐石がまたご亭主のお茶に合っているんだわ。さすがの師弟関係。
(バジル入りの白和え!)
水屋のお弟子さんは、大学で「数寄とは?〜現代数寄者とは?」について論文執筆中。その論文制作中、私とちょっとしたご縁があって、本日お顔を見せてくれた。クローズドのYouTubeで論文内容を発表されたのを拝見、面白かった、ほんま。はやくペーパーになった論文を拝見したい。
後座
南米の七宝的花入れに、今まだ咲いている芙蓉、ヤブカラシの照り葉、桐の実。
ちょうどお茶を練っている姿が障子を背景に逆光シルエットになって、絵になっていた。少し前屈みに丁寧に。いろいろアバンギャルドな試みもたくさんされて、イベンターでもあると言ったけれど、やっぱり基本は茶人なんだなあ、、、とそのお姿を見て思った。
碗なりの粉引で、久々に一碗を回しのみ、ここのところ各服点てばかりだものね。
さて、薄茶は花月の員茶(かずちゃ)のご趣向で!
大きな折据に十種香札のうち5枚をいれて、当たった人がお茶を飲むという。めったにする機会のない員茶なので、これもあれはああだ、これはこうだ、と客のなかで大騒ぎ。盛り上がって楽しかった〜。これに使った茶碗が朝日焼当代のあの月白釉の茶碗だったのにひそかに感激。大騒ぎのうちに楽しくお開きとなる。ありがとうございました。
この茶事をふりかえると、名物はなくとも「胸の覚悟一、作分一、手柄一」という「山上宗二記」の言葉を思い出した。(お弟子さんが執筆中の論文のことを考えていたので)利休に回帰する本日のご亭主もまさしく<現代>数寄者のお一人に違いない。
神無月の乙女の茶事 - 2023.10.19 Thu
お茶乙女のおひとりKさんが初めて茶事によんでくださった。彼女はすでに何回か茶事をされているが、予定が合わず、今回ようやくやっと参席がかないました。長いお付き合いの三人でいそいそとうかがううれしさよ♪

席はKさんのお茶の先生のお宅、マンションなのに四畳半と小間の茶室がある。あれこれすごいうまいこと工夫されていて、Kさん自身も来るたびにどこか手がはいってリノベされていると驚かれることも多いそうだ。その創意工夫、無いものは作る!という佗茶の精神そのものお茶にふれて、師事を決められたという。
驚くのはその上ここに住んでもいらっしゃるということ。所帯あることを全く匂わせもしない見事さ。
待合に堂本印象の柿と栗、モズらしき小鳥。
まだ若い乙女ゆえ道具の数には限りあり、先生のお道具とのコラボだが、汲みだしなど気に入ってコツコツと集められたお道具も。
バルコニーの露地をつたって席入り、見事な蕨箒がかかっていたが、これも先生のお手製なんですって!花の鉢植えもたくさんおいてあり、ここがマンションの階上であることをふと忘れる。
本席の軸は「彩鳳舞丹霄」
五色の羽根をもつ鳳凰が暁の空に舞う、、、というおめでたい禅語、なにかおめでたいのかな〜?と思っていた私の方がおめでたかった(^_^; 自分の歳をすっかりわすれていて(確信犯)私のための長寿祝だったとは!Kさん、ありがとう〜。
向付が共通の茶友の陶芸家の浅井慶一郎君のもの。これも思い入れのお道具。
紅白の餅もお祝いだったのね(^_^;
懐石道具も少しずつ集められているとのこと。茶道具だけでなく懐石道具まで集め出すとほんとキリがなくてどんどん物は増えていくが、コツコツと集めていくこの楽しさよ。まさに沼!だわ。また道連れ、、、いや、同志ができた。
これもKさんの好きな、そして私も大好物の土本夫妻の石杯。象嵌の波兎、竹生島やわ、これかわいい、と言いながらお酒もたくさんいただいた。次客さんと謡曲「竹生島」の一節をフルに思い出そうとがんばるが、あれれの記憶力では、、、(^_^;
そういえば切掛け風炉に乗った釜の鐶付も兎。
これは先生秘伝のレシピの八寸の一つ。黄身に酢を混ぜてスモークサーモンで巻いたもの。この黄身がとても美味しくて、なおかつお酒がすすむ。正確なレシピは不明だが、ちょっとマネして作ってみよう。
炭道具も只今集め中、それなりにそろってきたみたい。炭手前の香合が舟だったので、、、
主菓子も舟!宝船。
浮島に宝船の焼き印?かと思ったら、シナモンパウダーのステンシルだった!すごい、焼き印にしか見えない。ステンシルを作る方がお手間なのにありがたい。いや自分のことながらますますめでたい。
後座の花は、石榴、桜蓼、木イチゴの照り葉。
膳所の茶入は、私がKさんに差し上げた物で、あげたことすらすっかり忘却の彼方(^_^;になってまして、スミマセン。使っていただいて感謝です。きっと茶入も喜んでいると思います。
茶杓が、私の修二会オタクをくんで、お松明の竹でできたもの。修二会1250回(昨年)を記念して1250本つくられたうちのひとつ。裏に正倉院文様の一つが描かれている。この茶杓は守屋長老のものであったが、たくさんの東大寺長老方がそれぞれ銘をつけ、正倉院文様もそれぞれ違ったもの、という組み合わせなので、おそらく同じ物は一つとないと思われる。
この一本の銘は「知足」、ご亭主から「足りていることも知って欲しい」というお言葉をいただいた。う〜ん、色々考えさせられるなあ、、(^_^; 欲しい欲しいと際限ない欲をだしてはいかんな、、、
続き薄にて薄器は波の螺鈿棗。舟がこぎだす海、老の道へこぎ出すのもまた人として避けられぬ運命ゆえ、終着地点にたどりつくまではまだまだがんばろう。
干菓子も先生お手製、このすはまの枝豆にはもう感激!
莢の中にちゃんと豆まではいっているの!うれしくて豆ほじって食べました!
お茶碗もひとつひとつ集められたもの、平金井戸あり、川口美術で見たものあり、私の好物の高麗写しあり、カワイイ♡のあり。
これらのお道具を自転車で自宅からここまで運ばれたという。こけたらおしまいやん!!と、心配もしつつ、そこまでして、もてなしてくださったことに感謝。
話も尽きず楽しい楽しいひとときをありがとう。ご連客のFさんF太郎さんにも感謝。
茶室をでてみれば、いまさらながら、あ、ここマンションやったんや、、、と思い出す。すっかり忘れるくらいの別天地。外の木々も色づきはじめ、茶事茶会に良い季節になった。
壺中日月長〜初秋の宵の茶事 - 2023.09.29 Fri

北摂阪神間の妊婦さん達はほぼここで安産祈願すると思われる中山観音さん。宝塚に住んでいた頃、長男がお腹にいたのでここにお参りしたのも、生まれてから長女の手を引いて長男抱っこしてお礼参りしたのも懐かしい。これは参道のお礼参り用さらし(腹帯)を売っている景色、これもかわらない。
中山さん(中山寺)の五重塔の上にはもう秋の雲だが、9月末と思えない暑さはまだ続く。
お招きいただいたのは、広い露地と小間の茶室を擁する某道具屋さんの大きなお家。本日のご亭主はご懇意にされておられるので、ここをわれわれ客4人のためにお借りくださったとか。まあ、入り口からはいったところでその風情に感激。わくわくである。
待合の座敷には「楽しみはその中にあり雪月花」で、瓢箪の絵。どなたの作かと思っていたら、100歳を越えてお元気でいらしたお母上の手によるもの、本日のテーマに沿って久々にお使いになられたとか。
腰掛待合にはきちんと蕨箒、夕刻の中立にはこの灯籠に灯りが入る。
変則的に広間でまず懐石をいただく。なにしろ我が家と同じで小間の茶室にはエアコンがないとのことで。日中は暑いだろうと、夕刻のお招きのお心使い、感謝である。
社中のお弟子さんの渾身の懐石。盛り付けにも、献立にもすごく繊細な心配りがあってこれも感激。自分の雑な懐石をちょっと反省。
金沢とのご縁で、加賀のお酒あれこれ数種、それぞれちがう酒器でいただいた。いずれも美味しい。今日は車じゃないのでいっぱい飲める♡
写真にはうまいこと写っていないが、黄色の満月のようなしんじょうにはこぼれ萩にみたてた小豆が入っているという懲りよう。小豆も柔らかく炊けていて美味しかった。(小豆炊くのはけっこう時間がかかる)
びっくり!が八寸である。
満月にみたてたサツマイモは私も作るが、尻尾を兎の耳に見立てた海老には感激!これも手がこんでいるのよ。梨の酢の物も美味しかった。参考にメモメモ。
大きな月とススキを描いたお皿に載ってでてきたのは栗きんとん。なめらかで栗の風味がとても、良い具合、、、と思っていたら、今朝、加賀の行松旭松堂から届いたばかりですと!なんてうれしいお心使い。
懐石終わる頃には日も暮れて、灯火の美しい時間。
小間に場所を変えて炭手前。かかる軸は山田無文師の「壺中日月長」
これが本日のテーマ。われわれは時を忘れて壺中に遊ぶ客である。
初代寒雉の車軸釜は鐶付がカマキリ。ちょうどこの季節に卵を産んで、小カマキリがあちこち出没する季節だな、、、と思う。(カマキリは不完全変態なので、芋虫時代がないので好き)
土風炉の時には風炉中拝見があるとは知らなかった。自流ではあるが、まだ知らないこといっぱい。勉強勉強。
曲げ物の香合は木賊に月、蓋裏には、ここにも兎。(木賊、兎、月の三点セットは昔からある意匠らしい)
昔からお気に入りだったという時代の火箸は、柄のところがエンドウ豆の莢そっくりで、かわいらしい。
後座の迎付はあるかな?あるかな?とみんなで喚鐘の数を数える。よし、最後の一点はなし、手燭の交換あるわ〜、と喜ぶ。久々に客として交換させてもらってうれしくて舞い上がったので、ご連客の足下照らすのすっかり忘れて、とっとと一人席入りしてしまった(^_^;
花はかわいい紫のビーズ玉みたいな花のカリガネ草、柳蓼、あと菊に似た黄色い花、、名前を失念(汗)
竹檠のほの暗い炎に照らされた小間はまさに世間から切り離された別天地=壺中である。
濃茶の主茶碗は黒楽なので、ご亭主はお手元暗い中、茶の分量、お湯の分量は手探りである。茶入が古丹波耳付き銘を「山路」、茶杓は淡々斎「峰の雲」。山路に上り来て、見上げれば峯の雲、このとき胸に去来(茶碗の銘)するものはなんであろう、、、というような景色が脳内に広がる。これが茶道具の銘のほんま面白いところなのだ。
かずらの蔓を巻いた建水がまた、伊勢物語の蔦の細道を連想させて、宇津の山越え〜山路につながって、、、と妄想はさらに広がる。
薄茶では透明なクリアキャンドルをたくさんご用意くださって、これどうしてこんなに透明なの??と話題も広がる。
時代の升を煙草盆に、曳舟の図が描かれているのが印象的。この曳舟の意匠は淀川の景色だと以前教えてもらった。それから発展して、くらわんかの茶碗についてとか、茶道具についてご造詣の深いご連客の古老さまに、色々教えていただく。ほんまに今日は勉強した〜!
干菓子はこれも加賀の諸江屋さんの菊煎餅。裏にちゃんと萼まである仕事である。
薄茶器も朱の彫り物の菊(人間国宝・北村昭斎)、茶杓がなんとヤジロベエになった案山子!私も好きで2本ほど持っているところの家具デザイナー久野輝幸さんのもの!
今うめだ阪急でふくいひろこさんの茶箱遊び展をやっていて、そこに久野さんの茶杓もたくさんでているのだが、同じようなの見たことある!と思ったら、昔ご亭主が、わざわざたのんで作ってもらったものとのこと、つまり原案は本日のご亭主だったのね!意外なつながりに感激。
かくして壺中に遊んだわれわれもついに壺から追い出される時刻に。
気心しれたご連客様方とご亭主と、本当に楽しくて、話もはずんだ一会であった。(水屋さんもご苦労さま、ありがとうございます)
余韻にひたりながら空を見上げれば美しい十二夜の月。いよいよまもなく中秋の名月だ。