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2023-12

「ようこそ、観阿弥さん〜自然居士」〜京都芸術センター - 2013.09.13 Fri

夜の学校って独特の雰囲気ですよね。

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こちら、いまはもう学校ではありませんが、平成5年まで明倫小学校であった建物です。現在は建物はそのまま残され京都芸術センターとして活躍中。


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独特の雰囲気の夜の校庭。(正しくはもう校庭じゃないけど、、)



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教室をそのまま利用したカフェ(前田珈琲)もあるんです。


観阿弥


こちらで行われている素謡(すうたい)の会、「ようこそ、観阿弥さん」、観阿弥・世阿弥のおとうさんの方ですね。観阿弥の作品とわかっているものの中から、今回(第2回)は「自然居士(じねんこじ)」。

素謡とは能楽の詞章を朗読の形態で謡い情景を表現するもので、能楽師たちは床に坐して謡うので、衣裳もなければ舞いもない、言葉だけでその世界を頭の中で想像するというかなり高度なものを要求される芸能。
実はわたし、「自然居士」を前から見たいと思っていて、タイトルにとびついたのですが、素謡とはシラナカッタ(^_^;   なので素謡初体験。でも京都では古くから旦那衆のたしなみのひとつだったんですってね。


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会場は芸術センターの大広間。もとは自彊室(じきょうしつ)だったらしい、格天井の格調高い78畳の座敷。京都の古い小学校にはたいていこんな大広間があったのかな。元・立誠小学校にも同じような大広間があったし。

はたしてこんな催しにどれだけの人が来るのか???と思っていましたが、老いも若きも(どちらかというと平均年齢高いけど)男も女もけっこうおいでではないか。会場はほぼ満席。これが京都の文化の底力か!と舌をまきました。他の都市ではこんなに集まらないと思うよ。


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まずはナビゲーターの田茂井廣道さん(観世流シテ方)の解説を聞きます。「自然居士」の聞き所、言葉に掛けられた意味、などわかりやすく解説してくださいます。

一般的に能は前半にわけありげな人物がでてきて旅の僧などに話をして、後半に実はその人は(多くは)悲劇的最後をとげた故人の亡霊で、自分の生前を語り、供養を頼む、、、というケースが多いと解釈しているのですが、「自然居士」はまったくちがい、ハッピーエンド。


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しかも物語の終盤に息もつかせぬ芸づくしがあるという動的な演目なのです。

物語は、、、

雲居寺(うんごじ)造営のため七日の説法結願の日、自然居士(喝食:青年の有髪説教僧)に小袖を捧げ父母の追善を請う少女があった。それを人買いが引っ立てていく。自らの身を売って親の供養を願う少女を救い出そうと、自然居士は後を追い、琵琶湖のほとりでこぎだす舟を止めて、小袖と少女の交換を迫る。脅迫にも屈しない自然居士に閉口した人買いは、さんざんに恥を与えてから返そうと、次々に余興の舞を所望する。自然居士はクセ舞、中の舞、ささらの舞、羯鼓の舞を繰り広げ、少女を救い出して都へ帰っていく。



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この正義感あふれる自然居士:シテを味方 玄さん。若手能楽師のホープです。
以前、平野のわざ永々棟で「井筒」の解説と仕舞を披露されたり、昨年の平安神宮薪能で碇潜〜平知盛を拝見したり、なにかとご縁があり、幽玄能も、碇潜のようにケレン味のある動的な能もどちらもこなされる。


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(「能百十番」より)


ワキの人買いをこれも若手の御曹司・林宗一郎さんが。役は悪人でもご本人は男前どす

本来ならば自然居士がくりひろげる芸の数々を目で見るのですが、今回は謡を聞きながら想像する。するとその芸舞よりも、自然居士と人買いの言葉のかけあいのおもしろさ、リズムのよさ、がみえてきたのです。初心者の私にして、なるほど、素謡とはこういうものか!と。


(舟からおりねば)命をとらう

命をとるともふつつと下りまじい

なんと命をとるともふつつと下りまじいとさふらはばや



日本の古語のなんと美しいことよ。能にひかれるファクターとしてはこの言葉の美しさも大きい。


もとより鼓は波の音 寄せては岸をどうとは打ち 
雨雲まよふ鳴神の とどろとどろと鳴るときは
ふり来る雨ははらはらはらと 小笹の竹のささらをすり
池の氷のとうとうと、、、、、





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そしてうれしいことに、素謡のあとに、お仕舞もついてきた!狂言方の島田洋海さんの小舞「うさぎ」、田茂井さんの「淡路」、林さんの「歌占」そして味方さんが、「自然居士」の最後の場面、躍動的な羯鼓の舞をみせてくれました〜!\(^O^)/サイコ〜!


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息子の世阿弥の能が幽玄なら、世阿弥のこの能は実にダイナミック。
世阿弥曰く、「(父の芸風は)大男にてゐられしが、女能などには細々となり、自然居士などに、黒髪着、高座に直られし、十二、三(才)ばかりに見ゆ」。

次もまた行こう!


*次回(11月21日)は「通小町」だそうですよ。







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● COMMENT ●

 小さい頃、母方の祖父と叔母が謡をしてたので、わけも分からず、マネをしたり、会に行ったりしてました。能は・・そうそう学校から見に行ったことが・・・・狂言も一度。そんな程度で興味を持つも持たないも何の知識もありませんが・・・明倫小学校の写真には興味津々。花咲が通っていた竹間小学校そっくり!和室の大広間は「礼法室」といって、ここで畳の部屋の歩き方とか、お辞儀の仕方とか習った覚えが・・・他府県の小学校にはないんですか?こんな教室。昔は何処でもあったのかと思ってましたが・・・ここの掃除当番、大好きでした。

しぇるさん、こんにちは

こちら、昔は小学校

現在は、大人が京文化を体験する学び舎となっていますね^^

そう云えば

以前、「それから」という喫茶で

御話した女性が

こちらで、能の教室に通われるとか

そんな事を、思い出しました

〉他の都市ではこんなに集まらないと思うよ。
いえいえ。大阪城薪能に行ったら、どこにこんなにお能ファンがいたのかとびっくりしますよ。
何千人も入るんですから。
なんのご縁か明倫小学校の夜の茶会に2回も参加したことがあります。

花咲おばさん様

>他府県の小学校にはないんですか?

ないないない〜っ!少なくとも私の郷里ではそんなの見たことありません。やっぱり日本初の番組小学校の歴史は重いですよ。竹間では「礼法室」でしたか。立誠にもほとんど同じ大広間があって「自彊室」とよばれていました。ここ、明倫ではどうかわかりません。単に大広間、、、かも。それにしても公立の小学校にこんな格天井、書院風障子の大広間なんて、なんて贅沢な!ゆめゆめそれが当たり前と思われませんよう。

おじいちゃんとおばさんが謡を、、、やっぱりね〜!子供のころからこういう伝統芸能が自然に体に入ってくる土壌って貴重だと思います。

高兄様

明倫は室町どまんなか、廃校後、活用された小学校の中では一番よい例かもしれませんね〜。(マンガミュージアムの龍池小学校も良い例ですね)なにより木造校舎の雰囲気、香りに癒されます。郷里では小学校は低学年まで木造校舎でしたが、これほど重厚な格調高い建物ではありませんでした。

ちょっと歩けば能を嗜む人に出会う、、、さすが京都やわ。
私もね〜、リタイヤしてもう少し時間に余裕ができたら謡と仕舞をやりたいんですよ〜(^_^)v

relax様

大阪も商家のだんさんがぎょうさんいてはりますから、謡をたしなむ方も多いかもしれませんね。能舞台は確かに人はこられますが、町内会レベルで素謡に人が今でも集まるのは、コンパクトな町、京都だから、と思うのですが大阪の事情は存じませんで、、、、、(^_^;

明倫茶会、いつもすごいメンバーが釜かけてはりますね〜。行きたいのはやまやまなれどほとんど土曜日で仕事がありアウトです。これもリタイヤ後の楽しみ。


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