筒井筒〜いづつにかけし井筒安〜 - 2017.08.29 Tue
京都タワーが見えるここは東本願寺さんの近く。
たまにお邪魔している創業170年の老舗旅館井筒安さんにて、今宵楽しいお能の会。
題して「筒井筒〜いづつにかけし井筒安〜」
井筒安のご当代(7代目)は京料理の料理人でもあり、日本の伝統文化を伝える催しを年に何回かされている。
今宵は観世流シテ方・松野浩行師をお迎えして、仕舞や謡、トークの数々。あまりにお話しがおもしろいしお上手なので、あれ?今日は噺家さんだったっけ?(^_^;と思ったりして。
まずは今夜のテーマ、「筒井筒」をイメージした青洋さんのお菓子をいただき、お薄を一服。
このお菓子、三層になっていて、真ん中柑橘系の味の羊羹をはさみ、ブルーとピンクの透明寒天の層。ちょうど井筒(井戸)をかこんで幼い男女が遊んでいるような感じでしょうか。さすが青洋さん、素敵な和菓子。
まずは「江口」の謡から入って、「海士(あま)」の玉の段の仕舞。
我が子を世に出すために、決死の覚悟で竜宮に玉を取りに行く海士(母、不比等の妻のひとり)、取った玉を取り返すべく追いかけてくる龍王に追いつかれ食べられぬため、玉を自分の胸をかき切り埋め、命と引き替えに(龍は屍体は食べないという)したという壮絶なお話し。
けれん味のある仕舞で、なんだか歌舞伎を観ているようなおもしろさなのだが、世阿弥以前からあった曲だというからびっくり。室町の人たちもこんなスピード感あふれる芸を楽しんでいたのだな。
パッと飛んで着地と同時に胡座をかいてすわる場面、まったく音がしない着地に感動!修練のたまものとは言え、なかなかできる技ではないよなあ。
気分転換に全員で仕舞の足摺り歩きをしてみたり、目の前に自分たちのスマホを置いて、これを大事な物と拝む型をしてみたり、、、、たくさん笑った。仕舞をかれこれ2年半習っている身としては摺り足はちゃんとできないといけないのだが、、、、(^_^;いまだに苦手。
(これは衣裳体験の場面)
ついで「井筒」の仕舞
主題は「筒井筒」は伊勢物語の有名な話で、井戸を囲んであそんだ幼い男女がいつしか慕い合うようになり添い遂げるが、男(業平)の心変わりでいろいろあったけれど、最後にはまた女のもとにもどるというストーリー。
筒井筒 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざる間に
比べこし 振り分け髪も肩過ぎぬ 君ならずして たれかあぐべき
仕舞は後半、女(の霊)が業平の形見の装束をつけ、おのが姿を井戸にうつして業平の面影をしのぶ、という場面。
衣裳なしの仕舞と、簡単な装束と面をつけた仕舞を拝見。やはり全然ちがう。とくに面をつけるとその女人がおりてくる、、というか別の人格が現れる感じ。
能舞台では舞台上に井筒をあらわす作り物にすすきの穂を飾る秋の物語。シテが去ったあとの舞台に月が心の中で見えないといけない、と聞く。
松野師も強調しておられたが、能はまさに想像力をフル稼働して楽しむ芸能なのだ。自分の想像力が問われ、人によって心に見える景色は異なっていることだろう。
衣裳(長絹・ちょうけん)と面をつける体験もあって、これはお客さまのひとりが体験されているところ。かるくうつむくだけで面の表情がかわるのがやはりみものだわ。
この長絹や水衣(隅田川などでシテが着る)、とてもおしゃれだと思う。着物をきたときにちりよけとして今日でも十分着られるのではないかといつも思うのだが、いかがでしょう?(もちろん柄とか刺繍とかなしで)前身頃の打ち合わせがかるくクロスするのがとってもステキなのよ。
で、今回間近で長絹をみせてもらって初めて気づいた!
前の紐を固定する糸があるんだ!これと紐の重さがあの美しいクロスのヒミツだったのね。
いつか手作りでもちりよけまねて作ろうと思うので、見たらびっくりしんといてね(^_^;
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● COMMENT ●
しぇるさん、お早うございます!!お能、私も2度程見に行ったことがあります。お友だちのご実家が宝生流の能楽師をやってらしてお友だちも女性ですが藝大の邦楽の能学部を出られ色々解説していただきました。お能のお面は顔の方向きで同じお面でも色々な表情が見れますね!お友だち曰くお面の下からはみ出たお顔に色気を感じるという事でした!
長谷川等伯展が目白の永青文庫であるそうですがご存知でしょうか。9月30日からだそうです。
みゅうぽっぽ様
静かな曲だと今でも意識を失うのですが(^_^;謡の言葉がわかるようになると古文好きとしてはとても萌えるのです。狂女なれど心は清滝川と知るべし、、(蝉丸)心が清い、というのをこういう風に婉曲にいったりするところが萌えポイント。
ヌーチャン様
永青文庫ですか。行きたいけれどな〜、日程的にいけるかな〜???
5年くらい前、京都でも国立博物館で長谷川等伯展あって、松林図を見た時の静かな感動を思いだしました。
5年くらい前、京都でも国立博物館で長谷川等伯展あって、松林図を見た時の静かな感動を思いだしました。
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