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2023-06

MIHO museum〜まさんど窯訪問 - 2023.05.25 Thu

信楽へきたらまず腹ごしらえはこちら。


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大将が器、焼物大好きという魚仙さんへ。


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たん熊北店で修行された大将のお料理、ほんまにコスパ最高、このお値段でこんなお料理いただけるの?と毎回感動している。


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さてMIHO museumでは、いつもトンネルを歩いて通るのがお気に入りなのだが、残念ながらしのつく雨、久々にカートに乗った。すっぽりビニールカーテンで覆われて一滴も濡れることなく、快適であった。

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美術館側のカート乗り場はこんな感じやったんや。天井の穴から落ちる雨は下の排水穴に吸い込まれる仕様、これだけ見ていても飽きない。さすがI.M.ペイさんである。(ルーブルのガラスのピラミッドも作ったアメリカの建築家)


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エントランスの屏風に見立てた景色も雨に煙る。


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今期の展示は「美の祈り」
古代から始まる洋の東西の祈りのために作られた神像やそれを荘厳する物、捧げられた物、さまざまな切り口の「祈り」
このポスターの飛天(鎌倉時代)はサイズも小さくかわいらしく印象的だった物。


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今回の展示の前半のパートは、エジプトからペルシアの各王朝、中央アジアとほぼ頭に入ってない歴史と地図にちょっと苦戦した。中国あたりになるとちょっとはわかるのだが。

印象的なのはリュトン。
古代ペルシャで使われた角杯に似た器で、山猫型とかライオン型、馬形、、、と色々ある。角杯は文字通りコップなのだが、リュトンはここにワインなどを流し込み、下の小さな穴から別の器に流し込むもので、漏斗みたいな、、、。お酒がこの器を通ることに神聖な意味があったとか。デキャンタージュみたいな?効果もあったのかしら。



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(地下のカフェも雰囲気いいよ)


日本のものでは二月堂修二会コーナーもあって、この解説なら私の方が詳しいよ〜と心で言ってみる(^_^; 典型的な美しい二月堂焼経が掛けられていて萌えた。

今回一部屋全部使っての唐紙アート「ユニバーサルシンフォニー」(作・トトアキヒコ・唐長)の展示。一面にブルーのパネルが並び、そこをうねるような渦巻き(唐紙の技法)が連なって龍みたいに見える作品。

MIHOのエントランスから本館へいくまでの長いチューブ状のトンネルは、春は桜色に、夏は緑色に、光を反射して美しいのだが(これだけを見に来る人多い)、春分秋分にはまっすぐに太陽光(夕日か?)が差し込んで黄金色になるのだと初めて知った。一度みてみたいなあ。四天王寺の日想観みたいな感じかしら。



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MIHOへ行ったら次はやっぱりまさんど窯へも行かなくては。
作成にほんの数分だけかかわった(?(^_^;)板磨いただけ)世界一美しい無人販売所、健在である。


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作品はぽちぽち売れているようでなにより。盗難に遭うことはないのかと訊ねたら、全くないとのこと。逆に盗るほどほしいと思われないのがちょっと切ない、、、とか(^_^;


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この春から、行政も巻き込んで学童保育的なまさんど塾を開始。小学校低学年の子供達に、この時間は何をするか、自分で決めさせて、保護者会もきっちりして、本気の塾である。どんどん広がっていくまさんど窯。すごいなあ、、、来るたびにバージョンアップしている。


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裏庭の信楽焼の露天風呂も、先だって山村留学?の関東の中学生男子が入って楽しんだそうだ。


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ここの茶畑を望む場所からの眺めが大好きで、ここで茶籠を広げる。


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茶碗はもちろん、ひらかね井戸である。この小ぶりの茶碗、好み。


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今や余技なのか本業なのかわからない井戸茶碗もちゃんと作成中、近々新たに作った窯4号機を稼働させるとか。

とうてい自分にはできないだろう、けれど憧れるくらしを楽しむひらかねさん、たまにその暮らしの片鱗を味わいたく、またよせてくださいね。






正倉院展2022 - 2022.11.10 Thu

日本人みんな大好き正倉院展!
ここにこれだけ人が集まってくる限り、日本文化はまだまだ大丈夫と思える。


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今年もコロナ対応で要予約、当日券ナシであったが、見よ!!
きらきら光る?予約不要のいつでもフリー招待券を!(クラウドファウンディングのリターン(^_^;)
というわけで待ち時間ゼロで入館を果たす。(予約時間前は行列できていたが、半端な時間に行ったので)

2年前はガラすきであったが、昨年今年とまあまあの入館者、陳列ケースには少し並んだが、コロナ前の押し合いへし合いはなく、こういう感じでいつも拝見したいものだと思う。


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いきなり大きな香木「全浅香」がで〜んと。蘭奢待に比べると知名度は劣るが、双方の香りを聞いたことのある足利義政は蘭奢待と同じ匂いと書いているそうな。もう焚かれることもないのだなあと思うと残念。


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ポスターにもなった今年の目玉は漆背金銀平脱八角鏡。(ちなみに右のはショップで購入した飴の缶)金銀の薄板を貼り付け漆をかけ、かわいてから金属の上の漆を掻き取るという技法だが、一見象嵌細工のようにみえる。つまみの部分にまで装飾がほどこされ美しい。(双眼鏡持参がおすすめ)


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今回一番のお気に入りは意外や銀壺(右)であった。一抱えもある大きな壺で、表面に狩りをする騎乗の人物と追われるいろんな種類の動物が躍動感あふれるタッチで彫られている。しかし、このスモークがかかったような背景は、、、?と思って双眼鏡でみるとなんと!この大きい壺全体の背景部分は全部魚子(ななこ)になっているのだ。小さな丸い鏨で空間を埋めていく、、気の遠くなるような作業。称徳天皇(孝謙天皇 聖武天皇の娘)が東大寺に寄進したものだそう。

左の竹帙(じす:経典をまとめてつつむ)もすてきで、これも双眼鏡でのぞかないと、細い竹ひご一本一本にさらにほそ〜い色糸をまきつけて文様としているのがわからなかったと思う。これもすごく根気のいる作業。

伎楽面や東大寺の荘厳具などは「天平勝宝4年4月9日」がキーワード。西暦752年(修二会の開始も)、大仏開眼法要の日である。この日のためにつくられたいろんな工芸品、どれほど華やかでにぎにぎしい法会だったのだろうとはるかに想像してみる。


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今回の特別テーマは布、装飾品と、乙女心?をヒットする展示物が多い。
古代の刺繍や染め物、織物、ほとんど残欠というより糸くずに近い物もあったが、それでも当時の美しい色彩を垣間見ることができるのである。
当時の人がアクセサリーとして腰にまいたであろう美しい色彩の紐、その先にぶら下げる小さなけれど美しい刀子、魚や鳥の形の小さな飾り、これらをキラキラじゃらじゃら腰につけて歩くってなんておしゃれ!(現代の若者もキーホルダーじゃらじゃらぶら下げているがあれと同じだ)

天保年間に正倉院の倉を開け、その裂類の整理に和紙で裏打ちをして保存する方法がもちいられ、明治以降も正倉院の古布管理の手法として今も使われているのだそうだ。かつて東大寺屏風といわれ屏風に裂残欠を何枚も貼り付けた屏風もあったそうで、レプリカの展示もあり。(現在はばらして保管)先人達の文化財保護の努力のたまもの。

古文書類はいつもほぼスルーするのだが(見てもワカラン)、今回久々に有名な「五月一日経」がでていたので、これはしっかり拝んだ。光明皇后が亡き父母(不比等、県犬養三千代)の供養のため発願した一切経写本、経文の最後の奥書に「皇后藤原氏光明子奉為、、、天平十二年五月一日記」と書かれているもの。


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展示を見終わって、先日お披露目にいったばかりの博物館・八窓庵庭園を眺める。この期間は呈茶席もあったようだ。いつのまにか紅葉がほんのり。



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博物館地下のレストランでこれも毎年恒例この期間限定の薬膳料理弁当を食す。けっこう美味しいので好き。(大阪の桃谷楼謹製)


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図録は安くて小さくて場所をとらない英語版がおすすめ。


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ちなみにこれはミュージアムショップで見つけた大好き❤️疾走する伽藍神様❤️ボールペン、即お買い上げ。


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帰りに寄った東大寺西大門跡の銀杏はまだまだ黄色くなっていなかった。



京に生きる文化・茶の湯〜京都国立博物館 - 2022.11.02 Wed

久々の茶の湯展である。とりあえず前期見参。


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重量級のお宝をようもこれだけならべたな、と驚愕するが、基本的にほぼいつかどこかで見たことのあるものばかりである。展示の目玉としてひとつだけ一軍が輝いている、という展示の仕方であれば、記憶に残りやすいが、こんなに国宝重文級一軍クラス、茶道具の教科書クラス怒濤のそろい踏み、消化しきれんわ、、、


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と、言いつつも食い入るように眺めてかなり硝子板におでこの脂をなすりつけてしまったが(^_^;

道具のみならず歴史的文献なども添えて茶の湯の歴史を、大陸から来た黎明期から、室町の会所の茶、安土桃山の爛熟期、佗茶の台頭、江戸期の庶民へ広がり、明治の近代数寄者の茶と流れに沿ってひもとき展示されているのがとても勉強になった。何度も見た有名な道具でも、歴史的なポジションはどこなのか、ということを考えながら見るのは面白いのである。

さらに江戸時代に興隆した煎茶について、これは道具よりも思想的背景を、さらに製茶についてまで言及しているのもさすが。(教科書でよくみた海北友泉の「宇治製茶図巻」もあった)



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虚堂智愚墨跡(破れ虚堂)は東博ではたしか撮影OKのふとっぱらだったな。同時に流れ圜悟。

茶碗は喜左衛門あれば長次郎のムキ栗、天下に名高い青磁・馬蝗絆、細川三斎の機転で有名な筒井筒、大好きな三井の二徳三島に粉引「三好」、光悦の乙御前、、、、うわあああで、もうアカンやろ。
牧谿をこんなにたくさん一度に見たことがない。野村の名品ムガール王朝の抱桶水指(これに実際水入れてるのみたことあり)新田肩衝、利休遺愛の井戸香炉「此世」、でた〜!!と思わず叫ぶ某古美術商がけっして手放さないといううわさの黒織部、国宝青磁花入「万聲」「千聲」そろい踏み、、、いや、もう書いても書いてもキリがないねんけど、、。



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今回特に印象深かったのは、茶の湯の歴史を振り返るときに必ず出てくる有名な書籍類まで展示してあったことだ。「喫茶養生記」から「君台観左右帳記」、「山上宗二記」(原本の一つ!不審菴所蔵)、珠光の「心の文」、「酒飯論」(漫画チックで面白い)まであったな。

東寺百合文書のうち「南大門前一服一銭売人道覚書、、云々」というのが興味深い。室町時代、大きな寺社の前で一服一銭で茶を売る商売がはやったのだが、東寺南大門前で商売するときの注意書きみたいなもの、場所は決まったところで、火はお寺の香火からとらないこと、閼伽井の水は使わない、道具を鎮守の神社にあずけない、、、など当時の市井の人々の姿が目にうかぶようである。



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これも今回の展示の目玉の一つ。
数寄屋建築の飯島照仁先生監修のレプリカ待庵と黄金の茶室。
利休と秀吉のコラボで作られた対極の茶室であるが、飯島先生おっしゃるところ「印象は対極でもどこか相通じる物がある」。

それにしてもくりかえすが、ほんまによくこれだけすごい物をあちこちからかき集めたものだなあ。交渉など担当した学芸員さんの努力のたまものであろうなあ。もしここで地震とかミサイルとか来たらどれだけの文化的損失になるやろか、、なんて考えてしまった。



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さて爆発寸前まで頭が煮えてしまったのでクールダウン。博物館から徒歩でいける京都ビアラボさんにて、、、


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かぶせ茶ホワイトエールでクールダウン。
できればお茶成分がもう少し強かったらよかった。

これは後期もまた褌を?しめてかからねば!



杉本博司本歌取り〜日本文化の伝承と飛翔〜姫路市立美術館 - 2022.10.18 Tue

杉本博司さんの作品はほんとうに好きで、かならず見に行っているが、今回は京都じゃない。まあ、そんなに遠くもないし、、、とでかける。


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この写真みただけでどこかわかるわね(*^_^*)ばっちり写っているのは国宝姫路城。こちらは姫路市立美術館である。なんと明治38年に建てられた陸軍の倉庫だった建物で、昭和50年代まで姫路市役所として使われていたという。


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市立美術館として再生されたのが昭和58年と比較的新しい美術館なのだ。


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ポスターになっている「月下紅白梅図」(ご存じ光琳の紅白梅図屏風の本歌取り)は初めて見たときにはご本人の解説付きで、感激したなあ。

杉本さんの展示は、クスクスっと笑えるものが多く、取り合わせのアンバランスが最高だったり、その隣にコレクションの重要文化財が並んでいたり、、、とにかくしっかり見て見逃すことのないように。

室町時代の「天神像図」の軸装が黒い背景に走る稲妻で、その横に鎌倉時代の雷神像があったる。レンブラントのエッチングが本式の軸装になっている。、、、こんなん茶室にあったらもうこれだけですごいご馳走。
「天山飯店品書」と杉本さん自身がかかれた墨書、なにが書いてあるのか?と思ったら、タン麺900円、チャーハン900円とかそんな内容なのに、軸装に使われた裂地はおそらく貴重な貴重な古裂と思われる。思わずなぜだ?!と言ってしまいそう。

軸装が杉本さんの真骨頂で、「着服(pocketed)」の墨書の軸装がほんものの洋服のポケットシリーズだったり、鎌倉時代の曼荼羅の中回しが1930年代の科学誌らしき月相や太陽系の図やらだったり。

墨書も面白くて、「御釈迦」「御陀仏」が並んでいて、??と思ってよく見ると、そうか「オシャカ (になった)」と「オダブツ」か(^_^; 「憲法窮状」??なんてのもあって、軸装が菊の御紋の裂地というのもしゃれが効いている。
能につかう江戸時代に作られた面の陳列の横に「神男女狂鬼」と書かれた軸あり、よく考えて、あ!そうか!能五番のジャンルか〜。



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それから杉本さんはガラス作家としての作家ネームを持っていて「村野藤六」という。そう、建築家の村野藤吾のもじりなんである。ガラスの茶碗で長次郎の四角い黒楽「ムキ栗」へのオマージュとして「ムリ栗1号」と銘をつけたり、正倉院御物の白瑠璃茶碗の写しを「私倉」と名付ける。正倉院が国倉であるのに対して、という意味であろう。


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かと思えば利休の竹一重切り花入の横に、大正時代の青銅雨樋を古銅花入れとしてならべ、「咲甫太夫」と名付ける。(さきっぽという意味か?)
なんとも贅沢に利休・少庵・宗旦の茶杓を並べてその横に待庵古材で御自作された茶杓数本をならべる。しかもその銘が「よりみち(よこにはみだしてる部分あり)」「もろは(茶杓の端が両方にある)」「くのいち(くの字にまがっている)」、、、こういう高級すぎるお遊びは杉本さんにしかできまいと思う。

本歌取りというべきか、古典の作品を補完して新たな作品としているものとして、鎌倉時代の国東五輪塔の笠の部分が欠落しているのを補うのに階段を積み上げたようなブルーのガラスで笠を補完する。銘が「笠がない」(って井上陽水か(^_^;)

それから「廃仏希釈(毀釈じゃないよ)」と名付けられたシリーズは主に頭部が失われた室町時代の四天王の頭を補完するのに、鉛釣り用餌撒き器に唐辛子を詰めたモノ、ウシオ電気の電球、手に持たせるモノが恐竜糞の化石とか昭和20年代の目薬小瓶とか、仏様たちも後の世にこんな形でよみがえるとは思うまい。でも楽しい♪

最後に杉本さんの遺偈。一見漢文で徳のあるお坊さんが書いた遺偈風だが、内容を咀嚼すると「禅はわからへん 冥界(死)はすぐそば 満塁(涙)で席に立って空振り〜」(*^_^*)


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美術館にあったチラシで、同じ姫路にある書写山圓教寺の杉本さんのインスタレーション開催中を知って急遽行くことにする。


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その前に腹ごしらえは美術館お向かいの国立姫路医療センターの病院ランチ。550円、安っ!


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それからお天気の良い町を少し歩いて、、、


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お茶友さんのお店にちょっと顔をだして、書写山へGo!




板谷波山の陶芸〜生誕150年記念〜泉屋博古館 - 2022.10.12 Wed

板谷波山の波山という号はふるさとの筑波山からとった、ということを今回初めて知った。


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板谷波山の陶芸展(〜10/23)が鹿ヶ谷の麓(まあ、ご近所)泉屋博古館にて開催中。


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恥ずかしながら、波山の名前はTVの「なんでも鑑定団」でくりかえし出てきたので覚えたようなものである。波山がなくなったときには私、もう生まれてました〜(^_^;くらい近い昔の方なのだ。


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玄関ホールの撮影OKの大壺は波山の真骨頂、「葆光彩磁(ほこうさいじ)」葡萄唐草文花瓶。薬師寺のご本尊台座のレリーフを写したもの。


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葆光彩磁とは、まさに光を内に保つという意味で、彩色した下地の上に葆光釉を掛けると薄もやがかかったようなマットな色になる波山の代名詞的技法。釉薬の中に微細な気泡がはいっているためこうなるそうだ。



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もともとは東京美術学校で岡倉天心や、高村光雲らの指導のもと彫刻を学んでいたそうで、その頃の習作も展示されているが、なにより絵心がすばらしい。おびただしい作品は主に草花紋が主なのだが、アールヌーボー的でどこかウィリアムモリスを思わせる。文様をそのまま絵画として残しても画家として名をなしたのではなかろうか。陶芸家の腕にこの絵心がなんといっても波山の強みなのだろう。


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作品が売れる前はありったけの財産を窯を作るのに費やし(家族もいるのに!)板谷破産といわれたとか(^_^; それでも作陶釉薬の研究を続け、ついには陶芸家として初の文化勲章を受章されるのである。(人間国宝は辞退された)
釉薬や窯焚きの研究ノートなども展示されており、陶芸ってつくづく化学実験だなと思う。



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肉薄彫刻を生地にほどこし焼成、さらに彩色焼成、釉薬で焼成、、、と多くの段階を経て完成する手間の掛かる作品群。主にお屋敷の広間を飾るような装飾性の高い大きい物が多いが、香炉のようなかわいらしい床の間に飾っておきたいような作品もある。茶道具もないではないが、作品数としては少なかった。彫刻をほどこした茶入が印象的。


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浅い彫刻に釉薬がたまることで繊細な陰影ができる。笹の葉の緑のグラデーションなどがもうほとんど絵画で、陶芸には見えないくらいだ。
この銀杏の葉が一番好きだったもの。このまま絵にしてもいいでしょう?デザイン化したフォルム、葉っぱの端のギザギザ、葉脈、虫食いまで素敵だ。

会場では波山の晩年に近い頃の動画が流れている。拾った子猫を抱えてにこやかな姿は好々爺に見えるが、仕事には己に厳しい人だったそうだ。作品の胎となる素地は専門の轆轤師にひかせていたそうで、中でも轆轤師・現田市松は53年の長きにわたって彼を支え、波山もまた文化勲章授賞式に彼を皇居へ伴ったという。一緒に写った写真でにこやかな二人。現田が先に逝ってしまい、それは波山にとって大きな精神的痛手となったという。




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