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2023-12

東大寺観音院・水島太郎展〜奈良水晶 - 2023.11.05 Sun



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二月堂裏参道、大湯屋の裏の御供田もすっきり稲刈りがおわっていた。この収穫したお米で修二会にお堂にそなえるお餅(お壇供)が作られるのね。


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裏参道の柿の実、秋だなあ〜。


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さて、二月堂を通り過ぎて三月堂(法華堂)前の東大寺塔頭・観音院。現在は無住なので、普段はクローズドなのだが、毎年彫刻家・水島太郎さんが個展を開く間は入ることができる。



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観音院には上司雲海(永照師の大叔父さんらしい)という名物和尚がおられて、戦中戦後、志賀直哉、会津八一、杉本健吉、須田剋太、入江泰吉など錚錚たる芸術家の集まるサロンになっていたそうだ。


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同じく彫刻家だった水島さんのおじいさまもそのサロンの一員で、観音院七人会のメンバーだった。そのご縁で、太郎さんもここで個展を開く。(ちなみにお父上も彫刻家)

ご縁はそれだけでなく、彼は修二会の処世界童子として大松明をかつぐのだ。昨年も今年も修二会の期間中、その童子としてのお姿をなんどか拝見した。


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太郎さんの彫刻は独特で、脱活乾漆像で、麻布と漆で像を作り上げる。
像は嘆き悲しむ人のようであったり、童女のようであったり、えたいのしれない物のようであったり、、、見る人の感性によって自在に変幻する。


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今回はなんだか兎っぽいモチーフが多いなあ、、と思ったら「不思議の国のアリス」がテーマなんだって。
童子さんをされているので、修二会のお松明の燃えさしを使っての作品もあって、ちょっと萌える。双頭の怪物の真ん中に燃えさしの板がつきさしてある像が印象的だったのだが、これはロシアとウクライナを意図したとか。出自は同じスラブなのになぜ戦うのか、体はつながっているのに頭がケンカする愚かさを示すのね。


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(アップの許可をいただいて、、、)


ちょっと感動した話。
いつも修二会で良い声をきかせてくれることで有名な上司永照師のご長男・永観師が、今年練行衆として初出仕。永照師のご依頼で、その時のお松明を使って太郎さんが記念に結界を作っておられるとか。ちなみに永観師は処世界(一番下っ端)なので、いつもお松明が上がる前に上堂、お松明といっしょに初夜上堂するのは12日のお水取りの日のみなので、唯一のお松明の竹なんである。


さて、今度は奈良グルメのはなし。


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インスタで写真を見てこれは是非食べたい!と思った奈良水晶さんの水晶餅いただきに。場所は近鉄奈良から徒歩圏内。率川神社(いさがわじんじゃ)も近い。


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立派な門のある古民家は最近まで普通の住宅だったとか。なかなか良い雰囲気である。


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こちらのお座敷でいただく。ランチタイムは食事もできるとか。


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来た〜!キラキラ美しい水晶餅!
器のガラスに同化して見えにくいが、底にはエディブルフラワーがしのばせてある。


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横から見るとこんな感じ。
おそらく寒天とゼリーの中間的なアガーを使っておられるのだろう。


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これにきな粉と黒蜜をかけていただく。ぷるぷる。
まさに水晶、美しい宝石をいただいた気分。




東大寺・蜂起之儀〜13年ぶり良弁上人1250年遠忌法要前日 - 2023.10.20 Fri



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二月堂の裏参道を少し降りたところから見える大湯屋、初夏には柳絮を見に来る場所だが、普段は閉まっている扉が開きました!



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10月13日、翌日からの3日間の良弁上人1250年遠忌法要の前日、実に13年ぶりに蜂起之儀が行われた。前回が光明皇后1250年遠忌法要(2010年)前日だったという。


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さて、大湯屋の前で待っていると17時前、僧兵姿のお坊さんたち(若い修行僧かと思ったら、後で聞くところによると、練行衆でおなじみの方々だった!)が8名、やって来た。


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湯屋の中に集合してでなにやら短い決起の言葉?(聞こえない)


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各自それぞれ小さな法螺貝を手にしている。
かつて東大寺一山をあげての決定事項はここで決められたと聞いた。強訴や因縁の興福寺との小競り合いの決定もここでしたのかな。だから「蜂起」という物騒な名前が、、、?


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この蜂起之儀は昔から大きな法要の前日に境内をくまなく回って問題は無いかとチェックした習慣の名残とか。

さて、出発前に大湯屋の前で法螺貝を吹き鳴らす。


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僧兵ひとり一人に松明を持った白丁さんがつく。


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大湯屋から俊乗堂へ行く細い石段を登って、奈良太郎(大鐘)の横をすりぬけ、、


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先日初めて存在を知ったところの辛国神社(天狗社とも)にて、お祓い?修二会でもそうだが、ここらへんは神仏習合。全然違和感ない。


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先頭を行く僧兵さんの懐の奉書が気になったが、よく見えない。後に「僉議(せんぎ・評定)」と書いてあると判明。さらにこの方が教学執事のえらいさん(鷲尾師)と判明(^_^;


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難所の猫段を降りる。


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すべりやすい高下駄なので、ちょっと苦労しておられる。これは大変だ。猫になっちゃう。(猫段で転ぶと来世は猫になるという。わざと転ぶやつもいるとかいないとか)





その難所のご苦労もだが、この下駄の音がいいね。


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大仏殿回廊につきあたったところで北に、長池横をとおる。


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大仏殿の北をくるっと回る。
それにしても足速いこと!あの下駄なのに。


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行列を前から撮ったり後ろから撮ったり、ついていくのも健脚でないとしんどいよ。


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大仏殿を背景に。これは西の壁。


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ここで子安神社に参拝。
これは最近整備された指図堂のすぐ隣であるが、小さくてなかなか気づかない神社。一説には良弁上人が母を祀った神社とも。


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ようやく今月から(東大寺ミュージアムから)お戻りになられた四天王まします戒壇堂の前。時々法螺貝を吹き鳴らす。


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東大寺のスタッフさんが松明の燃えさしを拾って歩いてはった。国宝、重文てんこ盛りの界隈だからね。


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翌日からの法要のため「東大寺」の幔幕がでる大仏殿前。


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幡も下がって大法要ムード満点の大仏殿。


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だんだん日も暮れてきた頃、手向山八幡宮への参道を行く。


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法華堂(三月堂 これも今年は特別に今月国宝・執金剛神が拝める。いつもは12月16日一択)の前を通り過ぎ、、


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二月堂の前、開山堂の前を通り過ぎ、、、


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二月堂登廊の下を通って裏参道へ。


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そして一周して大湯屋へ帰る。
これにて儀は終了である。


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行列を作って本坊へお帰りになるところをお見送りする。1万歩は歩いたな。足痛い。(途中で穴ぼこに足突っ込んでこけたし(^_^;)
それでもほんまに貴重なものをみせていただいた。次回はいつになるか、、あるとしてももうついて歩くのは難しいかも、、、と思いつつ。


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帰り道大仏殿の回廊の隙間から見た図。すっかり法要の荘厳ができあがっていた。
明日から3日間、法要の無事を祈る。(参拝はできないけれど)


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歩いた道順を記憶をたどりながら書いてみた。間違ってたらゴメン。



4年ぶりに奈良豆比古神社・翁舞 - 2023.10.17 Tue

 

奈良山の児手柏(このてがしわ)の両面(ふたおも)に
      かにもかくにも 侫人(ねじけびと)の伴(とも)


万葉集に歌われたコノテガシワ。謡曲「百万」では(今仕舞習ってる)

 奈良阪の児手柏のふたおもて とにもかくにも
        ねじけびとの 亡き後の涙越す、、、

になる。
その奈良阪の、万葉の時代にもあったと推定されるコノテガシワの切り株(残念ながら戦後枯れた)がある奈良豆比古神社へ。



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このあたりは京都との境も近く、夜になると人っ子一人いなさそうな集落である。


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10月8日に毎年行われる宵宮祭、国の重要無形民俗文化財でもある翁舞を見に実に4年ぶりに来ることができた。
4年前に聞いたお囃子が忘れられなくて、頭にこびりついて。コロナや、諸般の事情で4年もかかってしまった。


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4年前も、宵からの雨が舞台が始まる頃やんだが、今年もやはり小雨。ふったりやんだり。集落の翁舞保存会の方々が着物姿で忙しそうにされていた。

祭礼は20時から。
バスの便が少ないし、直前には結構な人出となるので19時にはスタンバイがおすすめ。


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境内の奥、お社の向かって左にそのコノテガシワの切り株がある。樹齢1300年はいっていた、という話だ。

ここのご祭神は万葉歌人として有名な志貴皇子。
天智天皇の息子でありながら政治の表舞台に出ることがなく薨去された。しかし歴史のいたずらで彼の死後、皇子の六男・白壁王が光仁天皇として即位したため、「春日宮天皇」(もしくは田原天皇)の追号を送られている。


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19時半頃、篝火が入る。あたりはぐっと暗くなる。


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まずは囃子方が入場、神様に向かって片跪座で一礼。


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地謡、三番叟、と入ってきて同じく片跪座一礼。


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翁だけは翁らしく両手を広げた姿勢で入場。三人、そう、ここの翁はよそでは見られない三人翁なのだ。


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ここでは千歳(せんざい・式三番で最初に舞う)が15歳までの子供が勤めるのも特徴。講中の子弟が相談の上選ばれるという。4年前は10歳の男の子だった。今年の子はもう少しお兄さんかな。
もっと小さい子が水干を着ていて、「おまえもまた来年かその次かに舞台に上がらにゃならんぞ」と言われていた。


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千歳の最初のお仕事は翁の面箱を持って入場、太夫格の翁にその面をさしだす。
これは現在でも、能にして能にあらずの「翁」でも同じで、シテは必ず舞台上で面をつける。


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これがその面。今年新調されたとか。





そしてそして、このお囃子聞いて!!おごそかに「とうとうたらり」で始まるのだが、最後の「おん、は〜」のところが4年前から頭にこびりついてはなれないのよ。この脱力系のお囃子クセになる。



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千歳の舞。
 ♪ なるは滝の水 なるは滝の水 日は照るとも、、、

これは現在の式三番の千歳の詞章と同じである。


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場を浄めるように四角形にゆっくりゆっくり足を運ぶ。「道成寺」の<乱拍子>に似ている。


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そして三人翁が面をつける。


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これはワキの翁。


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まずは太夫格の翁が舞う。

  ♪ あげまきや とんどうや ひろわかりやとんどうや、、、

と、謎の言葉につづいて

  ♪ まんざいらく まんざいら〜く〜



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そしていよいよ見所、三人の翁のそろい踏み。
ひたすら脱力系の「まんざいらく〜」を聞いているとすごくなごむのだ。





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演じているのは地域の保存会の方、当然素人である。素人ならではの良さがあふれている。

さてこの翁舞、志貴皇子の第二皇子・春日王が病を得た時、彼の息子の一人、浄人王が、父の病気平癒を祈って芸能を神に奉納したところ快癒したことが始まりとされている。
神社が有する面(おもて)の中には室町初期のものがあり、猿楽の黎明期と一致し、この翁舞はのちの猿楽能楽の原型であることは確かだということだ。

わざわざこれを見に、島根から長距離バスで駆けつけた、という方もおられた。意外と全国区。かえって奈良の人が見たことない、、と(^_^;


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次に三番叟。
動きが速いのと、暗いのとで、ぶれた写真しか撮れない。


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これが一番動きが速く、比較的若い方じゃないとしんどいだろうな。4年前はもっと若い人だった。


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ついで三番叟が黒尉(黒い翁と思って)の面をつけて舞う。


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そしてこれも印象深い千歳と三番叟の問答。
お互いに顔を向き合わせることなく片方が横を向けば、片方が正面を向く。


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あらましは尉に三番猿楽舞うように促し、三番叟は千歳に舞うからおなおりください、という。
では舞たまえ、と千歳は三番叟に鈴をわたす。

♪ 三番猿楽きりきり尋常におん舞そうて 座敷ざっと御なおり候へ じょうどの
、、、この色の黒い尉が所のご祈祷 千秋万歳と舞納めようば やすう候 、、、

とちょっと意味不明のところもある古語。千歳君、よく覚えたねえ。



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三番叟は鈴と扇をもって舞い、舞終わると面をとって退席、囃子方も退席されてお開きである。


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拍手が起こる。やっぱり来てヨカッタ。感動的やわ。
雨水がぽたりと落ちるので上を見たら奈良の天然記念物の大樟の木の影。うわ〜いい宵だ〜。



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ご多分にもれず継承者減少になやむ翁舞であるが、地域の集落の家が今も当番制の当家(とうや)をつとめ、保存会をつくり守ってこられたそうだ。こういう小さな地域の祭礼を継続するご苦労ははかりしれない。頭が下がる思いである。10代の千歳をだせる間は大丈夫だよね、きっと。





今年の中秋の名月は薬師寺〜2023 - 2023.10.01 Sun

今年の中秋の名月の法要はどこにしよう、、2年続けて唐招提寺の観月讃仏会に行ったが、今年はちょっと変えて同じ西ノ京ながら、薬師寺の観月会にしてみた。


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中秋は年によってずいぶん時期に幅があるので、昨年なんか18時でもまだ明るい9月前半だったので、雰囲気いまいち、今年は29日と良い感じに暮れている日程となった。


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薬師寺の観月会は東塔西塔のある白鳳伽藍ではなく、道を挟んで反対側の玄奘三蔵院伽藍で行われる。この伽藍は平成3年建立という新しさ、できて間もない頃、平山郁夫画伯の大作「大唐西域壁画」を見に来たことがあるが、以後なかなか足が向かなかったので、久しぶりである。


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本当はもっと早い時間にご法話もあったのだが、法要にぎりぎり間に合う時間、まほろば会館にあわてて点心を受け取りに行ってもどってくると、、、


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あら、お坊さんご一行がすでに入堂を始めてはる。


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その頃月はちょうど伽藍の向こうから顔を出していた。おお、今日は雲一つ無い夜空、まさに美しい名月である。昼間は汗だらだらの暑さだったが、この頃になると風も涼しい。(もうすぐ10月というのに涼しい、、、なんて言葉を使わないといけないなんて)


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18時半に一斉に開くはずだった大唐西域壁画殿、ちょっと手違いでなかなか開かなかったが、暗い中で扉が開かれると明るい壁画が美しく広がる。


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玄奘三蔵像を祀る玄奘塔にて法要は行われた。

なぜ玄奘なのか?
薬師寺の宗派である法相宗は唯識思想を旨とする。唯識学派の教えを求めて「不東」の志で不屈の旅をしたのが玄奘三蔵であり、それを日本に持ち帰った道昭は唐で玄奘に学んでいるのである。

(不東:インドをめざし西へ進む玄奘の、教義を得るまでは決して東の唐へは帰らないという意志を表す)



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法要が進むにつれ目の前に見える月はどんどん昇っていく。
何枚も写真を撮ったが、なんとかきれいに撮れたのはこの一枚だけ。


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加藤朝胤管主さまのお顔が灯火に照らされる。
献茶もあったようだが、私が座った位置からは見えない。


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その後薬師寺ともゆかり深い世界的ハープ奏者・福井麻衣さんの演奏があった。


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ハープ演奏を入り口の門のほうから。
背景に玄奘三蔵さんのお姿が。


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この頃には月はここまで昇っていた。


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加藤管主さまのおしまいのご挨拶を聞いて、、、


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参拝客は順番に壁画堂へ、久々に大唐西域壁画を拝見。お坊さんのシルエットが背景と相まってちょっと玄奘っぽく見えない?(^_^;
壁画はインドのナーランダ僧院にたどりつくまでの険しく過酷な道のりをたどるように描かれ、天井にはラピスラズリの青に散華が舞い、日月がある。若い頃見たときよりは深く感動、あれから人生色々あったし(ありがたいことに大過はなかった)。


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不屈の精神の玄奘三蔵像を間近で拝むことができた。


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裏千家淡交会奈良支部のみなさんによる野点呈茶席。


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見えるかな、手前に月見団子。


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玄奘三蔵伽藍をあとにすれば白鳳伽藍の東塔西塔が。


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しかしお弁当、小さい箱なのにしっかり詰まってて、ボリュームもあり、美味しかった。右は拝領したお札。薬師寺さんってなんかいつも太っ腹なのよね。コロナの間は無かったが、花会式のお弁当や鬼追い式の後のおうどんや。好き♡




西山厚先生と行く大和古寺探訪〜空海の足跡をたずねて - 2023.09.22 Fri



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 明日香の秋!
一袋100円の柿にツルムラサキ(ああ、買って帰るんだった、、、)


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ここは岡寺、1年前飛鳥光の回廊で来てから1年ぶり。
今回は奈良交通のバスツアー、それも元・奈良国立博物館学芸部長(現・名誉館員 帝塚山大学客員教授)の西山厚先生とご一緒に、解説を聞きながら、という贅沢なツアーなんである。


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(名物?岡寺のビー玉手水)


奈良の仏教美術、歴史を語らせたらその面白さで右に出る人がいない、という先生、オンライン講座で時々拝聴しているが学者然としてなくて、時に目からウロコぼろぼろの切り口をみせてくださるので、超人気。実はこのツアーも販売開始になるとすぐ満員御礼になると聞いていたので、奈良交通のメルマガをこまめにチェックしてゲットしたのだよ(*^_^*)v



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今はすっかり岡寺だが、本当の名前は龍蓋寺である。(岡というのはここらの地名)草壁皇子(天武、持統の息子 帝位を継ぐ前に若くして亡くなった)と一緒に育った義淵僧正が皇子の宮のあったここを寺としたという。義淵といえば当時の仏教界のトップだったそうで(弟子に行基、玄昉、良弁など)伝説ではこの地を荒らす龍を退治して、この池に封じ込め岩で蓋をしたというのが寺名の由来。


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これがその封じ込めた岩。
まあ今では信じる人はいないけれど、、、でも、というのが次の伝・義淵僧正の墓での先生の深いお話。


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小高い奥の院に立つ義淵僧正の墓と言われる宝篋印塔、実際には後世に作られたものと思われる。なんか墓らしきモノがある、だれの?わからんけど、この寺で一番大事なのは義淵だからそのお墓にしちゃえ、というのがあったのだろうと。
また現在奈良博に寄託されている国宝・義淵僧正像、これも実は聖僧だったらしい。聖僧(しょうそう)とは奈良時代まで寺の食堂(じきどう)に安置された像で、食事の時にこの像の分まで並べるのがきまりだったとか。(文殊とも御賓頭盧とも)平安以降にすたれたものなので、この像だれの?ワカラン、じゃやっぱりここで一番大事な人物は義淵だから義淵像にしちゃおう。ということらしい。国宝なのに、、、国宝なのに、、、、



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(おみくじの龍の玉)


こんな歴史の話、西山先生からしか聞けない。
先生がおっしゃるに、事実はどうでもいいんです。義淵の墓であろうがなかろうが、像であろうがなかろうが。いままで多くの人によって大事にされてきた、ということが大事なんです。西山節炸裂、なんだか感銘をうけた。美術館、博物館で「伝」がつくものは多い。しかしその真偽よりも大切にまもられて伝えられてきた歴史のほうが尊い、、、深いなあ、、。



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ちなみに今回のツアーは「空海の足跡をたどる」、、、であるが実は岡寺はあんまり関係ない(西山先生曰く)。でも空海が湧かせたという井戸(瑠璃井)はあって、お大師様の石像も。これも伝説に過ぎないけれど、そう信じられてきたことが大事なのね。


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奥の院から見下ろす本堂。
本堂には白い塑像(!)の如意輪観音様がご本尊としておられる。一見如意輪観音にはとても見えず、阿弥陀様のような像で、古い形式なのだそうだ。これも空海伝説があって、空海が天竺・唐・日本の三国の土を混ぜて作ったという。(♪天竺震旦わが朝三国に、、、謡曲「百万」の一節思い出したわ)


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ここからは飛鳥の風景が一望の下に見られる。
いつ来てものどかな明日香村、どうぞこのままでいてね。


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これは三重塔(比較的新しい復興)の軒四方にぶら下がる琴。これは言われないとわからんわ。風が吹くと鳴ることもあるそうで。


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このお寺で一番空海に縁のあるモノと言ったらこれです、と修行中のお坊さん。乙訓寺(唐から帰国してまもなく空海が別当をつとめた)の橘の種を先代ご住職?がもらいうけて植えたものだそうだ。今ではすっかり大きくなって青い実をつけていた。

さて、お次は久米寺。

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紫陽花が有名なので、その季節に一度来たことがある静かなあまりひとけのないお寺である。
聖徳太子の弟・久米皇子創建とか久米仙人とかいろいろ伝説はある。


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だが、空海的に一番大切なのは彼が密教の神髄である「大日経」をここの多宝塔で発見した!ということである。今までの仏教のあり方に疑問を抱き、何度も泣くくらい苦しんでいたが、この経をみたとたん、これだ!と直感。いかんせん、当時の日本にはだれもこれを読み解くことができる坊さんはいなかった。よって空海は渡唐を決意した、というばりばり空海ゆかりの寺なんである。(一般的にはしられてないと思うよ)


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空海が大日経を見つけた多宝塔があった場所に礎石が残っている。これは教えてもらわなければ絶対スルーするよね。ちなみに奥に見えるのは仁和寺から賜った再建された多宝塔。


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それにしても空海のあまりの運の強さを再認識する。

本来遣唐使船に選ばれなかった彼は20年待たないと次の便はなかったところ、船が九州で座礁、待機していたため間に合って乗ることができたこと。
当時大唐で密教の第一人者であった恵果和尚(青龍寺)が亡くなる直前に会えて、その教えをすべて体得できたこと。
帰りの遣唐使船は十数年先の予定であったが、唐の皇帝が亡くなりその弔問に臨時の船が出て3年足らずで帰国できたこと。


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いずれもひとつ時期を間違えば入唐できず、恵果にも会えず、唐で亡くなっていたかもしれない、、、仏様の加護があったとしか思えない、不信心モノでも。


さらにバスは走って橿原市十市町・正覚寺へ。ここは初めて。(大和八木の近く)


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なんとここでは、西山先生が来られる!というので十市町公民館で自治会総出のお出迎えに感激。ここのご本尊、大日如来像の里帰りに関わったのが当時奈良博におられた西山先生だったのだ。

正覚寺は無住の寺で、地域の人たちが守ってきたのだが、大日如来像(平安時代)は天部立像、地蔵菩薩立像とともに、昭和50年代に修復修理のため、ずっと奈良国立博物館へ寄託されてきたのだ。


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地域の人たちにとって、ご本尊のお帰りは悲願であった。そのために博物館とかけあい、新しく収蔵庫を建設、ようやく昨年三体そろってのお帰りとなったのだ。
木の香も新しいお堂に安置された大日如来は智拳印を結んで柔らかなお顔(撮影OK)。

ちなみに智拳印は密教・金剛界の大日如来。胎蔵界のは円をつくるような法界定印。この金剛界、胎蔵界の密教をまとめたのが恵果和尚、と教えてもらう。う〜ん、勉強になるなあ。


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一緒に里帰りされた錫杖を持たない古い様式のお地蔵様とならぶのは西山先生。なんでも国博時代、この像とはずっと仲良しだったんだそう。またここで久々に巡り会えてうれしそうである。


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こちらはお向かいの阿弥陀堂、どちらかといえば地域の人の集会場的な雰囲気。自治会の方々にも色々お話をうかがえた。


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帰りに公民館で一服もさせていただく。ほんまにありがたい。それもこれも西山先生のおかげ。すっかり旧交をあたためて、ツアーの時間はどんどん押すのであった(^_^;


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なので奈良市内の大安寺にたどり着いたときにはもうお寺の門が閉まる時間、結局閉門時間を過ぎてまで拝観をゆるしていただいた。


DSC06159.jpeg


何回か来ているし、昨年は奈良博で大安寺展もあったし、なじみがあるのだが、おや、新しい建物が、、、今年4月にオープンしたばかりの新しい宝物殿だった。

ここではCGでいろんな角度から見られるかつての南都七大寺の一、広大な境内を誇った昔の大安寺の姿を見ることができるゲーム機みたいなのもあって面白い。


DSC06160.jpeg


しかし、、、境内いたるところに達磨が、、、実はこれおみくじの容器。もらった人がおいていったのがこんな感じに。


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本堂では貫首さまの太鼓うちならしながらの読経を拝聴、天井を見上げると格子天井のすべてに梵字、と一部三鈷杵。まさにここは真言宗のお寺なんだなあと思う。大安寺は若き日の空海が学問にはげみ、大きな影響を受けた勤操(ごんぞう)和尚に教えを受けた寺なのだ。


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空海は亡くなる前、弟子達に御遺告を残したが、その中に「大安寺を本寺とせよ」という条文がある。東寺でもなく高野山でもなく南都の大安寺だった、というところにこの寺の重要性を知ることができる。


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西山先生は貫首さまと仲良しで、お坊さんのなかで一番好きな方、と言われた。ご自分の葬式は是非大安寺でされたいそうだ。(葬式はほとんどやってないらしいが、、、(^_^;)


DSC06164.jpeg


あ〜、それにしてもいっぱいのダルマだこと。

明日香村からだんだん北上して大安寺にてツアー終了、たくさん勉強させてもらったことに感謝。ますます西山先生から目がはなせない。






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