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2023-06

シラカシでストールを染める〜アトリエシムラ・ワークショップ - 2022.09.02 Fri



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本日はここ、高島屋からの連絡通路もあるGOOD NATURE STATIONにて草木染めワークショップへ。

草木染め・紬の人間国宝志村ふくみさん洋子さん親子(説明はいらないですね)が主幹の草木染めの学校・アルスシムラの主催である。アルスには友人が通っていて今春独立、織り姫さんとなって、現在私の草木染めの着物を依頼しているところ、自分もちょっと草木染めかじってみたくての参加。


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GOOD NATUREの開放的なスペースの一画で軍手ゴム手の準備が整えられていた。教えてくださるのはシムラの若い女性である。染色は結構肉体労働と聞いていたので、こんな華奢なかたが?と驚いたが、草木染めを志村先生に習いたくて関東から上洛されたという情熱の持ち主。


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草木染めの染料になる植物は一言でいえば何でもあり、なんだそうだ。スタンダードなもの=藍、紅花、茜、刈安などなど=だけでなく、道ばたの草など、これで何色になるのか?と不思議に思うようなものまで、ドライにしたものもあればフレッシュな摘み立ての葉っぱを使ったものあり。自然はさまざまな色を与えてくれる。
さて、8月の材料は「シラカシ(白樫)」ひらたくいうとドングリの一種。



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半日のワークショップなので、染色液はアルスの方が前もって用意してくださっている。シラカシを山ほどひたひたの水で煮て、一晩放置、翌日また煮てこんな色の染色液ができる。これを見ただけではどんな色に染まるのか見当もつかない。

さて、ここからシルクのストールを染めていくのだが、染色中はそれに集中するので画像はない。

最初の段階で染色液はぬるま湯程度。水で濡らした白いシルクを液につけて、まんべんなく行き渡るように手でずっと布をかき回す感じ。液の匂いは、はと麦茶の匂いが一番近い感じで、飲めそうな気すらしてくる。ご一緒した方々とおしゃべりしながらかき混ぜるので10分弱があっという間。

一回目、布はかすかなベージュ色になる。これをGOOD NATUREの吹き抜けのテラスで風にさらして少し乾かす。これがなかなか開放感があって気持ちよい。
二回目は染色液の温度が少しあがる。軍手にゴム手でもちょっとあちちという感じ。さらにベージュが濃くなる。といってもやさしい淡い色。
三回目、温度はさらに上がり、、、でもゴム手なので耐えられないことはない。さて、このベージュに媒染(染色を止め繊維に定着させる)をかけるとどんな色になるのか。


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今回使う媒染は鉄(木酢酸鉄)、水に数滴たらすだけ。
あ、ほんまに木酢の匂いやわ。
草木染めは媒染剤によって色が変わるのが面白い。鉄の他に、アルミとか銅とかも使われる。


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ほんのりベージュだったのが3回媒染してこの色になった。


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面白いのが染める人によって色味が異なってくること。媒染を1回にしたり、染色液に媒染後また付けたり、とかその成果がこれである。真ん中のが媒染前の色に近い。右が私の、左がお隣さんのである。

染め上がりに納得したら水洗いをして持ち帰り、帰宅後さらに水洗いして陰干しで完成!である。


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その後アトリエシムラで染められた糸の色を見せてもらいお話を聞く。これが同じシラカシで染めた糸である。奥が紬糸、手前が精錬した絹糸で材質だけでもこれだけ違う。


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黄色でも上は刈安、下が山吹。
刈安は少し緑がかっているので、藍を混ぜて緑を作るのに(単独植物で緑はできない!というのが不思議〜)よく使われる植物で、昔から近江刈安は有名、なかでも伊吹山で採れる刈安は特に質が良いという。


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同じピンク系でも、左から桜(特に花が咲く直前の木がよい発色なんだそうだ)、中が茜、右が紅花とバリエーション豊か。植物からこれだけの色がとれるとは、昔からの知恵はすごいね。ただ生き物相手なので、化学染料のように安定した発色はむずかしく、気候や土壌、その日の温度や湿度で変化し、全く同じ色ができない、、というのは弱点でもあり、また色のゆらぎが面白いという長所でもあると思う。



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これはムラサキで染めた糸、ムラサキは根を染色に使うので、いわゆる紫根とよばれる。植物としては絶滅危惧種なので非常に、非常に貴重なもの。まあ、しかし柔らかくて美しい色だこと!ほれぼれしちゃう。これで染めた着物をまとったらいかに気持ちよいであろうかと妄想にふける。
今度はこれらの糸を使った機織りワークショップに是非参加したい!



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このワークショップにはスイーツとハーブティーがついている。そのまま同じフロアのGOOD NATUREのレストランHyssop さんで数種類のミントを使った香り高いハーブティーと、


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ちょっと内容がよくわからないけど(^_^;台湾系スイーツっぽいのを美味しくいただき、ご一緒した方々と染色の感動を語り合いお開きとなったのである。


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こちら完成形。


*アトリエシムラワークショップ→ 



吉田塾〜小袖② - 2017.11.16 Thu

北観音山町内無明舎・吉田家住宅にておこなわれる恒例の吉田塾
今回のテーマは小袖第2回目(1回目はいきそびれた)と聞いていたのだが、、、、




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な、、、なんだ!?あれは!

荒巻鮭のようだが本物?彫り物かなんか??




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近寄ってみると匂いがするので、あ、やっぱり本物の荒巻鮭。

なんと吉田孝次郎先生(吉田家当主・前山鉾連合会会長)ご自身がさばいて荒巻にされていたのだった。家の中はここんちの猫の餌食になるので、外にぶらさげはったとか。とても洛中の風景に見えなくてあせった(^_^;




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吉田コレクション小袖編。
まずは幕末の頃、裕福な上つ方がまとわれた萌黄色の小袖から。




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淡雪の景色だが、この芝垣と黒木の鳥居で「野々宮」がテーマであろうとおっしゃる。

これを見て、ああ、この方は源氏物語がお好きなんだな、、、と心で得心するのが教養ある上流階級の方々の嗜みであると。

白の部分は伏せ糊で地の白をのこし、彩色は藍のみというシンプルながら地紋の豪華さで見せる上品な美しさ。よほどの身分と教養を兼ね備えた女性が誂えまとわれたのだろう。





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二枚目は浅黄のちりめんに松林、その中に笈と笠、上前には兜の刺繍。

これもこの紋様を見たら、笈=安宅の関+兜で義経、源平を連想できなければならないそうだ。
こちらは刺繍がほどこされ、すこし華やか。




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源平から脱線して、義経が落ち延びた平泉で毎日手をあわせたという中尊寺・人肌如来を描いた棟方志功の版画。これを先生はつい最近市で入手されたよし。





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かくの如く日本の古典紋様には物語性がある。源氏物語であったり平家物語であったり、そのなかのシンボル的な物が紋様になっている例が多いのに対して、西洋の紋様にはほとんどそれがない、というご指摘。いわれてみればなるほどそうだなあ。

しかし、紋様を見てこれはあれ、と連想できる教養は現代人にはそうそう簡単には身につかないのは残念。




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中には西洋風で、物語はなくただ美しいという紋様の小袖もある。これは商家の若い女性がまとったものだろうか。牡丹の花、藤の花の刺繍がゴージャス。

上の方が裂けて中がみえているが、うっすらと綿がひかれている。綿入れとはこういうふうになっているのだな。




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ついでビックリは明治の頃の男性用、重ね着の下着、なんとパッチワーク!!
布は唐桟縞をベースに、明治の初期に日本にはいってきたインド更紗などの捺染木綿(プリント地)。この柄は現代でもパッチワーク用の布によく使われているモノに似ている。

上着をさらっと脱いだときに、これが見える訳ね!粋なおしゃれ!




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吉田塾の楽しみはこれらの貴重な小袖を手にとってさわって見ることができること。

さわってみると思ったよりどれも軽くて手触りがよい。
退色もせずほんとうに200年もたったものとは思えない。当時は化学染料もなく草木染めであったとおもうが、その染色技術の高さにも感銘をうける。




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まあ、この刺繍の細かさ。




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染め残しで現された淡雪の部分に地紋が浮かんでなんと上品な美しさ。日本人の引き算の美しさが如実に感じられる。




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これは先ほどの笈の小袖の兜の部分。




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手にとって見て、兜のそばに鐙も描かれていることに気づいた。すばらしい。





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吉田家のお庭。

今年の祗園祭宵山はここで祗園囃子を聞きながらおよばれしたっけ、と思い出す。
奇跡的に残った大きな町家(維持のご苦労はほんまにたいへんだと思う)、やはり京都はこういう家があってこそ、だなあと改めて思う。




朝鮮毛綴・山鉾風流〜吉田塾 - 2017.03.17 Fri

洛中の吉田家住宅、ついこの前まで山鉾連合会の会長をつとめておられた吉田孝次郎さんが生まれ育った家であり、歴史的意匠建造物でもある大きな表家造りの町家(祗園祭のとき北観音山の屏風飾をするところといったらわかるかな)。

ここで年に数回吉田塾と銘打って京都の歴史や文化、暮らしについてさまざまな講義というかもっと気楽な勉強会がある。昨年からちょこちょこよせていただいている。
今回は吉田さんのライフワークでもある朝鮮毛綴のお話しだ。



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奥の座敷にはお雛様。
京都では旧暦に祝うのが一般的。(うちの郷里もそうだった。3月にまだ桃も咲かないのにやっちゃうのは東京流か)
これは吉田家のお雛様で江戸末期の古今雛といわれるもの。





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さて、まず座敷に広げられたり掛けられたりした朝鮮毛綴の実物を見たりさわったり。
実はこれらはつい先日ソウルのギャラリーで里帰り展示を終えて帰ってきたばかりの物。吉田さんのコレクションは72点に及ぶという。

朝鮮毛綴は15世紀末から19世紀初頭まで、朝鮮で織られた毛織物で縦糸が木綿、横糸に山羊などの硬い毛を使ってみっちり硬く織られた織物(硬すぎて虫もくわないので残ったとか)。
これも不思議なもので、本国の朝鮮には伝世品は2点しか残っていないのに、山鉾町周辺に特異的に数多く残っているのだ。ほとんどが江戸時代の山鉾風流(装飾)に使われてきたもの。

こういう敷物は両班などが屋敷で使っていそうだが、15世紀の朝鮮王・世宗(セジョン)(ハングルを発明した王様)の時代、海外贈答以外に使ってはいけないという禁令がでて、朝鮮半島では流通せず、日本にだけ多く残ったそうだ。





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障子を通した光がそそぐいにしえの毛氈。
現在は退色して茶色っぽい色になっている部分は、かつては猩々緋くらい鮮やかであっただろうと推測されるとか。

紋様は織りで色を分け、その上に筆で絵を描くという二重構造。模様のテーマはずばり吉祥。




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山鉾町に伝わる朝鮮毛綴をスライドでみせてもらう。

これは特に有名な放下鉾所蔵、江戸時代に「ばけもの氈」とよばれ親しまれたものらしい。鮮やか!
なぜばけもの、、と呼ばれるのかは紋様がよく見なければなにを描いたかわかりづらいところかららしい。しかし分析してみると朝鮮王朝の吉祥紋がすべからく描かれている。
五羽鶴・鳳凰・玉取獅子(ギョロ目の獅子がじゃれ合ううちに毛玉ができ、中から子獅子が生まれるといった奇妙な紋様)・虎・牡丹・蓮・鵲(かささぎ)、、、などなど。

これらの紋様は多くの毛氈にみられるパターンらしい。他には霊芝とかうずまきの瑞象とか、よくわからないものまで(^_^;




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これらの毛綴がどういう道をたどって山鉾町にたどりついたのか?
まだそれは解明されていないらしいが、吉田さんの研究では、おそらく朝鮮通信使が将軍に献上して渡来したのだろうと。江戸時代の江戸図屏風に通信使の絵が描かれており、その中の献上物のなかに赤い織物のようなものがあるのが、おそらくそれが朝鮮毛綴ではないかとのこと。また、さきぼどのばけもの氈の裏に「拝対馬」の墨書があり、対馬藩も交易にからんでいたらしい。

そしてその華やかさ、美しさ、丈夫さ、に目をつけた京の町衆が祇園祭の山鉾風流にぴったり!と思ったのだろうな。





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端の方は毛がすり切れて,縦糸の木綿だけが残っている部分もある。




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これは緋色の上に緋色の絵の具で紋様を描いた部分。同じ色とはとてもおしゃれではないか。




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おしげもなく座敷に広げられた朝鮮毛綴。そういえば、飲み会の時にも惜しげもなく鍋の下になんか敷いてたよね(^◇^;)それだけ時代を経て尚、丈夫な綴れということだろう。
なにより渋い美しさである。今年の祇園祭の山鉾を見る楽しみがまた増えた。




<おまけ>

吉田塾。朝鮮毛綴だけでなく、京都の町衆は跡取りの長男だけ篤く教育を施して、他家に出る予定の次男以下には教育投資をしない、という徹底した合理的(?)習慣があったとか、そんなお話しもきけます。
ちなみに孝次郎さんは次男なので、極楽のような?少年時代を送ったそうですが、長男の兄上の早世で跡をつぐことになってからは厳しく勉強させられたのだそうです。





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