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2015-03

謡曲「東北(とうぼく)」〜軒端の梅 - 2015.03.05 Thu

真如堂の北西、吉田山荘までの間にいくつかの小さな非公開寺院があって、そのなかに軒端の梅で有名な東北院もあります。二年ぶりに梅の季節にたずねました。



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非公開寺院で現在は常住のご住職がおられるのかおられないのか、やや建物や土塀の崩れ方が気になるところではありますが。

由来は古く、藤原道長の娘・上東門院彰子(紫式式部、和泉式部が仕えた中宮だった方)の発願で、その後なんども火災や移転などで現在の場所におちついたのは元禄年間とか。扁額が後西天皇(後水尾さんの息子)のご宸筆だそうですが、全然ここからはみえません。



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なによりここの院は謡曲「東北(とうぼく)」のゆかりの場所として知っている人には有名。前回来たときはそれほど能に興味がなかったのですが、最近ちょっと謡曲づいて学習してからのおでかけ。


かつてこの院が法成寺(現在の鴨沂高校あたり)の東北にあったころ、和泉式部が手植えした梅の木。それを軒端の梅と名付けて朝な夕なこれを愛でたそうです。


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現在軒端の梅と称する梅の木はこんな感じで、盛りをむかえようとしています。残念ながら和泉式部が植えた梅ではありませんが、よすがとはなりますね。



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ストーリーは、、

東国より都に上って来た旅僧が、東北院を訪れ、折から花盛りの一本の梅の木を愛でていると、美しい里女が現れ、その梅の花は好文木や鶯宿梅という名で呼ばれるべきで、和泉式部が植えて「軒端の梅」と名付けたという由緒や、寺の方丈は式部の寝所であったことなどを語ります。

例によって、僧に読経を頼み、自分が梅の木の主であることを告げ、消え失せます。

僧が読経をしていると、和泉式部の霊が現れ、昔関白藤原道長が、法華経を高らかに誦しながらこの門前を通られるのを聞いて、「門の外法の車の音聞けば我も火宅を出でにけるかな」と詠んだので、その功徳により死後、歌舞の菩薩となったと語ります。更に、和歌の徳を讃え、舞を舞って、消えていきます。


ちなみにこの謡曲は江戸幕府の謡初の式には、「老松」「髙砂」とともにかならず謡われる曲だったのだそうです。

歌舞の菩薩となって、、、というのは昨年見た「杜若」の在原業平と同じだな〜。こういう〆になる曲は他にもあるのかしら。


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和泉式部といえば平安を代表する美女、恋多き女であったことで有名なので、梅の精にたとえられてもむべなるかな、ですね。これが紫式部なんかだと、小難しい感じだし、清少納言(彰子に蹴落とされた?中宮定子に仕えた)だとちょっと艶っぽさが足りない感じだし。



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高貴な梅の精かはたまた和泉式部の霊か、美しい天女の様して舞う女人の姿が目にうかべばよろしいのですが、いやいやまだそこまではいきませぬわ。




 春の夜の 闇はあやなし梅の花 
     
        色こそ見えね 香やは隠るる
         
              香やは隠るる 香やは隠るる  
 

 今はこれまでぞ花は根に  鳥は古巣に帰るぞとて
     
           方丈の灯し火を  火宅とやなほ人は見ん
        
    こここそ花の台に  いづみ(出づ身・和泉)式部が臥所よとて
     
            方丈の室に入ると見えし  夢は覚めにけり
                     
                       見し夢は覚めて失せにけり




<東北院: 京都市左京区浄土寺真如町83>

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