fc2ブログ
topimage

2016-11

吉田塾〜富岡鉄斎、、、というよりコロタイプ印刷勉強会^_^; - 2016.11.19 Sat

文化庁の有形文化財に登録されている新町六角下ルの堂々たる表家作りの無名舎・吉田家住宅。



PB130030.jpg



というより、祗園祭の北観音山のご町内といった方がわかりやすい。ご当主は山鉾連合会の会長を長らく務められ、後祭復活をライフワークとされていた吉田孝次郎さん。(いつも山鉾巡行の先頭を裃姿で歩いておられるのがかっこいい)

ここで年に何回かひらかれるNPOうつくしい京都さん主催の「吉田孝次郎が語る連続講座吉田塾」に、やっと参加できた。(なかなか日曜日は忙しくてねえ、、、)




PB130031.jpg



京都に移住する以前から京町家にいたく興味を持っていた私は、わざわざ見学予約をしてご当主のご案内の元、拝見したことがある。しらべてみたら9年前のことだった。

あれからイベントとかもあって、何回かお邪魔した。この家が一番輝くのは祗園祭期間中の屏風祭だろうな。表の格子を外して、ずっと奥の坪庭〜奥座敷までみえる涼しげなたたずまいは、「日本の美しい暮らし」を体現している。
(↓)


P7220162_2016072222380127f.jpg
(今年の宵山の吉田家屏風飾)




IMG_4468_201611172257544ed.jpg



表の間にて。

本日のテーマは「富岡鉄斎」。

鉄斎と言えば近代の人なのでなんとなく、なじみがある。幕末〜明治にかけての文人画家、儒学者。私は主に蓮月尼の元ですごした侍童の時代、彼女およびその人脈に受けた影響というのに興味がある。

鉄斎は三条衣棚あたりの法衣商の家に生まれたと言うから、まさにこのあたり、闊歩していたにちがいない。



IMG_4452_201611172257503a6.jpg



まずは吉田家から新町通りをまっすぐ北に約1km、歩いたところの便利堂さんへ、吉田さんを先頭にみなぞろぞろと。(三条富小路の便利堂のショップの場所とはちがうよ)
おりしもそちらで鉄斎展をされていたとか。すでに終了した展示を特別にみせてもらうことになったのだ。

便利堂さんは日本で唯一コロタイプ印刷の技術を残しておられる歴史ある会社(明治20年創業)
便利堂と鉄斎は実はご縁が深くて、彼の画集の印刷を受注し、家族ぐるみのつきあいであったという。展示には便利堂さんに鉄斎自ら贈った原画の他、自社のコロタイプ印刷で複製した作品などが。




IMG_4461.jpg



ここで我々、ちょっと鉄斎をはなれて、聞き慣れない「コロタイプ印刷」について興味津々。
コロタイプのコロはコロイド=ゼラチン、それの光による硬化性を利用した印刷技術で19世紀のなかばごろフランスで発明されたのだそうだ。

現代の一般印刷のオフセットでは、拡大すると網点という点々が見えるのだが、コロタイプは網点がなく実になめらか。見せていただいた鉄斎の特に水墨画はどうみても印刷にはみえない。
一番感動的だったのは、本物?と思った原稿用紙に薄い鉛筆で書かれた繊細で淡い文字が実は印刷だった!ということ。すごい技術だなあ。




IMG_4458.jpg
(コロタイプ印刷機械)



しかしながら、なぜコロタイプが廃れたか、というとその厖大な手間!!
オフセットに取って代わられ次々と廃業していく同業者、そして日本で(もしかしたらいずれ世界でも)唯一の便利堂さんは、コロタイプを文化財複製に特化して生き残っただけでなく、見直されつつあるその技術を伝えていこうという試みもされているとか。
ちなみにモノクロが限界だったコロタイプに多色刷りを開発したのも便利堂さん。

美術館の絵はがき屋さん、、、くらいにしか認識していなかったなんて浅はかだったわ。良い勉強になった。




PB130035.jpg



ふたたびてくてく歩いて吉田家に帰る。
ここは二階の板張りの間で宴会用につくらせたとか。ここにご当主のおじいさんが鉄斎に書いてもらったという「豊楽」の軸を拝見。鉄斎74歳の字。(鉄斎は89歳まで生きた)吉田家とも交流があったのだ。




PB130041.jpg



その9年前にお邪魔したときにもここの障子は猫用、あるいは猫が自分であけた穴があったのだが、やはり今もある(^_^;
あの時は猫自体もいて、廊下で昼寝してたっけ、、、と思ったら、、、、



PB130038.jpg



あはは、、、やっぱりいたいた。あの時の猫とは違うだろうけれど。
え?見えないって?では拡大して、、、



PB130039.jpg



うちのシェルと柄がいっしょ。町家には猫がよく似合う。(たぶん)

さて、ふたたび表の間にもどって、吉田家にある鉄斎の軸をいくつか拝見。

ご当主曰わく「鉄斎はきたない絵を描き、へたな字を書く。」よって江戸時代から続くような旧家は(杉本家など)鉄斎の書画をきらって、もっぱら四条円山派などの優美な屏風など所蔵しているが、吉田家のように日清日露戦争以降に台頭した新しい時代の商家の気風にはかえってマッチしたのだ。




PB130042.jpg



ご当主が子供だった時代には、おとなりの逓信病院は三井家の屋敷のひとつ、お向かいは(これは私も壊される前を知っている)松坂屋の大きな建物(↓)、新町あたりはたくさんの表家作りや小さな町家などが軒を連ね、そういう住環境で豊かな子供時代をおくることができた、とおっしゃる。



_photos_uncategorized_2008_07_16_1wky57ev-thumb-thumbnail2.jpg
(2007年私が撮影)



それがつぎつぎと町家は壊され、甍の一文字がびしっと並んだ景色も失われた。
この日も南観音山にあった大きなお屋敷(料亭)が更地になったのを知ってショックだった。昔の暮らしがなにがなんでもよかったとは言わないが、町並みの美しさはもう壊滅状態だな、洛中。悲しい。



IMG_4471.jpg



なんだか鉄斎の話よりコロタイプとか、洛中の町並みの話に流れてしまったが、吉田さんの講座はそれが面白いのだ。生きた洛中の昭和の暮らしを知ることができる貴重な講座である。

最後に鉄斎の「不言実行」の文字がかかれた盃でお酒をみんなで回し飲み、なんとか鉄斎でまとめてお開き(^_^;!





NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

最新コメント

プロフィール

しぇる

Author:しぇる
京都へ移住する前から書いているブログなので、京都移住後もタイトルに愛着がありこんなタイトルです。でも「もう・住んでる・京都」です。旧ブログから引っ越ししてきました。

最新記事

カテゴリ

未分類 (14)
茶の湯 (394)
茶事(亭主) (84)
茶事(客) (176)
茶会(亭主) (18)
煎茶 (10)
京のグルメ&カフェ (94)
町家ウォッチング (10)
弘道館 (7)
岡崎暮らし (109)
MUSIC (4)
能・歌舞伎 (65)
京都めぐり2023 (32)
京都めぐり2022 (29)
京都めぐり2021 (30)
京都めぐり2020 (19)
コロナ緊急事態宣言下の京都2020 (12)
京都めぐり2019 (28)
京都めぐり2018 (20)
京都めぐり2017 (30)
京都めぐり2016 (34)
京都めぐり2015 (34)
京都めぐり2014 (39)
京都めぐり2013 (36)
京都めぐり2012 (6)
本・映画 (14)
美術館・博物館 (144)
奈良散歩 (133)
大阪散歩 (1)
着物 (8)
京の祭礼・伝統行事 (60)
祇園祭2023 (9)
祇園祭2022 (11)
祗園祭2021コロナ下 (5)
コロナ下の祇園会2020 (1)
祗園祭2019 (18)
祗園祭2018 (11)
祗園祭2017 (17)
祗園祭2016 (18)
祗園祭2015 (16)
祇園祭2014 (13)
祇園祭2013 (14)
修二会2023 (10)
修二会2022 (8)
コロナ下の修二会2021 (6)
修二会2020 (5)
修二会2019 (3)
修二会2018 (4)
修二会2017 (4)
修二会2016 (3)
修二会2015 (3)
修二会2014 (3)
修二会2013 (3)
その他の町散歩 (11)
京都和菓子の会 (4)
ソウル紀行2023 (3)
イスタンブール・カッパドキア紀行2013 (8)
英国田舎紀行2015・湖水地方とコーンウォール (7)
パリ紀行2014 (7)
ノルウェー紀行2016 (4)
古筆 (1)
ポルトガル中部〜北部紀行2017 (7)
京都でお遊び (13)
ギャラリー (4)
暮らし (14)
中国茶 (49)
京都の歴史・文化について勉強 (3)
過去ブログ終了について (0)
猫 (1)
滋賀さんぽ (21)
オランダ・ベルギー紀行2018 (9)
ニュージーランド紀行2019 (9)
台北旅行2018 (3)
高野山 (2)
骨董・工芸品 (1)
東京散歩 (2)
諏訪紀行2021 (4)
金沢さんぽ (2)
御所朝茶 (4)
有田2022 (1)
熊野三山巡り (2)
兵庫さんぽ (1)
太宰府 (2)
丹後旅行 (3)
仕覆制作 (5)
信州旅行2023 (2)
京都モダン建築 (3)

月別アーカイブ

検索フォーム

リンク

このブログをリンクに追加する

QRコード

QR