故・江里佐代子さん宅にて〜月の茶会 - 2017.09.05 Tue
截金(きりかね)は奈良時代から伝わる伝統装飾技法で、細く切った金箔、銀箔、プラチナ箔を筆と漆を用いて貼っていくもの、かつて仏像や仏画の荘厳に使われた技法。
仏師である夫君の仏像を截金で荘厳するうちに、独自のセンスで仏像以外の截金作品を世に送り出し、人間国宝になられたのが故・江里佐代子さん。
10年前に渡欧中、急逝された。まだ62才の若さであった。

この手鞠のような截金の茶器に惹かれて香雪美術館の江里佐代子展を見に行ったのはもうかれこれ5年前のことである。今でも、この茶器、ほしいな〜〜〜〜と切に思うのだが。
今はお嬢さんがあとをつがれ、弟子もたくさん育っているときくし、デパートの伝統工芸展でもその作品を見ることができる。
実はその佐代子さんのお宅、夫君の康慧さんの工房平安佛所はご近所なのである。
いつもこの截金を連想させる目立つデザインのお宅を見ながら散歩したりしている。なんと!そのお宅の中に入れるチャンスが!!
江里さんのお宅の奥は、かつて業躰さんのお家だったという茶室があるのだそうだ。
ここである先生が釜を懸けられる。そのお弟子さんのご縁で、その茶会に参席させていただいた。江里さんがここを入手されてちゃんとした茶会をするのはこの日が初めてだったそうだ。
この先生と佐代子さんとのご縁は、まだ佐代子さんご存命中、彼女の茶器を手に入れたいと連絡してからはじまったという。
しかし、あの家の表からは想像もできないようないい茶室がこんな町中にひそんでいたとは!
感激!
広間の席は今ではもう作れないという絞りの毛氈を斜めに敷いて、「みなさまが正客」という態にて、茶箱の月点前。器据(きずえ)というぱたぱたと折りたためる板をつかったり、香道からきたウグイスという茶筅立てを使ったり、なかなか雅なお点前で、茶箱点前の中では御所籠の次にややこしい。
青銅器みたいな形の瓶掛けがおもしろく、茶箱は木目が美しいタモの木製。茶箱用の小さい茶碗が実は乾山であった。
ご年配とお見受けするが、受付もこなし、後見の後見もこなし、なかなかのスーパーレディの先生、私もあのくらいになったときにかくありたし、と思う。しかも語り口はやわらかく、お弟子さん達を大切にしてはることは、お弟子さんを見ていてよくわかる。しかもこの茶会のために長いことご無沙汰しながらもかなりご遠方から駆けつけられた方も多い。
次は四畳半の小間にて。
さすが、業躰さんのお宅だっただけあって、露地も小間の造作もすばらしい。天井も真行草、栗?のナグリの落としがけ、大きなスサがとびとびにはいった土壁、その他きっと建築士のI君をつれていったらいろいろ解説がきけただろうに、惜しいことをした。
小間の点前も茶箱月、で意表をつかれる。今度は利休好みの菊置き上げ茶箱。瓶掛けも菊の模様の火鉢。お菓子が松露であったが、月に村雲の懐紙にのせると、松露も月にみえるね。
床は近衞基熙の歌で十三夜を歌った歌。(先生も読めない、、、とのこと(^_^; )
小間を担当しはったのが先生の東京のお弟子さんグループ。なんでもお互いに20歳代の時にであわれてから、先生のお宅に居候して、あちらこちら茶席や美術館、道具屋さん、ごいっしょされ、まるで姉妹のように約半世紀を過ごされたとか。こういう師弟関係は昨今ではなかなかあるものではないと思うのだが。うらやましいお話し。
さて、堺万さんの点心をいただいて、いよいよ江里康慧さんの工房へ。
あの截金を連想させる大きな窓は天井の高い工房の明かり取りの窓であったか!初めて内側から眺めることができた。新たに生まれる途中の仏様、修復中の仏様、いずれも華やかな緻密な截金の荘厳をまぢかに見ることができたのは得がたい体験であった。
お隣は佐代子さんのあとを継がれたお嬢さんの朋子さんの工房。こちらのギャラリーでは香雪美術館で見た作品にガラスなしでふたたび出会うことができ、感動を新たにする。この髪の毛より細い金線で、ほぼ下絵なしの幾何学模様、ぴしっと整合する様はもう感動しかない。ああ、やっぱりほしいな〜〜〜ひとつくらい☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆