口切りの茶事〜但馬の国 - 2017.11.26 Sun
口切り茶事は茶人にとって格別な茶事であって、何回経験してもうれしくわくわくするものである。
そらいろつばめ様が今年ルソンの壺を手にいれられた。それを使って初の口切り茶事に光栄にもお招きいただいた。
道すがら、渓谷の美しい紅葉を楽しみながら期待に胸がふくらむ。

(待合の青銅製火鉢)
実はご主人が数年前、某国営放送の「ルソンの壺」という番組にでられたのだが、まさかほんもののルソンの壺を手に入れはるとは思わなかった。
ちなみにルソンとはいうが、これは出荷されたのがルソンであって、明時代の中国南部で焼かれたもの。
待合には蓮月さんの千鳥と初霜を歌った歌が。
蓮月さんのは比較的読みやすいはずなのに全然読めない、、、、しかし心配ご無用、この日の御連客はその道のエキスパートがいらっしゃる。
(腰掛待合)
そうなの。本日の御連客はすごい方々ばかり、宗教界からは師匠、建築士I君、茶道に関する学術論文をたくさん上梓されている方、某美術館の学芸員さん、Y流に出入りしているお道具屋さん、不肖ワタクシだけが普通(^_^;、、、という錚錚たるメンバー。このあたりそらいろつばめ様のご人脈の広さと深さがうかがえる。それでも一応みなさまと面識はあるのでそれほど肩はこらずにすんだ。
いよいよルソンの壺拝見。
釉薬のなだれがとても景色の良い壺である。そして今までみたどの口切りの茶壺より大きい。女性が指先だけで持つには(体温で中を温めないように茶壺は指先だけで持つ)ぎりぎりくらいの大きさ。
いよいよ封印を切る、口切り。楽しみでもあり、どきどきもする瞬間。
松籟園が詰めた碾茶の「御茶入日記」。
これを拝見してどの濃茶をいただくか相談して決める。今回3種の濃茶をご用意くださったようだ。
選んだ松籟の半袋(詰茶のなかに埋まっている紙の袋・10匁入り)を取り出して挽家におさめる。
詰茶は薄茶になる。
今回ご亭主は茶臼までご用意くださった。これがまた良い宇治石の茶臼で!
客がそれぞれ挽かせていただく。学芸員さんが茶臼の研究もされている方なのでひき方とか、目が詰まったときの対処法とかいろいろご教授いただきありがたい。
初炭所望を予告無しでもすらすらこなす師匠、さすがである。
釜は宗旦好みの擂座釜、底が意外と浅いのが特徴。香合がF太朗君のベトナム土産の安南とは、ここでも茶縁を感じるなあ。
そしてお心いれの懐石であるが、、、なんといっても特筆は今季初の蟹〜!!
こちらは蟹の産地も近い。蟹味噌いりの器もつけていただいて、早くも冬の味覚を堪能。
あ、但馬牛の芋煮もおかわりほしかったわね♪
懐石のお運びはご主人もお手伝いされる。ご夫婦で御茶、、、うらやましいな〜。
ご亭主お得意のイタリアン系のサラダ。器が古伊万里のよくみると千鳥の形。
待合の千鳥の歌に響き合う。
主菓子は御菓子丸さんの「甘い土」
雲龍ににたほろっとした小豆がほのかに甘く美味しい。甘い土、、なるほど。
中立は寒いので囲炉裏のそばで。暖かいシアワセ。
熱々の美味しい濃茶をいただく。今年もよいお茶ができた、これからの1年、よいお茶をたくさん飲めますように。
干菓子がこれまたビックリさせられるものであった。
麩の焼きのうえに塗られたペースト状のもの、味はほのかに甘くほのかにすっぱく、、、これは一体なんだろう?だれも当てられない。それもそのはず、京丹後のフルーツガーリックという初めて食したニンニクペースト。とてもニンニクとはどうしても信じられない味なのだ。全然ニンニク臭もない。これはやみつきになりそうだ。
薄茶の朱というよりは赤い雪吹の茶器と、少々扱いにくそうなやたらと長い茶杓が点前中、気になったが、、、、なんと!これは水屋のMさん所蔵の黒田辰秋の作であった!
(露地の楓の落ち葉もまたよき風情にて)
最後まで、いろいろ驚きや初めてやで楽しい仕掛けをたくさん仕込んでいただいた口切り茶事、さらに道具についてあれこれその道専門の御連客の解説付きというまことに贅沢な茶事、心より堪能いたしました。ありがとうございました。
ご主人様、水屋の方々にも御礼申し上げます。