謡曲「松風」にちなむ茶事〜跡見 - 2018.11.09 Fri
京都に約3年間、お茶でご遊学されていたA庵様が関東へ帰られて3年がたちました。このたび、関西で結んだご縁を訪ね歩く小旅行をなさり、あちこちへ茶事のお招きがあって十分楽しまれたごようすです。

K庵さんとともに三人で奥伝の自主練を毎月していたころが懐かしく、あのころが一番奥伝が身についたなあと今でも思うのです。
このたび最後に我が家へおこしくださるとのこと、さらりと仕出しに濃茶続き薄でおもてなしを。
跡見というのは、先だっての名残の夕ざり茶事と同じ趣向と道具でおむかえしたからです。
この跡見のためにブログでは伏せておきましたが、テーマは謡曲「松風」
春に演じられる事が多い「熊野(ゆや)」とあわせて秋の松風は「熊野松風に米の飯」といわれるくらい人口に膾炙した演目です。
待合では「水に映る月」の京都望月派の絵
これは須磨の汐汲みの海女、松風と村雨の姉妹が汐車にのせた水に映る月を。
「さし来る汐をくみ分けて 見れば月こそ桶にあれ」
こちらで亭主ももちだしで仕出し弁当をいただきながら、かつての思い出話や近況報告など話ははずみます。
名残の風炉(大鉢)は前回と同じで。
須磨へ流された在原行平(業平の兄ちゃん)はそこで海女の松風・村雨とねんごろになりますが、やがて赦されて都へ帰還、かたみに烏帽子と狩衣を残します。
炭手前がないので床は総飾り。
これは貴人行平をあらわすつもりの冠香合。
秋海棠の実、薄、ヤブミョウガの実、茶の花
残された姉妹は行平をしのんで嘆き暮らし、亡霊となって旅の僧の前にあらわれるのです。後半では松風は行平の烏帽子と狩衣をつけて妄執の舞を、やがて夜明けと共に僧に供養を頼みきえてゆく、、、そんなお話しが「松風」なのです。
松風がテーマ、というのも、この汐汲み桶の形(金輪寺)の「松風」という薄器を手に入れてから、なんとか上手く使えないかと温めてきたのですが、やっと納得のいく「村雨」の茶杓を手に入れたので、Go!、、、ということになりました。
A庵様は京都におられるときに能楽堂かよいをされていたので、これも趣向かと思いまして。
今回の干菓子は季節がうつって、亀廣保さんのは吹き寄せにかわりました。あと「かよひ路」と、先日の正倉院展の帰りに樫舎さんで手に入れたさるぼぼせんべいなど。
お久しぶりの御連客様、お初にお目にかかる御連客様、ごいっしょに楽しいひとときをすごしました。お茶を愛するがゆえに知り合って、こうやって長くおつきあいできるのも茶の徳ではないでしょうか。今度は私が関東の方へ参りますわよ(^-^)/
かくてこれを最後に今年の風炉はおわり、柑子の色づく頃?いよいよ炉の季節がはじまりました。開炉です。