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2019-10

奈良坂・奈良豆比古神社〜翁舞 2019 - 2019.10.11 Fri

奈良市の北端、奈良坂にある奈良豆比古(ならづひこ)神社は万葉歌人で有名な志貴皇子を祀る。
誰でも知っている有名な「いわばしる 垂水の上のさわらびの 萌え出づる春に なりにけるかも」の作者であるが、好きな「采女の袖ひるがえす明日香風 みやこを遠み いたづらにふく」、、これも彼だったんよね。



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10月8日はこの神社の宵宮祭、国の無形民俗文化財である翁舞がおこなわれるのだ。(20時〜)
朝から雨が降っていたが、夕方にはやんで雲も切れてきた。奈良坂あたりはまわりも真っ暗、そのなかでご近所の祭礼灯がほんのわずか灯る小さな神社である。




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志貴皇子は歌人としては有名だが、天智天皇の息子でありながら(当時天皇は天武系が継いでいた)政治の表舞台に出ることがなく薨去された。しかし歴史のいたずらで彼の死後、天武系の後継者が絶え、皇子の六男・白壁王が光仁天皇として即位、「春日宮天皇」(もしくは田原天皇)の追号を送られている。

しかし後世に歌人として名を残した方が大きい功績だと私は思うよ。さわらび〜の歌はほんといい歌だしね。




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19時半ごろには舞台とお社の間の松明に火がはいる。こんなローカルなお祭り、、と思ったが、外国人観光客もいて、19時には舞台まわりはびっしり人垣が(;゜0゜)

さてこの翁舞、志貴皇子の第二皇子・春日王が病を得た時、彼の息子ので歌舞音曲芸能好きであった浄人王が、父の病気平癒を祈って芸能を神に奉納したところ快癒したことが始まりとされている。
神社が有する面(おもて)の中には室町初期のものがあり、猿楽の黎明期と一致し、この翁舞はのちの猿楽能楽の原型であることは確かだということだ。



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まず鼓や笛、地謡が舞台に上がり、お社に向かって拝礼する。だから舞も当然ながらお社に向かって演じられる。
ここの翁舞は三番叟の原型と言われ、現代の三番叟が千歳・翁・三番叟と三人で演じられるところ、古式のそれプラスαがあるのが見所である。



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翁舞は翁が三人で舞うという特殊なもので、翁役の三人は翁らしく両手をひろげて舞台に上がる。



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千歳は15歳までの男の子がつとめるのが決まりらしく、今年は10歳の子だと聞いた。翁の面がはいった面箱をうやうやしくささげて舞台にのぼる。

現代でも翁は「能にして能にあらず」といわれる特殊な舞であり、舞台で神懸かり状態になることを表す、むしろ古代宗教的呪術的な意味合いと言われる。だから現代でも翁だけは面を舞台上でつける習わしだ。




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まずは前謡、かの有名な(意味不明でも有名な)
♪ とうとうたらりたらりろ たらりあがりららりろ、、、、

から始まる。




(とうとうたらり、、のちょっとあとから始まってます)




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そして千歳の男の子
きりっとして登場。むつかしい謡をよくおぼえたね。



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ゆっくりな脱力系のお囃子と共に舞台を四角く何周かするのだが、これは、、、うむ、「道成寺」の乱拍子(1m四方を15分以上かけて回る)を連想させるな。



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次は一人翁の舞

♪ あげまきや とんどうや

の不思議な呪文があたまにこびりつく。

それにお囃子の ♪おんは〜〜  のところの脱力感がもうツボでツボで❤️
↓ とりあえず聞いてみてくだされ。








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この一人翁のあとに、控えていた脇が二人でてきて他に類を見ない三人翁の舞になる。



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この三人でてくる意味はわからないらしいが、かつてはこれが原型だったのかもしれない。



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♪ 富貴栄華と守らせたまうこれ喜びの まんざいらく



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まんざいらく まんざいらく まんざいらく

、、、で、すっかりめでたい心地がする。このあと面をはずして、神様に拝礼したあと、とっとと舞台下に退場するのも見所。



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三番叟は動きが一番激しいので演じるのは若手だ。
出演者は氏子中で継承、しかし、ごたぶんにもれずここも後継者不足、保存会を作って維持されていると聞いた。



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♪ 喜びありや 喜びありや

三番叟はセリフが口語に近く、所作もなんとなくユーモラス。
ひとくせ舞ったあと舞台上で黒式尉という(翁の面の黒バージョン)面をつけ、この翁舞独特の千歳との問答が始まる。


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しかも問答とはいえ、問いかける方は相手の方を向くが、問われる方は神様の方を向く、という顔をあわせない不思議な形。


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せりふは口がもつれそうな古語で、これはずっと伝承されてきたもので、室町の口語なのだろうか。狂言の言い回しにちょっと似ている。しかし、意味はあまりわからない💦


  われらがなおうずるはじょうどんの前よりもってやすう候 まず御舞候え

  ただ御直り候え  さらば鈴を参らそう



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鈴を千歳から受け取って三番叟はそれを持って舞う。現代の三番叟の鈴の段は、本来はこういう形だったのか。



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三番叟が舞い終えるとお囃子も次々と下がっていき、舞台は空になる。

あ、月がでてきた。暗くて見えないとおもうけれど、その横にそびえる影は奈良県天然記念物の大樟(樹齢不明)である。春日王が病を得てこの地で療養した時の記録に「大木繁る平城山の一社に隠居さるる」の文言があり、まあ、その当時の木ではないだろうと思うが。
しかし、昭和27年に枯れてしまったが、万葉集にも歌われたコノテガシワ(児の手柏)樹齢1300年と断定された切り株が境内にあるので、油断はできない(^_^;)



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21時にお開き、夜のバスは暗い道をすっとばして10分で近鉄奈良駅についたのであった。
猿楽の原型はとても印象強く、これは今後観能の時に思い出すだろうなあ。




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京都へ移住する前から書いているブログなので、京都移住後もタイトルに愛着がありこんなタイトルです。でも「もう・住んでる・京都」です。旧ブログから引っ越ししてきました。

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