飄々表具ー杉本博司の表具表現世界〜細見美術館 - 2020.04.15 Wed
写真家?空間アーティスト?建築家?、、どれもひとことでこの方を表す言葉がわからない。
本来なら3月21日グランドオープンする予定だった(現在GW開け以降予定)京セラ美術館、新館で瑠璃の浄土展をされる予定であった杉本博司さん。
それと連動して細見美術館で彼の表具表現世界の展示。(私が行ったすぐあとに細見も休館になってしまった!)
(2016年細見美術館フライヤー)
初めて杉本さんの名前を知ったのが、やはり細見で4年前に開かれた味占郷茶会であった。館長さんとご懇意だそうで、美術館の茶席・古香庵で亭主をつとめられた。今思えばかなり贅沢な茶会だったなあ。
その時の美術館の展示が、床飾りとして杉本表具とそれに見合う置物、見立ての花器、超絶微細細工ものの花、、、いずれも垂涎、かつ物語のある美しさにハッと胸を打つ感動を覚えた。以来杉本さんの名前はしっかり脳裡に焼き付き、彼が監修した新しくなったMOA美術館にも行ったのだ。
その時も、一枚あれば誇れるような古筆切を、ばさっばさっと彼流にビックリするようなアレンジの表具で見せてくれてビックリしたものだ。今回の展示に当時見たのと同じ表具の軸が何点かあって、懐かしく思いだした。
4年前にも印象深かった伝小野道風「小島切」、軸は一見キューブの絵が書いてあるように見えてその一面が古筆切になっているというもの。一般人にこんなことはできんよ。
今回各軸に添えられている置物は細見美術館蔵の名品、ほのかに軸の意匠に沿うものになっている。
これも記憶にあるのがエジプトの「死者の書」断片。この表具が麻のコプト織り、軸先がローマ時代の青銅の杖の握りの部分、置あわせが桃山の螺鈿の洋櫃。下に敷いてある板がまた思わずヨダレが出そうになった天平時代の春日杉古材敷板!
今回置あわせの細見コレクションのどれも、ほんとに一枚あったらな〜、、、と思う古材板や根来盆に載っていて、見応えがあった。
他に印象的な物として、神護寺経経帙、ほそい竹ひごで作られ織物や金具で装飾された経帙は平安後期のもの、初めて見た。二月堂焼経も堂々の数十行、一文字が焼銀で、これが焼経の紺地にすごく合う。
面白かったのが、太田蜀山人の「素麺のゆで加減」という円相みたいな絵に、表具は上下に十牛図(これも円の中に描かれているもの)をあしらったもの。
また歴史のあるものばかりでなく、坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」の楽譜の表具が、赤と緑の一文字、中廻し(?)でクリスマスカラーになっていたし、アンディー・ウォーホルのキャンベルトマトスープの落書きみたいな絵の置あわせが、実際のキャンベルトマトスープの空き缶とか。
表具紙も同じ生成り色でもテクスチュアの違う物を三種組み合わせたとか、そこはやはり杉本さんのセンスと才能がすばらしい。
最後に入り口にあった、光琳の紅梅白梅図をモノクロ+銀で置き換えた杉本さんの「「月下紅梅白梅図」にまた出会えたのがうれしかった。この屏風を前にして4年前の茶会は行われたのであった。
この展示は休館にともない終わったが、作品のいくつかは細見の4年前のHPから見ることができます。我が拙文より遙かにわかります(^_^;