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2020-05

「酒場の京都学」加藤政洋・著〜片手に裏寺町を歩く - 2020.05.20 Wed

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自粛生活では日ごろ読めない本を読む時間ができる。
新刊「酒場の京都学」(ミネルヴァ書房・加藤政洋著)が、おもしろそうなので読んでみた。


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ちょっと行儀は悪いが、蚊もまだでないし、坪庭の縁側がここちよいので座椅子をもちだし読書。ある意味極楽。


京都における一杯飲み屋の系譜を随筆、文学作品、ガイドブック、地図を手がかりにたどった本であるが、懐かしい場所や店名がたくさんでてきて、そういえば、京都に最初にであって半世紀ちかくたつのだから、私自身も歴史の証人であるよな、などと思いつつ楽しく読めたのだった。

特に三高生が戦前集った酒場の話(三高生だった織田作之助、梶井基次郎他、京都帝大卒業生や教官達の随筆や作品など)は、市電が走り回り、学生に鷹揚寛容な京都の町の当時の雰囲気や、学生達のバンカラ気風や、真剣に人生や学問にむきあったであろう青春時代が描かれていて、なぜか懐かしい。(さすがにまだ生まれていないけど(^_^;)

お茶屋お座敷といった京都文化があったせいか、江戸では一般的だった庶民的な一杯飲み屋が、京都にあらわれるのは実は明治末〜大正初めであったとはしらなかった。それ以前は料理屋や茶屋が酒をのませていたそうで、美濃吉、中村楼、東洋亭、菊水など、この時代から現代まで生き残っていて、自分も利用している店の名前がたくさんでてきて、そうか、そんなに昔から、、、と感慨深い。現在は東華菜館になっているが、かつては矢尾政というビアレストランだったと聞いたが、ちょうどこの時代だったのだなあ。
四条大橋の袂のレストラン菊水は、今でもスタッフがクラシックな制服でサービスしてくれるので、往時をしのばせる雰囲気があって好きだが、ここの二階も出来た当初の大正初め、三高生でうめつくされたのだそうだ。

木屋町という一大飲み屋街ができたいきさつも語られていて、学生時代木屋町にいきつけの安い店があった身としてはこれもまた懐かしく思う。もうウン十年も木屋町界隈で飲んでいないなあ。


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(ゑり善と銀行のあいだの細い道が裏寺町の入り口)


一番興味をもって読めたのは、第5章の「<裏寺町>の空間文化誌」である。裏寺町は四条河原町からすぐ、というしょっちゅう行くエリアなので、ここの近代史をたどりながら歩くことができるのだ。
「裏寺町」という名前は以前はなかったのに最近言うようになったと言われる京都の方もおられるが、明治〜大正時代の随筆に「裏寺町通」という名前がでてくるので、正式名称ではなかったにしろ使われていたのは確かなようだ。



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本書から地図をお借りしよう。

京都帝大教官ドイツ文学者・成瀬無極のエッセイ
<この京で一番明るい新京極の裏には暗い京でも一番位通がある。裏寺町通といふのがそれである。。。(中略)。。明るく賑やかな京極通からふとこの裏町へ紛れ込むとまるで晴れやかな眩しいやうな宴会の広間から俄に暗い湿っぽい地下室へ降りたやうな気がする。。(中略)。。寺町といふ名に背かず、東側には寺が多いが西側には不思議な家が軒を並べてゐる。>

そう、ここにはお寺も多いがなんだがよくわからない戦前からあるとおぼしき建物が多い、と以前から思っていたのだ。地図をみて初めてここ、大善寺を中心に枡形になっているんだと知った。周りの貸席というのがおそらくその不思議な建物で、<ぼんや>とよばれた。まあ、どういう意味なのかいろいろさしさわりもあるので、詳しくは本書を読んでね(^_^;



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これが今も残る枡形の中心の大善寺。



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この建物が以前から気になっていたのだが、上記地図で貸席花の家にあたる場所である。現在は普通の民家と思われるがなんとなく昔の雰囲気が残る。



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枡形をぐるっと反時計回りに回ってみると、他にもいくつか名残の建物とおぼしき建築がいくつか。


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現在は一品料理屋になっている建物も、おそらく貸席であったのじゃないかな。



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そしてぐるっと回って大善寺の南側の通の正面にボーリング場。


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ここは地図上では西念寺というお寺になっているが、平成の初め沓掛の方へ移転されたというから、比較的最近までちゃんとお寺あったんだなあ。このエリア、昔ながらのたたずまいのお寺もあるが、ビルの上に引っ越したお寺もあって、新京極、河原町という賑わいの中、まあしょうがない選択かなと思う。


もひとつ、とても興味深かったのが柳小路。
四条からはいってほぼすぐの処にある細い小路だが、最近おしゃれな店がたくさんはいってプチ観光地となっているが、私が学生の時は場末感漂う妖しげな飲み屋街であった。



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ふたたび地図をお借りする。これは昭和9年の地図。
ここに伝説の?三高生御用達の飲み屋<正宗ホール>があったのだ。京都の草分け的な酒場で三高生の寮歌(「紅もゆる」)がガンガン鳴り響いていたという。

大正4年に三高を卒業し同校教授となった英文学者・山本修二のエッセイ「三高生の酒場」
<正宗ホールの経営者は、さる画家を夫としたおしんちゃんを頭として、お仲ちゃんお高ちゃんのチェホフではないが「三人姉妹」であった。江戸から流れてきたという触れ出しで。。(中略)。。素人だけに清潔な感じがあり、三高生がワンサワンサと押しかけたのでたちまち店が繁盛して、次第に酒場を拡張し、東京に支店が出るやうになったのも、みなこれ三高生のおかげであった。>

酒場で寮歌を高歌放吟しつつ酒を飲み、人生を学問を熱く語り、少々ハメをはずしても「(三高生はのちほとんど京都帝大へ)将来出世して日本をささえる人になる学生さんたちやさかいなあ。」と許してもらえた時代、、、(あくまでも想像の域をでないが)そんな学生時代にとても憧れる。



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その正宗ホールも昭和29年の戦後の地図では名前が消えている。



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その正宗ホールの時代の雰囲気が残っていないかと、柳小路へ行ってみる。



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右手のnanaco+のあたりが西館だったところだろうか、こちらは面影はない。



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東側のこの建物、これこれ、この雰囲気、そうちゃうか?


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上記の地図にもあった「静」という正宗ホールの隣にあったお店がまだ残っている!


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調べるとこの静というお店のオーナーが正宗ホールを買い取って店を拡張したとのこと、まさにここだったのだ。そして静の店の中に若かりし頃の有名人たちの落書きが壁にたくさん残っているという記事を読んで、あれ、行ったことあるわ!と、もうかなりぼやけている学生時代の記憶がかすかに蘇ってきたのだ。当時、このあたりもっとうさんくさい雰囲気だったなあ。



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柳小路をでるとお寺とビルの見慣れた風景。

本書で初めてしった「柳小路」の名前の由来。柳が入り口に植えてあるからではなく、柳本氏という方が所有した土地を開発してできた路地だったので、柳本小路だったのが、いつのまにか「本」の字が欠落した結果なんだそうである。こういう歴史を知って歩くとみなれた小路もとても面白いものだ。


(付記)
終章の「会館」
京都には四富会館とか折鶴会館とか、立ち飲み屋がぎゅうぎゅうにつまった建築がある。これもあやしげな雰囲気でなかなか一人で足をふみれられないのだが、お友達のぽんさんなどはホームグランドにしてはる。これは一軒の町家を細分化して利用した物で、ある意味町家の再利用。ぶっ潰して味家のないペンシルビルに建て替えるよりはるかに京都の町並み保存の役にたっているよし、なるほどと納得したのであった。こんど行ってみよう。





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