仕舞「山姥」キリ〜観世会館にて舞う - 2023.03.22 Wed
そもそも今年の能の社中の発表会、「山姥」キリ(最終部のクライマックス)を舞おうと思ったのは、この扇に魅せられたからである。
山姥扇、山姥にしか使われないのであるが、この意匠がなんとも好みで。月に叢雲、どこかおどろおどろしい雰囲気をたたえる。、、、というので自前で買ってしまった。これを持って舞うならやはり「山姥」であろうと。鬼女ものでキリはスピード感があり好きなんだな、これが。

数年前に一度習っていて、今年になってから再稽古を始めた。ゆっくりじと〜っという仕舞が苦手な私であるが、山姥はいい。修羅物みたいに男性っぽいわけではなく、でもキレが要求される。社中の人に、なんか楽しそうに舞ってるねと言われるくらいに好き。
「山姥」のあらすじはざっくり言うと山姥のまねをして評判をとった百ま山姥という女性の舞手が信濃の国の山を越えるときにホンモノの山姥にであい、一度舞ってみよといわれる。月待つ頃に山姥はほんとうの姿を見せ、そもそも山姥は、、、と邪正一如、煩悩即菩提、など禅の境地を語りつつおのれは煩悩の塵つもって山姥になった、と語りいずこともなく消えていくのだ。
山姥というとイメージ的にはおそろしい、人でも食らいそうな鬼女とおもわれるが、この山姥は違う。どういう存在なのかいまだよくわからないが、樵が疲れてやすんでいるとその重荷を背負って里まで送ってやったり、機織女の手伝いをしたり砧をうったり、なんだかいい人なのである。
山の精といおうか、縦横無尽に山また山に雲に身をかえ水に身をやつし移動するかっこいいばあさん、でも煩悩からはなれられぬ悲しさもただよわせる、、、そんな感じ。
(黒い着物でいきたかったので、模様はちょっとかわいらしいが黒の小紋に袴)