野村美術館開館40周年記念シンポジウム〜「茶碗〜茶を飲む器の変遷と多様性〜」 - 2023.09.08 Fri
野村美術館開館40周年記念シンポジウムが、蹴上の国際交流会館で開催された。わがテリトリーであるのでチャリででかける。もちろん野村美術館自体がご近所〜♪

長年野村のセミナーは楽しみにしていたのだが、コロナ禍を経てなくなってしまい、美術館との御縁も切れたような気がして寂しかったのだが、このたびのシンポ、うれしい限りである。出かけてみると200人という定員にかなりの人が押し寄せたようで、なんと今までお知り合いになったお茶友さんにことごとく会うこと会うこと!県外からもお越し、みなさん、知識欲に飢えていたのね〜。
司会は館長の谷先生だが、シンポジストは先だって○交社から刊行された5冊の茶碗シリーズの監修者という贅沢さ。(楽茶碗の楽さんのみ個展で忙しく欠席)
今回は野村の40周年記念もあるが、関西の美術館・博物館をめぐって茶碗を楽しむ、というコンセプトのもと、関西の9つの美術館・博物館共催(*)(相互割引あり)のイベントの一つでもある。(本当は9館共催でしたかったが、野村単独開催になったとのこと)
*京都国博・楽美術館・湯木美術館・野村美術館・北村美術館・逸翁美術館・中之島香雪美術館・泉屋博古館・滴翠美術館
シンポジストは
唐物(中国)・徳留先生(出光美術館)
高麗(朝鮮)・降矢先生(京都国博) (実はここに一番興味あり!)
和物(桃山時代)・重根先生(岡山県立博物館←後楽園に隣接〜)
和物(江戸時代)・梶山先生(中之島香雪美術館)
という錚錚たる方々。
それぞれ持ち時間がかっきり30分で、タイムキーパーがかなり厳しく(^_^;、その時間では内容を盛り込むにも限度があって、スキミング的になったのはちょっと残念であったが、時間的にいたしかたなし。
一番興味があったのは高麗、ついで唐物である。
唐物についていえば、中国の陶磁器の歴史を復習。
中国では荘厳、所有に価値があった建盞天目茶碗、日本では鎌倉室町初期までは同じ扱いであったが、佗茶の台頭とともに天目茶碗は建盞から灰被天目、黄色天目という本国では下位にあったものが逆転して珍重されるようになり、さらにその地位はもっと侘びた高麗茶碗、和物茶碗などにとってかわられる。青磁もまたしかり。(あの色は抹茶の色とはあまり合わない)。発色の一段とおちる珠光青磁や人形手にとって変わられる。ここらへん日本の茶の湯者の審美眼は世界に唯一無二だと思う。
でも、染付は別格、雲堂手、古染付、祥瑞、呉須は名前聞いただけでよだれたれるわ(^_^;
高麗も見立ての茶道具から倭館での日本からの注文品まで、分類を復習。ちなみに高麗茶碗の名称分類は江戸後期に始まったモノ、今でもどこに属するのかよくわからない高麗茶碗は多々ある。
今回初めての知見であったのは彫三島。
いわゆる三島と違って、日本からの注文で作った時代の下ったものだと思っていたし、成書にもそうあるのだが、なんと出土品から判ずるに1570年までに遡れるのだそうだ。だとすると釜山の倭館窯(17世紀)よりはるかに古いということになって、彫三島も日本人発注でなく、朝鮮オリジナルということか??
(つい買っちゃった二冊〜(^_^;)
和物は種類が多岐にわたりすぎて、全部はとりあげきれなかったと思われるが、瀬戸黒と黒織部、志野について、高台の釉薬の掛け残しの形、全体的なシェイプ、文様(檜垣、木賊、花紋など)の比較がいずれもつながりがあることがわかって、とても興味深く面白かった。
特に黒織部、かの有名な菊花紋茶碗、あの菊の絵のある部分が本来の釉薬をかけはずした部分、そこに志野の釉薬を加えたもの、というのは、そういう見方もあるのかと目からウロコである。
いずれのシンポジストもお茶のお稽古をそれほどされておられないように拝見する。しかし、その茶碗への愛はわれわれ普通の茶好きの比ではない。日々館所蔵のお茶碗を手に取っては、にま〜っとしているお姿が想像できるのである。
茶碗一つで、こういう楽しみ方ができるというよい勉強になった(*^_^*)