淡く、長いおつきあいの、、、F太朗さんの茶事 - 2019.01.07 Mon
招いてくれたご亭主は、「淡く、長いおつきあいの方々を、、、」と記した。

待合の井戸もある土間で、お手製の注連縄+餅花が迎えてくれる。
亭主のF太朗さんが陶々舎を出て、静かな上賀茂の、古い農民家を補修しながら住むようになってから早2年近い。
農家の造りで、昭和のにおいが色濃いお宅は、雨漏りとか、壁のシミとか、いろいろ補修がたいへんだったと聞くが、また寂びた良い感じの土壁になったな。朝の光をやわらかく反射して美しい。
はじめて入る茶室の床の間や脇床、仏間だったらしいスペースは、不思議なオブジェとともに、いずれもF太朗ワールドになっていた。
いつか茶事によんでねと、しつこくお願いしていたが、それもきっと忘れ去られたであろうな〜と半ば諦めていたころ、、、、前日連絡の新年早々のおさそいとなったのは、さらに強く強くプッシュした乙女のAちゃんのお力のたまもの、同じく乙女のMちゃんとお相伴にあずかる。
ずっと以前から、シンプルな美しさを茶の道に追求してきた(私的解釈)亭主であるから、茶事といってもいきなり八寸ではじまる、、、、で、お酒、八寸、お酒、お酒、八寸、、、わ〜い、なにこれ、楽しい〜♪
これは牡蠣を醤油で軽く火をとおしたもの、酒がすすんでしまうではないか。
お酒好きの三人の乙女の懐にいきなりはいりますな。
お酒は種類も変えて、冷酒、熱燗。
皿はなく、それぞれの懐紙に手渡しで肴をとりわけるシンプルな懐石。客の所望に懐から杯をだし、さしつさされつ。
じっくり向き合い主客のまじわりに一番重きをおく茶事なのだ。これはいつも真似できないなと思う。
F太朗さんにはじめて興味をもったのは、私がまだ京都に移住する前後だから、かれこれ10年近く前にもなろうか。
鴨ん会と称して、鴨川べりでゲリラ的にお茶をする(鴨茶の元祖は実はF太朗さんなのだ)若者、という認識、お茶のイベントでお姿を何度か見たあと、やっと互いに挨拶をかわしたのは下鴨のK美術の片庇の茶席だった。
それから直ぐに、彼はお茶を愛する三人でシェアする陶々舎に住み始め、そこから茶人としての快進撃がはじまる。豊かな人脈にめぐまれ、たくさんの良き友人にめぐまれ、それもひとえに彼のお茶の魅力と人柄によるものであろうが、今ではお茶の世界ですっかり有名になった感がある。うれしいけれど、ちょっとさびしい、というのが本音。
決して俺が俺が、というタイプではなく、どちらかと言えば素朴で朴訥な感じさえするのは、昔と変わらない。今でも鴨ん会として、花を飾り、茶をひっそりと点てていたころの姿が忘れられない。
F太朗さんのふるさと(関東)風のお雑煮(焼餅、おすまし)で締めて中立。
ああ〜、すっかりできあがっちゃった。
中立の部屋では、F太朗さんが自作した白茶(微発酵中国茶)をのみながら、最近はまっているという碁石を置く、、、ただ置いて、回収するというお遊びをいっしょに。
意味もなく、白黒の碁石やネコヤナギの花芽、茶の実を並べるだけなのだが、それぞれの個性がでるのは如何?なんだか面白い模様がテーブルの上に現れ、、、そして回収、消えていく、それだけなんだが、ちょっと真剣になってしまうのは何故?自分との対話をさせられているような感じ。
これを茶事に持ってくるか、さすがF太朗。
中立の終わりにでてきた、干し柿+とけたバターのお手製菓子が、異常に美味しくて悶絶する。これはなんだ?!これはずるすぎるぞ。普通の菓子がだせなくなるじゃないか。
濃茶は4人共通の知人でもあるAS君の最新作の黒楽茶碗で。
あいかわらず背筋ぴしっと姿勢良く、点前も端整である。
薄茶のお菓子は北陸の砂糖菓子「辻占」、中に占いの小さな紙がはいっている。
(私的解釈)「くよくよせずに(仕事も)辛抱すれば、金がたまって想いのまま(茶道具が買える)になる」
ヤッタ!
思えばAちゃんもMちゃんも陶々舎始まって以来のけっこう長いお付き合いになる。しょっちゅう会うこともあれば、たまにしか会わないときもある若い茶友である。
席中、三人でなにを話したのか、酔っ払って思い出せない。おそらくたわいもないことで盛り上がったとおもわれ、それが幸せな時間というものではないだろうかと強く思う。
F太朗さんとも、いっしょに主催した大覚寺舟遊び茶会の思い出など忘れられないが、ガチで付き合うというわけではなく、つかず離れず、のおつきあい、まさに「淡交」、「淡くて、長い」おつきあいである。そういうつきあいであると、認識してもらったこともまた、うれしいことなのである。
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● COMMENT ●
いいなあ❗
すごくいいね。うん。
N様
はい、すごくよかったです♪
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