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2023-09

京町家・無名舎吉田家住宅にて新旧乙女茶会 - 2019.01.27 Sun

京都に移住する前から、京町家は憧れでありました。鉾町あたりににかろうじて残っている表家造りの大きな商家であった町家は特に。
昨今大きな町家が一夜にして更地になってしまう、という事象をあまりにも見慣れすぎて悲しい思いです。



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六角新町、北観音山の鉾町であり、屏風まつりにひときわすばらしい景色をみせてくれる吉田家住宅(京都生活工藝館無名舎・吉田家)は、まだ京都に移住する前に見学に来て、ご当主の吉田孝次郎先生にご案内いただいたのを記憶しています。
京都に移住後は、祗園祭のおっかけをやっていることもあって、祗園祭と言えば吉田孝次郎(長年山鉾連合会の会長されてました)、吉田孝次郎といえば祗園祭(後祭を復活させた立役者)なので、年に数回の吉田塾にもせっせと通い、ある野望を胸に宿らせておりました。
 
 「この大きな風情のある町家でいつか茶会を開きたい!」

初めは形もないくらいあやふやな願望でしたが、だんだん脇を固めて、さらに昨年吉田家住宅がいずれ京都市に寄贈されることが決まったこと、管理しているNPO法人うつくしい京都さんの体制が整ったこと、などに力を得て、NPOのAさんの多大なご協力の下、ついにその願望を実現させました。




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そう、今まで何回かいっしょに茶会をいろんな場所でひらいてきた新旧乙女たちとともに。

今日は乙女たちと共に準備から当日まで、楽しく幸せだった二日間を追います。




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まずは前日夕刻からの荷物搬入、室礼準備です。

当主の部屋であり、家の中で一番良い部屋である一階の奥座敷は濃茶席に。こちらはまあまあ早くすみました。



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今回は不参加なれど、いつも新旧乙女茶会で煎茶席を担当してくれたFちゃん手作りの注連縄もつれてきました。自分で染めた草木染めのリボン付き。



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問題は二階の薄茶席でした。
こちらはMさん発案の「湯立神事」の趣向で。この笹がなかなか立ってくれず、手こずりましたが、




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笹を立てる糸巻きに石で重しをのっけて+ぶらさげてなんとか安定!ちなみに使った石は吉田家坪庭の蹲居の海にある平たいマグロ(真黒)石(^_^; 石も使いよう。



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ちなみにこの結界の縄は、MさんとSちゃんが夜なべして綯ったものです。すごい!



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そこから紫野TT舎に移動して、Eちゃんの御指導の下、主菓子の花びら餅作り。BGMはボヘミアンラプソディーでガンガン歌いながらノリノリで作ったので、きっとQUEEN風味。



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一夜明けて朝からあいにくの小雨でしたが、雨のなかでこそ庭の風情は増します。ちなみに当日の庭の写真がなくて、これは数日前の奥庭の写真ですが、花期が半年もある白侘助が楚々として美しく、散り花もまた。



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町家は寒い。夏は涼しいけれど冬は下手したら外の方が暖かいくらい寒い、、を通り越して冷たい。そんな寒い通り庭で種火を起こします。この通り庭、火袋、好きな景色だなあ。そういえばこの数日前、NHKの「美の壺」で町家がテーマの回に吉田家のこの景色、でてました。(孝次郎先生もご登場)




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いまでも使える現役の通り庭のだいどこ(台所)、右手には大きな水屋。

かつてここは白生地を扱う商家で丁稚さんやらおなごし(女衆)さんやら住み込みで働いていたそうです。家で一番寒いだいどこで働くおなごしさんはさぞや大変だったと思いますが、下が石畳、というのは意外と便利だとも思いました。水も少々のゴミも下へおとして気にならないし。




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今回待合にした洋間の表の間と座敷をつなぐ坪庭
これぞ THE 町家!のアイテムです。憧れです。ちなみにここの蹲居の石が先ほどの重しに、、、(^_^;



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まずは濃茶席にご案内
いつも吉田塾で使っている部屋がまったく別の空間になりました。これが本来の町家の姿では、と思います。紺の毛氈は吉田家什器。

お正月の室礼で及台子(うちに唯一ある棚系)にして、お点前は4席ともKさんががんばってくれ、私は半東というかしゃべり役。もっぱら吉田家と北観音山について。



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実はここに炉が切ってあることをNPOのスタッフもあまりご存じなかった。開けたのは実に10年以上ぶりとか、中の灰もカチカチでなかなか火が熾ってくれなかった。でも、久々に日の目を見て、炉もよろこんでいるはず、と勝手に解釈。

この釜と炉縁も吉田家什器。良い雰囲気の釜ですが、来歴詳細は不明、弘法市か天神市で先生がゲットされたものらしい。(上記市ではよく先生のお姿を見かけます(^_^;)
(あと、ダイドコの間の舞良戸を開けたら茶道具の吉田コレクションがぎっしり!で驚きました)



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数ある鉾町の中で、唯一粽や手ぬぐいなどのグッズ販売をしていないのが北観音山。本来松坂屋や、三井がいた町内、潤っていたと思われます。なのでこの北観音山粽は非売品のレアもの、2年前に入手したものです。それに梅一枝で床の間の花としました。




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香合は台子の上にのせて
くらたたまえさんのお多福さん。中に穴が開いているので、椿の葉に練り香をのせて上からかぽっとかぶせてみました。



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QUEEN風味の花びら餅も大好評でした。なかでもEちゃんの炊いた牛蒡が絶品、今年の花びら餅の最高峰と思います。



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ちなみに濃茶席の水屋にしたのは孝次郎先生の書斎の一画。狭くて寒い場所でしたが、Eちゃん、がんばってくれました。



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席と席の間だは寒くてぶるぶる震えが来るので、大火鉢のまわりにみんな集まり離れることができません。



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こちらはダイドコの間(台所に隣接する小上がりで奉公人がここでご飯を食べていた)、第2水屋として活躍。



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ダイドコの間にさりげなくおかれた蜜柑がちょっと生活の味をだしていて絵になっていました。



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吉田家には半分内猫半分外猫が我が物顔に走り回っています。建具にも猫の爪痕が、、、(^_^;
この子もその一人で昼過ぎになると「飯くれ」顔で、よそもののわれわれにもアピールしていました。


さて、薄茶席、昨夜の湯立神事席がどうなったでしょう。



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おお!結界がバージョンアップして、なにやら清々しい気にみちている!五色の毛氈は、これも孝次郎先生がだしてくださったもの。床の間の亥の拓本も同じく。(十二支そろったこれは朝鮮半島のものらしい)



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かわいい棗釜に舟板、上賀茂神社の鈴
ここでお点前する乙女はいうなれば巫女ね。
ちなみに竹の三脚はわたくしの労作(YouTubeを見ながら作った、、、)



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乙女初参戦のMYさん、ただ今点前のイメトレ中。
香合が篠笛に薄器が琵琶だったので、席中に雅楽が流れる雰囲気で。これらは、残念ながらインフルで出席できなかった乙女Aさんのお道具。お道具で参加してもらいました。



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席をのぞくと、お客さま方、ぎゅっと結界の中に膝つき合わせてみんな楽しそう。縄綯いコンビがお点前中。



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笑いがはじけたのは、多分これ。これもMさんSちゃん、Mさんのお姉さんが夜なべして作ってくれた五色の辻占干菓子。中にいれる紙は乙女たちが分担して書きました。それぞれ個性が出て面白い。



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だいたいこんな感じ(*^ ∇^*c)

下で濃茶席の準備をしていたら階上からお謡いが!

「げにさまざまの舞姫の〜聲も澄むなり住之江の〜♪」

おお!「髙砂」や!
巫女役のMさんのお謡い、良い声でした。意外な才能にびっくり。

しかもその後の席も、それぞれお謡いができるお客様がいて、必ず祝言を聞くことができたのがすばらしかったです。この吉田家に響く祝言は何年ぶりかだと思いますが、古い町家が往時の姿に息を吹き返したように思いました。

  久々に 祝言の声のこだまして 古き町家の息吹きかえす (拙作)



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最後のお客様をお見送りした後、吉田先生を湯立神事席にお招きして、みんなで一服いただきました。新乙女たちに囲まれて(ちなみに私も先生からみたら十分新乙女!)孝次郎先生、とてもご機嫌でいらしたので、ほっとしました。

使った御茶碗をふととりあげて「お、これは○○やな」と人間国宝の作者の名前をおっしゃる。え?!そうなの?気づかんかった!さすが、物を見る目の鍛え方が違う、と実感したのであります。

そして吉田先生からのお言葉

「お滞(とどこお)りのう」

ああ、こう言うのか。祗園祭山鉾巡行で今でも北観音山の世話役として歩き通される、孝次郎先生、きっと鉾が鉾町に帰ってきた時にもきっとこうおっしゃるのであろう、とじ〜んと来たのであります。



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受付においた、乙女茶会のシンボル(?)陶俑さんたち。(全日根・作)


かくして乙女茶会無事おわりました。
この才能豊かで、お茶大好きな乙女たち、楽しみました、がんばりました。そして幸せな一日でした。

お客様のお一人から、こんな古歌をおくっていただきました。

 「梅の花 手折りかざして遊べども 飽き足らぬ日は 今日にしありけり」

ああ、まさにこの心境です。

旧乙女はあまり変わり映えのない生活ですが、新乙女はそれぞれこれから環境もかわり、新たな世界をめざす乙女も。みんなこれからどんどん忙しくなるし、またそうなって欲しいし、、、ということで新旧乙女チームの茶会は一応これでおしまいです。(正確に言えば、祗園大茶会の野点席が最後です)

また違う形でみなさんにお目にかかれれば、と思います。

お茶で結びついたご縁に深く感謝。
そして締めくくりが我が愛する京町家・吉田家住宅であったことに観無量です。


<謝辞>
吉田孝次郎先生、NPOのAさん、ほんとうにありがとうございました。






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● COMMENT ●

しぇるさん、こんにちは

ああ、やはりこんな素敵なお茶会であったのですね

参加出来ず、残念な思いでございましたが・・・

こんな風に

様子を記事にして頂いて、雰囲気伝わってまいります

お疲れ様でございました^^

高兄様

ありがとうございます。ほんとうに
 飽き足らぬ日は 今日にしありけり
でございました。
で、楽しすぎたので、そののちインフルに倒れるという、、、、(^_^;

こんにちは

お久しぶりです。
インフル、大変でしたね。
引き続きご自愛くださいね。

それにしてもいつも楽しそうなお茶会の様子、とても勉強になります!
私も竹の三脚を今検討中なので(同じく屋内)こちらで拝見させて頂いて頼もしく、参考になりました。
竹の足にはゴムのようなものを置いていらっしゃってそれがストッパーなのでしょうか。
上手くできるかな。。。(^_^;)

cox様

お久しゅうゴザイマス。
年とってからのインフルってあとあとまでこたえるな〜と思いました。

竹の三脚ですが、意外とストッパーなしでも、釜を掛けると重さで安定する、という印象です。
でも板張りだと不安なので、ホームセンターで売っている絨毯の滑り止め(樹脂製の網状のやつ)を10cm四方のサイズに切って足のところに置きました。びくともしませんでしたよ!おすすめ!

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鍵コメ様

えええ〜〜っ!!
そうなんですか〜?鍵コメ様が某WH堂へ、、、(^_^;今度、吉田先生にお聞きしてみよう。(覚えてはるかな?)おそろしい世界ですな。
拓本に関しては、持っている錫杖がセーラームーンっぽいとか、いろいろご意見ありましたが、確か、慶州のナントカいう新羅の将軍の塚のもの、という説がすでにでていました。みなさんよくご存じ!


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