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歴史学者がお正客の夕ざり茶事〜O先生幽寂庵にて - 2019.05.14 Tue

雑誌「淡交」の「茶道心講」でおなじみ、社会心理学者のO先生と知己を得て10数年になる。その間、先生がご亭主の大寄せの茶会や茶事に何度か行かせてもらったことはある。しかし憧れていたご自宅・幽寂庵でのプライベート茶事はまだ経験がなく少々さびしかったのだが、苦節10年?(^_^;ようやく願いが叶い、お招きいただいた。東京へ。

しかもお正客が、最近利休に関する新書をだされたばかりの歴史学者のN先生であった。N先生のご専門は古代史(奈良〜平安)と最近では茶の湯の歴史についていろいろ御本を書かれている。参席するに当たり、事前に拝読させていただいたが、これがすごく面白かった!歴史学とは古文書をいかに読むか、今まで正しいとされていた歴史が古文書一つでひっくりかえされるとか、目からウロコのことばかり、世間で言われる歴史は案外うそばっかりのこともあるのだ、の感を深くした。ただそれゆえ、茶の湯の歴史の泰斗の方々からのご意見も色々あるようで、正解のない文系の学問はいろいろ大変だなと思う。(理系は比較的すっきりしてるんだけれどね)

始まる前からちゃっかり、御本へのサイン会?でご署名いただいてうれしい。



IMG_5131.jpg



待合は、大日本茶道学会を創立した田中仙樵が書いた宗旦の「世間の茶の湯は富貴にしてさはがしく貧賤にして静かなることなし、、、、」の有名な一節。
汲み出しは昨年の茶事で拝見した、敦煌で求められたという夜光杯(葡萄名酒夜光杯 欲飲琵琶馬上催・王翰)にて。

お庭がうまく良い露地になっていて、いよいよお久しぶりのO先生の迎付。ちょっと興奮する。
本席は八畳、季節的にはもう風炉であるが、O先生考案のマンションなど浅い炉壇用の平蜘蛛の釜をN先生にお見せしたかったとのことで、炉で透木にて。

夕ざりの初座は花、O先生が最近興味を持たれているという川上不白の尺八花入れ、入れてあった花はツキヌキニンドウと(たぶん)開花した大山蓮華とあとひとつ(不明)
棚は糸巻棚であったが、あえて地板のない表千家の糸巻棚を使われ、水指が瀬戸であったがなかなか存在感があってよかった。(なにしろ銘が「在黒」)

天板に載っている八角薄器はこれも以前拝見したことのある待庵古材を使った薄器で、今回N先生の御本に「待庵を利休が作ったという根拠はどこにもない」という章があって、それに寄せたもののようです。

炭点前のあと拝見した香合はペルシャの焼物、没薬でも入れたのでしょうか、エキゾチックなもの。O先生の茶事は「和洋の境をまぎらかす」ですものね、と納得。



IMG_1415.jpg
(これはうちの庭のフタバアオイ)


しかし、一番「和洋の境をまぎら」かしたのは材料調達から調理まで(調理師免許もお持ちなのだと!)こなされた懐石であった。お手製のうわさの懐石をいただくのは初めてである。

マグロのたたきに味の違う三色トマトの向付からびっくりしっぱなしで、煮物椀の今年初鱧の骨切りまでご自分でされたと聞くともう脱帽以外にない。
美味しい純米酒のでたあとは、N先生の新書出版記念ということでお祝いのシャンパンもでてきた。ベーコンや野菜、クリームチーズなどをバゲットパンに埋め込んだのがとても美味しく、シャンパンに合う。これは一度中身を詰めてパンごと冷凍し、切ってから解凍という手間のかかったものであった。(ご著書「茶道を深める」にも出てました!)
この季節ヨーロッパでは必ず食卓に上るというホワイトアスパラのアスパラソース掛けというのもお酒がすすんでしまうではないか。

八寸にN先生のご出身地、和歌山の「南蛮焼(なんばやき)」といわれる肉厚のはごたえのある蒲鉾。茶事経験が少なく、肩のこらない茶事にしてほしいというN先生がリラックスできるようなお心遣いを所々に感じましたが、こんなところまでなんですね。

連客のわれわれは懐石の間中、いろいろ疑問に思っていた茶の湯の歴史のあれこれを(公ではちょっと聞きづらいような、、)N先生にお聞きしたらすごくクリアなお答えが帰ってきて、こちらも大いに興奮したのである。もう、こういう茶の湯の歴史の話大好き!

そして、どうして利休の本を書こうとおもわれたのですか?という質問に、今世界的に茶の湯に注目が集まっているが、佗茶=利休と決めつけられるのに危機感を抱かれたとか。佗茶の世界は利休だけが作ったものではない、利休の足跡と言われているもののなかには、他の人の業績もまじっている可能性もあり、もっと大きな時代のうねりの中でとらえないといけない、そういうことを言いたかったのです、と。


懐石の〆に主菓子が、ブランデー漬けの干し無花果などが入った羊羹で、美味しいのなんの。あとでお聞きして、絶対うちでも注文しようと思った。(wagashi asobi)




IMG_5133.jpg



後座は燈火にて。
すごいのは短檠の代わりに天上からぶら下げられた大きな古いランプ。これはオランダへ学会出張されたときに膝の上に大事に抱えて飛行機に乗って持ち帰られたものとか。上からなので仄かなやわらかい影を生みだしてすてきであった。

軸が、お祝いにと「山呼萬歳聲 皇紀二千六百年(昭和15年)」

O先生のお点前は豪快にして細心であった。練られた濃茶はだまひとつなく、なめらか、茶碗の底に残った濃茶の美しいこと。お祝いなのでお相伴、と言われて最後にわれわれと一緒に濃茶を飲まれた。主茶碗が了入の赤、次茶碗が白い釉薬の楽でこれはなんだろ?なんだろ?と首をひねっていたら、なんとO先生が盟友・吉村楽入さんところで手尽くねしはった茶碗であった。



IMG_5175.jpg 



楽入さんといえば、この御著書の表紙を飾ったこの光悦・不二山写し、この茶碗も薄茶で登場してテンションあがった。過日機会を得て、楽入さんところで茶碗をひねったのもよき思い出である。
ビックリなのは、ご自分で絵付けされたというカキツバタの茶碗、金彩まではいった色絵!どこまでご多才なのであろうか。

茶碗で一番いいなと思ったのは鈍翁(もしくは鈍翁指導の陶芸家鈍阿かも)、光悦の黒写し。先だって本物の光悦でお茶をいただきお尻を撫でまくったあの興奮が蘇るようなええお尻のお茶碗でしたわ。



IMG_5134.jpg



クライマックスが薄茶の茶杓、これもだれのやろう?と思っていると、N先生のために削られた御自作で、最後にこれをN先生に共筒、箱とも贈呈されたのだ。しかも銘が「孤高の貴筆」。
こんなのを用意されてもらえるなんて、N先生はどれほどお喜びになったであろうか。

茶事を終えて帰る道すがら、N先生がほろ酔い加減で「楽しかった、ああ、楽しかった」とくりかえしおっしゃっていた言葉にすべてが集約できるのではなかろうか。





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