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2019-12

野村美術館講座〜「黒田家のお仕事」 - 2019.05.28 Tue

琵琶湖疏水分線の散歩道、左手は野村碧雲荘。



DSC05909.jpg



さて、今回の野村美術館講座の講師は、2014年に14代を襲名しはった黒田正玄さん。
千家十職の竹細工・柄杓師で先代の長女さんである。このところ千家十職も半分くらいが女性が嗣いでいるのではないかな。(なんでやろ?息子は嗣ぎたくない人が多いのかな)
12年前、やはりここの野村の講座で先代のお父上が講演されたそうで、私はその時は存じ上げないが、一回りしてお嬢さんがまたここで講義なさるというのも感慨深いのでは。


前半は一昨年亡くなられた隠居された先代が1年かけて作った「竹細工の材料ができるまで」のDVDを拝見。秋に竹林の下見にいって大小3000本の竹にあたりをつけ、11月に切りだし、傷つけないように竹の節に藁をまいて養生しながら運ぶ。この時期一番竹の水分が少ないのだそうだ。

黒田家にはこばれた竹はさらに水分を抜くために根を上にしてしばらく保管される。
年が明けた正月に、作品の大きさに合わせてすべての竹を切る、この作業にほぼ1ヶ月かかるのだそうだ。そののち、竹の油抜きの作業。炭を熾し、灰をかけてその上に竹をならべ、油抜き、竹は緑から鶯色にかわる。どこでやめるかは経験がものをいうそうだ。竹の油抜きは私もトライしたことがあるが、根気の要る仕事で途中でなげだしてしまった。

油抜きの終わった竹は2ヶ月間天日干し、屋外にずらっと竹がならんだ姿は壮観。
この半年のあいだに半分くらいは、ひびがいったり虫が食ったりで細工に使えなくなるのだそうだ。
こうしてできあがりかと思えば、まだまだ!5〜10年ねかせて、狂いのないものが初めて材料の竹となる。なんとも!気の長い話だ。

思えば茶碗の楽家の土も先代先々代、あるいはそれ以上の祖先が寝かせた土が材料となると聞いた。指物師の扱う木材も然り。千家十職のような世襲制のシステムが必要なのは、そういう材料を継代的に守っていかねばならないわけで、妙に納得した。

次に代々の黒田正玄についてのお話し。
初代は越前の丹羽家に仕えていたが、関ヶ原の敗戦にともない剃髪して大津へ移住、竹細工を作り始める。かつては刺し通しばかりであった柄杓(台子につかうやつ)を今われわれがよく使う月形の差し込みに買えたのが初代だったという。伏見奉行であった小堀遠州の目にとまり、注文をうけるにあたってその評判が茶の湯界にひろまっていったそうだ。
晩年は京都の瓜生山(造形大のあるとこね)あたりに住まいし、詩仙堂の石川丈山と親交をもったという。だから黒田家の暖簾は「大津(かつての住まいの名残)茶ひしゃく師 正玄」、丈山の筆になる。
初代の作った竹の一重切り花入「帰雁」は黒田家の精神的なご本尊なんやろうね。

三代から表千家に出仕するようになり、五代で御所西に移転し裏千家にも出仕、幕末の八代は、100年〜120年に一度の竹の自然枯(じねんこ・一斉に枯れる)にあたり、材料の調達が出来ず、「材料不足にて作品を納めるのをしばし待って欲しい」という書状をだしたとか。
(ちなみに洛西ニュータウンは、もともと竹林の名所であったが、この自然枯にあって一斉に枯れたため、一気に宅地開発が進んでできた町なんだそうだ。面白い!)

明治維新以降は茶の湯界の不振もあって、他家同様ずいぶん苦労されたそうだ。茶道具だけでなく生活用品も作っていたとか。また十二代は女性であったそうだが、襲名はしたが表千家に出仕していないため、一応女性初の黒田正玄はご当代ということになるらしい。

この出仕というシステムははじめてお聞きした。襲名する前に嗣ぐことが決まった段階で表千家に出仕、毎月1日に千家十職全員が家元と会合(?)、お茶をのんだり、いろんな話をしたり、、そこで連帯感を強めるのだろう。席順は出仕した順番でつい最近までご当代が末席だったそうだが、来年楽吉右衛門を嗣ぐ篤人さんが新しく入って、順番がひとつ上がったのですって。現在この出仕者の長老が永楽さんで、先代の正玄さんが亡くなった時も、親戚よりさきに永楽さんに連絡をいれ、そこから家元へ知らせが行く、という世間一般とはちょっとちがう独特の世界だ。

最後に竹の話。
日本には約60種類の竹があるそうで、小さい物から茶杓、柄杓、茶器、水指、、と用途に応じて使い分けがされている。
かつては竹林は日本のどこにでもあったし、油抜きの炭も簡単に手にはいったのだが、昨今の炭不足と高騰は身をもって知っているし、竹林も管理に手がかかるため、個人所有の物は次々となくなっていって、だんだん材料不足の危機感があるそうだ。自然枯の問題もあり、生き物を相手にする仕事はほんとうに大変。竹の植物学的知識も必要であり、たくさん勉強されておられるご様子である。

我々が手にする完成品は美しく、使い勝手がよいけれど、それが出来上がるまでの人の手と自然との闘いと、を考えると徒やおろそかにはできないなと思う。




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