「懐石のうつわ」野村美術館〜「瑞獣伝来」泉屋博古館 - 2020.10.06 Tue
会期終了間近の近場の美術館へ滑り込み。

旧細川邸の紅葉もそろそろ色づき始めた。
野村美術館への碧雲荘わきの道、疏水分線の小径はすっかりヌスビトハギの花盛りである。今年いっぱい、野村のセミナーもコロナのせいでなくなったのでここをたどるのは久しぶり。
野村の展示は「懐石のうつわ〜秋・冬のしつらえ」である。実際に野村得庵が茶事に使っていた懐石道具がずらっとならぶ。道具が少ないうちは茶碗とか、茶入とかにどうしても重点が行って、懐石道具まで手が回らないのが普通。私もごくありきたりの懐石道具しか持たないが、さすがに得庵のはすごいや。
乾山とか古染とか楽とか、向付の焼物がすごいのは予想できたが、飯器までが朱地螺鈿蒔絵のすごいのとか、湯斗が蝋色の江戸時代の塗り物とか、銀を埋め込んだ煮物椀とか、これほんとに使っていいの?と思うようなものがずらりと。
ある程度道具がそろってくると、いわゆる脇道具のいいのがほしくなる。ただし懐石道具は食器であるので台所での使用に耐えなければならず、コスパを考えると良い物は手に入れにくいのだ。こんなのがなにげに使える身分はうらやましいのう。
地階の展示が得庵所持のバカラのギヤマン懐石具のオンパレード、これだけたくさんの種類の春海バカラ(春海商店三代目主人がバカラ社に図面を送りオーダーしたもの)が見られる機会はそうそうないと思う。四ッ椀までバカラだって!
本来なら夏に展示する予定だったらしく(コロナで延期)室礼としては祗園祭であったが、とうとう秋になっちゃったなあ。
はしごして野村からほど近い泉屋博古館、私ここにこんなに人がいるの見たことない!とビックリするくらい人気なのが「瑞獣伝来〜空想動物でめぐる東アジア三千年の旅〜」展である。
ここで瑞獣とされるのが龍、虎(古来日本人にとって見る機会がなく虎は空想上の生き物であった)、鳳凰である。
まずは泉屋のシンボルでもある青銅の虎卣(こゆう)、殷時代のもの。(この虎卣は3Dプリンターでつくった型で和三盆の打ち菓子にもなった)まったく、殷とか、西周とか中国の古代史には疎いので紀元前何年ごろなのか調べなおしたよ。虎が人を文字通り食ってるのだが、その体の側面には龍やら饕餮(とうてつ)という中国神話の怪物(のちに魔除)が刻まれているので、まさしく瑞獣の塊、といえるな。
龍では南宋の陳容作と言われる「五龍図巻」がすごかった。大きなものではないのだが、深山幽谷に潜む五匹の龍の目つきのわるさといったら、相当ヤバイやつや、って感じで迫力ある。
建仁寺の襖絵の墨龍は海北友松作、若い頃の経歴がはっきりしない人物で、この友松を主人公にした葉室麟さんの「墨龍賦」を最近読んで、その表紙の龍の絵がまさにこれだったので、感激。
虎をみたことがなかった江戸時代の絵師たち、円山応挙の「虎図」がまるで耳を伏せてシャ〜っといっている猫そのものなのにニヤリ。かわいいわ。応挙にしても想像の動物を描くのはむつかしかったらしい。
三日月のような細い目をした下心ありそうな感じの独特の鳳凰は若冲の彩色画?と思ったらその元になった明の林良の鳳凰石竹図であった。相国寺所持なので、なるほどという感じ。
あまり期待せずに行ったのだが、予想をうらぎって、ほんとよかった。人気があるのも頷ける。10月18日まで、急げ!
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● COMMENT ●
昔むかし
N様
ほんとうにお久しぶりです。(今でも茶事日にち間違え事件は懐かしい思い出話であちこちでくりかえし話題にしています)お元気そうでなによりです。
泉屋博古館はメインの青銅コレクションがあまり得意ではなくスルーしているのですが、学芸員さんは青銅器のプロ、その琴線に触れる質問をなさったのでしょう。コイツ、興味あるな!と見込まれて早速講義を、、、ああ、でも2時間は長すぎる、よくおつきあいになれましたね〜。
泉屋博古館はメインの青銅コレクションがあまり得意ではなくスルーしているのですが、学芸員さんは青銅器のプロ、その琴線に触れる質問をなさったのでしょう。コイツ、興味あるな!と見込まれて早速講義を、、、ああ、でも2時間は長すぎる、よくおつきあいになれましたね〜。
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ますますお元気でお過ごしのご様子、大変羨ましく、いつも楽しくブログを拝読しています。
泉屋博古に昔むかしいったとき説明してくださる係りの人に2、3質問したところ2時間ほど説明をお聞きすることになってしまいました。
そんなことを思い出しました。