秋の花背〜石井まり子さんと - 2020.10.25 Sun
ブログ友として、また主催される料理情報図書室会員として、のお付き合いはもう10年以上もなるのに、初めてお目にかかったのがつい先月であるとはとても思えないのである。今月2回目にお会いしたときに「もう何年も知っている人のような気がして、、」と言っていただけたときはとてもうれしかった。「京都が好き」という本を書かれた石井まり子さんである。

その中でも書かれているが、洛北・花背(一応京都市左京区)は彼女にとって特別な場所なのである。秋の花背をみんなで楽しみたい、とプランナーとしての腕も確かな彼女が計画を練って、旧知のご友人方と上洛なさるのに、声をかけていただいた。
関東各地から、南は沖縄まで、まり子さんが京都でカフェ(Cafe Rive Droite)をされていたころのスタッフさん、神楽坂にいらしたころのご近所さん、みなさん長いお付き合いの方ばかり、先月初めてあったばかりの私をさそってくださるとは、とてもありがたいことである。
車で1時間半ほど、このあたりは洛中より秋が来るのが早い。
まり子さんはご体調があまりおよろしくなく、ご子息のアテンド付きの旅であるが、それを伝えてもだれも「やめときなさい。」という人はいなかったのだとお笑いになる。だれもとめる気にもならないの花背への愛だな。20年以上昔、家と畑を借りて年の半分くらいをこの土地で2年間、暮らされたのだ。
彼女のブログの「私と花背」に詳しいが、それは便利とはほど遠い生活だったそうだが、土地と畑を無償で貸して下さった大地主のFさんご一家はじめ、たくさんの土地のご縁をもらった場所である。
あ、花背と出町柳を往復する京都バスが来た。なんだかオルゴールみたいな音楽を流している。そうそう、記事にあった、バスが花背へ行くときと出町柳にいくときと曲が違うのだ。(アンニーローリーとグリーンスリーブス)これが聞こえるとバスを利用する人はいそいでバス停へ駆けつけるのだろうな。なにしろ1日に数本しかないから、逃すとたいへんなことになるから。
まり子さんのプラン1、貸しロッジでみんなですき焼きを作ってお昼ご飯にする。
東京で居酒屋をされている方がほとんど全部手際よく作ってくださった。まり子さんは横になりながら指図係り。このロッジも昔Fさんが景品の宿泊無料券をくれて無料で泊まったという思い出の場所。たくさんの人が泊まれるスペースがある。
すき焼きを作るかたわら、花背の農家のお知り合いが、畑でとれたばかりのプリップリの枝豆を届けてくださった。枝からちぎって筋をとる作業だけ私でもお手伝いできた。早速ゆでる。おいし〜い♪
同じくいただいたマコモダケ(真菰筍)、実は初めて見る。葱みたいに見えるが焼いて食べるとほんのり甘く、トウモロコシみたいな味がするのね。
さて、すき焼き完成!
みんなで、タクシーの運転手さんもお仲間に(まわりにランチ食べられる店なんかないものね(^_^;)していただく。おいしいわ〜。最後に投入したうどんもおいしくて食べ過ぎ。まり子さんに申し訳ないくらい食べてしまった。
さらに、今月誕生日を迎えるのが、まり子さんだけでなく、私も、そして他に2名もいらっしゃった。そこでバースデーケーキならぬロールケーキでお祝いである。
会費集めの方法もまり子さんのやり方で。最低と最高の金額だけを決めて、その間の自由な額のお金を握りこみ、紙袋の中に他の人に見えないようにいれてぱっと離すだけ。だれがどれだけだしたか、なんて野暮なことは言わない。お茶目だ。
食後はしばらく、みんなそれぞれ好きなように過ごす。
私は秋の花背を満喫しようとロッジの近くを散歩した。
ススキの尾花にいた小さい蟷螂が小さいくせにいっちょまえに威嚇してくるのがかわいい。
このススキの道に導かれるように歩いて行くと、、
河原にでた。
先月上洛された時にまり子さんが河原遊びをされたのは、このあたりだったろうか。
河原にミントが繁殖しているのを発見。へ〜、こんなところに。
風が吹くと河原の向こう側の草の綿毛が雪のようにふわ〜っと舞い上がって美しく、しばしみとれた。花背はほんま、ええところや。(途中の花背峠がえげつない道でなければもっとひんぱんに来られるのに)
東京からいきなり、いっときにせよ花背に住むことになった、ここの土地でいろんな人と交流された、私とも会ってくださった、人生における縁は不思議で、いろいろ思うことも多い。
そのご縁のひとつ、花背で佐野藤右衛門さんのとこの土、桜の木の釉薬を使って器を焼いている蕗窯の小松華巧さんのところへもお邪魔する。奥様お手製のとびきりおいしい栗きんとんとお薄を頂戴する。食欲がいまいちだったまり子さんが、このきんとんだけはぺろっとお召し上がりになるほどに。ここのお庭で冬はかまくら遊びをされたとか。
こちらは説明する必要もないくらい有名な美山荘、ここは花背の大家さんと同じご町内になるそうな。
お宿ではあるが、いつかここにご飯だけ食べに来たいと何年も前から思っているのだが、予約がとれない。でもなぜ摘み草料理なのかわかった気がする。町中へ食材買い出しにいくのに非情に不便な場所だから、近くの山で畑で収穫したもので、いかにおいしく、ということだよね。
こちらではまり子さんおすすめの花山椒ちりめんをみんなで買った。
そしてこの旅の最後は、まり子さんが花背時代一番お世話になったFさんのお宅である。
このあたり一帯はほとんどこのお家のもの、というお宅は蔵もある立派な大地主の風格のお家であった。自分のところだけの為の橋があるくらいである。「赤い橋があるのよ。」と聞いていたが渡るとぎしぎしけっこう揺れるのである。
当時、家や畑をただで貸してくれた先代さんはすでに亡くなって、息子さんご夫婦の時代になっているが、よそからこられたお嫁さんが先代の奥様が作っていた自家製柴漬けを自分も作りたいとおっしゃるくだりも本やブログで読んでいたので、本当にその自家製柴漬けを、全員にわけてくださったのには感激であった。
そのFさんの家のすぐそばに立つこのお家が、まり子さんとご子息が2年間すごされた思い出深いお家。
Fさん一家専用の赤い橋をわたったところと、むかしまり子さんが耕していた畑のそばに山椒の木がある。この木の山椒の実、はじけた割れ山椒を見るのがここに来た目的の一つであった。昔、春には花山椒をバスが来るまで、たくさん収穫されたのだそうだ。枯れた割れ山椒がまだ残っていて、一房手にして、もうほのかになってしまった香をかいでたしかめて大事そうに手で包まれた。それだけで花背がいかにまり子さんにとって心から大切な場所なのかわかるのだ。
<付記>
記事を書き終えて、予約投稿にしている間に、まり子さんが旅立たれたという知らせが届きました。花背から1週間もたたないうちに。そんな状態だったのに、みんなこの旅をとめなかった、そこにまり子さんのお人柄を読み取るのです。今ごろは虹の橋のたもとで待っていた京都猫のみやこ、神楽坂猫の文子、ぐり絵に「おかーちゃん、待ってたよ〜」とじゃれつかれているに違いありません。
まり子さん、さようなら、ありがとう。
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