芳心会・木村宗慎さんのコロナ下初点2021 - 2021.01.23 Sat
コロナにて初釜がほぼほぼ全滅の中、木村宗慎さんの芳心会の初点、お社中だけで内々にされると聞いていたので、今年は無理だろうな〜と残念に思っていたが、有り難いことにもぐりこませていただけることになり感謝感謝である。(芳心会昨年の初釜)
ちなみにご説明の必要はないと思われるが、宗慎さんは書籍化された「一日一菓」で有名、21歳の時からお弟子さんをとっていた、というスジガネ入りの茶人さんなのである。毎年どうやって手に入れられたのだろう???(値段だけのはなしでなく、どうやって邂逅されたのか?)と思うようなすごいお道具がこれでもか、とでてくるのでとても楽しみなのだ。
場所はいつもの大徳寺総見院である。
ただし、今回は感染防止のため色々ご苦労されつつ配慮いただき、点心はなし、広間にて濃茶、薄茶をいただく初点となった。
今回のテーマは丑年→牛と言えば天神さん→天神さんといえば梅に追い松(老松)、、がちりばめられ、とても全部とらえきれないくらいであった。
待合では酒井抱一の宝船図、ただしのっているお宝がすべて抱一の落款種々である。毎年点心席に飾られる晩白柚(ばんぺいゆ・大型の柑橘)はこちらに。大神神社で新春に授与される福寿草の鉢も。
りっぱなヒカゲノカズラだが、上にちょっと乗っているのは上賀茂神社の卯杖(うづえ・初の卯の日の神事使われるがミニチュアを拝領できる)
いつも濃茶席になる広間が香煎席になっていて、お弟子さんが釜のお湯で香煎をいれてくれる。今年は桜湯であった。この席の軸は松花堂と沢庵和尚コラボの梅の木。天神さんやもんね、飛び梅を連想しつつ、床の上に蒔絵の箱に入った尉の能面。謡曲「老松」でつかわれる面だが、秀吉に天下一の称号をもらった能面師・是閑の物だとか。敷物が慶長小袖みたいで美しい。
伝説に寄れば、道真公の愛した庭木の梅は、あるじの左遷に従って一夜のうちに太宰府までたどりつき、松は摂津の板宿(神戸市須磨区)で力尽き、桜はあるじとの別れを聞いただけで、悲しくて枯れてしまったという。(そう言えば、今日の香煎は桜でしたね、とお弟子さんの後付け解説(^_^;)
炭道具に淡々斎好みの糸釜敷きを発見、これを使うのは薮ノ内だけじゃないんだ。供覧の茶杓は玄々斎「子の日の松(?)」、これには宗慎さんご出身の伊予・宇和島藩主の、子の日の曳き松の歌が添えられ、高原杓庵の箱付き。(ここらへん聞き間違いもあるやしれぬが)
楽の「むきみかん」というそのまんまのむいた蜜柑の形の香合がかわいらしかった。「この中で一番貴重なお道具です。」とお弟子さんが言われた灰器は、、、みんななんやろなんやろ?と首をかしげる。、、、宗慎さんご自身が、休雪さんとこで手づくねされた灰器であった(^_^;(テストピースだったらしいが)
こちらでいただいたお菓子は嘯月さんに細かく注文指図の上つくってもらったというきんとん(芳心会の留め菓子とでも言おうか)、「老松」のイメージで中は常磐色の餡、茶色のきんとんの上にふんわり雪のイメージの白い細いきんとん、その上に小豆が3つのっているという手の込んだものであった。
いつもは点心席になる大広間にて宗慎さんの濃茶席
軸が「天満天神 亀千代丸六歳」
亀千代丸は後の仙台藩四代伊達綱村の幼名なのだそうだ(伊達騒動の時の藩主)。どこでこんなとんでもない物に出会われるかなあ〜(゚д゚!)6歳が書いたといえば、なるほどとも思い、禅僧が書いた、といえばそうも思える不思議な軸である。
毎年宗慎さんの花をとても楽しみにしている。今年はなんと1mほどの高い鶴首を床に置き、枝1本だけの結び柳に椿。枝1本の結び柳の存在感、これいいなあ。枝が多ければいいってものではないのだと、目からウロコ。
(留袖を本問着仕立てにした着物)
蒔絵の棚がわりの箪笥は、加賀前田家殿様の野遊び用とか。前田家の紋である剣梅鉢(加賀梅鉢・藩祖の利家は道真公の血を引いていると公言していたらしい)、秀吉から拝領した菊紋などがちりばめられ、中に入っているのが仁清の瓢水指。これの薄さときたら!さすが轆轤の名手。
古天明の霰釜に炉縁が桃山から江戸初期ごろの菊の高蒔絵。こんなんよう実際火のそばで使うな〜と感心していたら、すでに塗にヒビがはいっているので、いまさらヒビがひとつふたつ増えたところで価値は変わらないとおっしゃる。太っ腹や。
真塗り棗は仙叟(前田家つながり)在判。
書院床に飾ってあった三玄院天目(仁清)は、よく見るそれと違ってかなり複雑な釉薬の色で見所有り。おそるおそる手にしてひっくりかえすと裏に「三玄」の文字と仁清の印。蓋置は室町の甲冑師金盛徳元のツクバネ。
各服点てで濃茶をねっていただくので、これまたたくさんの御茶碗がでてきてうれしい。
本歌の御本立鶴、ついで木米が写した立鶴、青磁人形手、私が飲んだのは惺入の朱釉薬、ほんまに朱色の楽茶碗、珍しい。一番気になったのが塩笥の渋い色の茶碗。てっきり高麗かとおもったら仁清の印が。(後水尾天皇の切り型?)ほんま仁清は名手やな。
(つるのこ、福徳せんべいの中の金華糖、末富さんの丑絵馬)
薄茶席はお弟子さんが。
恒例の干支の嵯峨面、今年は黒い丑である。軸は一燈の渡唐天神。なんでも一番最初に宗慎さんがお求めになった軸なのだとか(子供の時?)。香合は松浦鎮信旧蔵の平戸焼・台牛。
お菓子が恒例の、宗慎さんご郷里の松山「つるの子」であるが、コロナ下ゆえにそれぞれ別の菓子器に一つずつ。正客には乾山であったが、目がぎらついたのは桃山の葉っぱ型織部と志野の四方鉢!あとで手に取りなでまわしてしまったわ。本来は向付になるべき器やね。私には、永楽の八寸サイズの四方皿に鶴の子一つがぽつん、、という贅沢な器になった。
御茶碗はかわいらしい牛にのった天神さんと梅の絵。12年前の丑年に使われた御茶碗だそうだ。
(お土産にいただいた、つるのこ。昨年もいただき恐縮、でも楽しみにしている)
今年は点心がないので、干菓子をたくさんご用意しました、とのことで、末富さんの麩の焼きとじょうよ、さらに金沢の福徳せんべいがでてきた。この打ち出の小槌型のせんべい、中に金華糖か小さな人形が入っていて、人形がでたら当たり(ガレットデロワみたい)、記念品がもらえるとあって、せえの、で皆で同時に煎餅を割る。残念、はずれの金華糖(^_^;
ちなみに展覧の茶杓の銘が「寒梅」、平棗が「和歌浦」、和歌浦天満宮のつながりで。
一応天神さん、老松つながりを追いかけたつもりだが、聞き落とし、見落としもあるかもしれない、それほどたくさん暗号がちりばめられていて楽しかった♪
しかも最後に、東京の観世流能楽師・川口晃平さんのお謡付き!
もちろんお題は「老松」!
齢をさずくる此の君の 行く末守れと我が神託の 告げを知らする松風も
梅も久しき春こそ めでたけれ
(仕舞を習う人が最初あたりに習うやつ)

(毎年テイストが違う。右下の真塗りが今年の)
今年は無理かと思ったのに、ほんとうにありがたいことであった。こんな時こそいつも通り例年通り変わりませず、のありがたみがわかる。引き出物の天雲の塗の皿(お弟子さんでもある塗師・西村圭功さんの工房の)四枚目も無事そろった(*^_^*)
また来年の日程のご案内もいただいてほくほくして帰りました。
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