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2023-09

初夏の夜咄〜「源氏物語〜須磨・明石」 - 2021.05.16 Sun

海が近いので、夜風が強く蝋燭の火がもたないので夜咄はしないと言っていた師匠が、珍しく夜咄茶事をする!とおっしゃるのではるばる海を越えて(初めて自分でドライブ、なにせ帰りの時間にバスがない)やってきた。


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夕刻待合につどう。

お軸が、なにやらみやびな貴公子達が大勢、満月に寄せて管絃の宴を開いている大和絵。
(中秋の名月の時に内裏・清涼殿では帝主催の管絃の宴がおこなわれるのを、須磨の侘び暮らしの源氏は恋しく思い出している)

こちらでこの前、名前を覚えたところの米禽(古美術商でありながら作陶も)の染付の汲み出しでお白湯をいただき、かかっていたカーテンを師匠が開け放つと、、、


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まあ!!
緑の美しさにおもわず歓声があがる。



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腰掛け待合いの煙草盆に客の人数分の住吉大社のお守りが。
(須磨で嵐に見舞われた源氏はひたすら住吉の神に無事を祈る。夢に現れた父桐壺院に住吉の神の導くままに須磨を去れ、と言われる。)

おっしゃるとおり、ほど近い海からの風が強く、緑の葉をゆらしてわさわさ音がするのもご馳走である。

本席では清巌宗渭(宗旦の参禅の師、「懈怠の比丘云々」のあの清厳ですよ)の「自得」。
禅宗の教えなのだろうが、私には、自業自得で須磨に流された源氏、、と読めた(^_^;(多分ちがう、、)
床にすごい碁笥底の真塗白粉解を香合に。道安好み、蓋裏の花押が如心斎で三代宗哲だそうだ。
事前に「名香<明石>を聞く」というお達しがあった。炭手前の後、香をたいてもらって香りを聞く。沈香のなかの羅国だそうだ。(むしろ伽羅より少ないらしい)
これもいにしえの殿上人の遊びか、香を衣にたきしめる源氏の時代へタイムスリップ。
ちなみに聞香炉は蝶の絵の仁清でございました。

風炉では前茶の時、釜の中はまだほとんど水で、これで茶を点てていただくとさわやかでほっとした。

懐石は、お手製の胡麻ピーナッツ豆腐(めちゃ美味しいが、めちゃ手がかかってそう、、、)はじめ富山の万惣さん秘伝のいつものふわっふわのしんじょうの煮物椀。(あれは大和芋かなんかはいっているのでわ?といろいろ推測してみる)焼物の魚は塩麹につけたもの、これはちょっとまねしてみよう。幽庵ばかりはもう飽きた。懐石の道具も師匠のところのは新旧凝っているからなあ。千筋でお櫃を長くしたような形の小吸物椀にいたく惹かれたが、畠山即応の懐石道具なんかをつくっていた人のものらしい。


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お菓子が「落とし文」ならぬ「恋文」(源氏の必需品)
葉っぱの上に寒天の露までついて、まさか手作りじゃないよね、ないよね、、、ええ〜!これもお手製ですか?!どこまでシロウト離れしていくのだろう。


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中立のころにはあたりはすっかり暗くなって、人工の灯りの全くみえないこのあたり。風だけがざわざわ木の葉を鳴らし、暗い中では影ばかり揺れて恐いくらいだ。それでも行灯のともしびが救いで、みつめているとほっとする。(灯りにひきよせられた毛虫が行灯のまわりをぐるぐる。火中におっこちないかみんな心配して眺めているところ。→帰る頃には内側まで入り込んでいたが無事であった。ほっ)

手燭は風で消えそうになるのを必死で手で囲ってもたせた。


後座
暗い座敷に燈火をあちこち。小間と違って広間の夜はより暗く感じる(光りが分散するからね)思えば師匠のお宅の夜は初めてだ。点前座が障子の方になるので、昼間はご亭主が逆光で影になるが、夜は障子に蝋燭が作る影が映ってこれもまた絵になる。

濃茶が練られる間も海風は、建具をがたがた音をたててゆらし、蝋燭のあかりはゆらぎ、闇が侵食する広間はすざましいまでの情景。嵐にみまわれた須磨の源氏の心細さはかくばかりか。

床は土岐二三(最近あちこちで。ブームなのか?ときじさん)の竹花入れに、何回も聞き直した名前の楚々とした白い小花「オトコヨウゾメ」。奥様が山で採取してきてくださったものらしい。初めて見る花だ。

棚がやっぱり、これしかないでしょう、の御幸棚。御所車の車輪と御簾のイメージで、やっぱり車争い(「葵」)の連想。ご当地珉平焼の水指が呉須写しで、こんな珉平もあるのね。


茶入は瀬戸、銘を「笛声」。(笛は源氏物語では柏木のシンボル)。
仕覆が鴛鴦なので、夫婦相和と思われがちだが、実はおしどりのオスはメスをとっかえひっかえするらしく、そこが源氏っぽい(^_^;とか。
茶杓が珍しく舟の櫂の形をしていて、失意の須磨からこぎ出し一陽来復の明石へ、、、のイメージか。作者が聞いてびっくり思いがけない方でこれはナイショにしておきましょう。(幕末の大物大名とだけ)

干菓子に新潟の「雲がくれ」
マシュマロの中に満月みたいな黄味餡がはいっていて、お月様が雲に隠れている様子をあらわすが、源氏物語では源氏の死を暗示する巻「雲隠」である。(よく見つけたな〜、こんなネーミングのお菓子)

蓋置までが桐と雲、すなわち源氏物語最初の巻「桐壺」と源氏最後の巻「雲隠」なんですもの。徹頭徹尾、お見事な源氏物語の御趣向、さすがでした。(とりおとし、聞き落としもあるかもですが)



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席をあとにするころ、不思議とあれだけ激しかった風がぴたりとやんだ。凪にはいったのだろう。見上げると京都の町中では、ぼんやりとしか見えない北斗七星がくっきり中天に見えて、これも印象に残り感動的であった。

(それから帰路のドライブは暗い暗い道、明石海峡大橋から神戸の町灯りが見えたときはほっとしました〜)



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● COMMENT ●

しぇるさん、こんにちは

記事拝見して

しぇるさんの綴られる物語の中に

つかの間、私も同席させて頂いた気分

御馳走さまでした^^

高兄様

新約旧約聖書が西洋の芸術のバックボーンになっているように、日本で芸術に携わるとき、源氏や伊勢物語、古くは万葉集、古今集はさけてとおれないと思うのね。近世以降は謡曲も然り。
学校教育から古典をなくすという動きをしているのはどこのどいつなのか知りたいわ(怒)


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