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2017-11

獨楽茶会・岡本浩一先生の茶席〜八王子・美ささ苑 - 2013.09.06 Fri

関西が涼しかった先日、夏日がもどったかのような八王子へ、今期初の単衣で大汗をかきながら行って参りました。

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利休と不昧公ゆかりの茶室(復元)・獨楽庵を有する料亭、美ささ苑。ここでは楽の会という会員制の茶会があって、毎回各界の高名な方が流派にこだわらずに釜をかけておられるのだが、今回、雑誌「淡交」に「茶道心講」を連載されている岡本浩一先生(東洋英和大学教授:社会心理学)が席主をつとめられる。


岡本先生の著書「茶道を深める」にであったのは4年前。読んだ時、この本は私の茶の湯の道の座右の書になる、と思った。(もちろん今でも久松真一先生の本は別格だが、いかんせん、難解すぎる、、、、)

そうだそうだ、こういう感じを私も言葉にしたかったのだ、と思う箇所がいくつもあり、茶の湯の奥深さは日常生活と離れて独立した物ではないと納得させられつつ何度も読み返した。だから、仕事と茶道とのおりあいについて悩んでいた自分を勇気づけて、背中をおしてくれる本でもあったのだ。

先生のお点前を拝見できる機会となれば、これは逃すわけにはいかないではないか。


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美ささ苑内の茶席・獨楽庵は三畳台目桝床逆勝手席、利休ゆかりの二畳席、三畳台目席(船越伊予好み)を有し、終戦後はやくから東西の数寄者たちが次々と釜をかけたそうで、小林逸翁、松永耳庵、五藤慶太、団伊能、田山方南、、などビッグネームがずらりと。それにちなんで今回は数寄者を偲ぶ道具組にされたとか。


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苑内の庭はとてもすばらしくて、八王子の町中にいるとはとても思えない。

まずは逆勝手三畳台目の茶室で岡本先生考案、築地で材料調達、のダイナミックなお菓子をいただく。大きな葛の中にひや〜っと冷たいマスカット!空調のない小間での暑さがす〜っと引いていく。
ちなみに鵬雲斎大宗匠をお招きした茶事でだされた菓子の再現だそうで、ありがたく時空をこえてご相伴させていただく。(それにしてもあのマスカットのつめたさは、ただものではなく、冷凍庫にいれても凍らない葛の分量配分の研究成果によるものらしい。)

船越の三畳台目にて、岡本先生の濃茶点前。
狭い小間ゆえ、ほんとうに顔つき合わせる感じで、お手元もしっかり拝見できた。どこか鵬雲斎大宗匠を思わせるようなお点前と感じた。最初に「お服加減は?」と聞かれるまでの静けさ〜茶室に聞こえるのは釜の音、亭主の立てる音のみ〜それがとても好きなのだが、その静けさの中で岡本先生の存在感が大きい。

会話がはじまると、そこは岡本節炸裂。坐忘斎家元から拝領した茶杓の銘が「無相」。本来形のないこと、悟りの境地を示す言葉だが「あいつ、何者か正体がよくわからない、というのでこんな銘の茶杓をくれたのかなあ。」なんて、、、時々ほんとうにあの本を書いた方かしら?(^_^;と思うこともあるが、そういうところも含めて好きですね〜。

品川東海寺(澤庵さんゆかりの寺。ここの座禅会のコーディネイトを先生はされている)の代々の小僧さん達が磨いてきた、東海寺蓮台古木の木地の香合が、長年の磨きに拭き漆みたいな光沢をはなっているのも見事であれば、先生がキヨブタ(清水の舞台から、、、云々)で手に入れられた古瀬戸の水指(「茶道に憧れる」の表紙を飾ったアレ)も迫力があった。添うてきた塗蓋の色がほんのり小豆色でまた美しく、市井の数寄者、田山方南が最晩年の闘病のさなか手づくねた楽茶碗の釉薬の色が重なる。
そして、本日の軸「人々悉道器(ひとびとみな道の器)」。それぞれの胸にそれぞれの解釈があったことと思う。


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続く広間での薄茶席の亭主は、岡本先生と長い師弟関係にあるお若い男性。国際的なお仕事をされているので世界各国に出向くことも多く、そのたびに集めてこられた世界各地の、もともと茶道具ではなかった道具を、見事につかいこなしておられる。美しくきりっと若々しいお点前をご披露くださった。日ごろの先生の御薫陶のたまものか。


この席では、もう一人のこの場にいない主人公の存在を感じる。先生の著書「茶道に憧れる」のコラムにも書かれている宗入「亀毛」写しのこの席の主茶碗と、この席の軸をめぐるストーリー。詳しく書くことは避けるが(ご本読んでね^_^;)あとから思い返すほど、しみじみといいなあ、と思わせる茶道具の作り手と使い手の心の深いところでの交流。

古来茶道具は、その物理的な美しさの他にそれが背負った歴史や物語がその価値をさらに高めてきた。ここでも、ひとつの茶碗にこめられた物語に思いを馳せつつ、その茶碗でお茶をいただく。何倍も何倍もふくらむ感動。なんと贅沢な楽しみ方なんだろう。茶の湯ってほんとうに深い。


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頭と目と手を使って緊張感を伴う楽しみのあとは、完全にリラックスして美ささ苑のおいしい懐石で口を楽しませる。おそらく文字通り一期一会の相席の方々と歓談しつつ。みなさま偉い先生方ばかりでこの身は小さくしておく。(^◇^;)



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● COMMENT ●

吉祥寺に住んでいても国立より向こうは遠い世界だったのに、関西から足を運ばずにはいられないお茶の世界の魅力(魔力?)に辿り着く前に、スタートラインで失格したのが今思えば残念でした。
陶芸もお茶を知っていれば全然違ってくると思う。
リタイアして時間と心にゆとりが出来たら、立礼になりますがお稽古に行きたいと思います。

東奔西走ですね

尊敬する人のお手前を目の前で拝見できるというのはすごいことですね。
先日、川瀬敏郎さんが花を挿されるのを1時間ほど知人と二人のみで拝見しましたときに、
花を挿すことにより身近にある雑器が瞬時に名品に変幻するのを体験しました。
しぇる様もそのような体験をされたことと拝察申し上げます。

貴重なよいひとときをお過ごしになりましたね。
文章から伝わってきます。。

夢風庵様

茶道にどっぷりはまる必要はないけれど、茶道具をつくったり、茶室をつくったりする人は、ちょっとでも茶道を習っててほしいなと思う。芸術品はべつにいいのよ。でも茶道具は違う。茶席でつかったら、他の道具とあわせたら、、、と計算するセンスは必要だと思う。立礼おおいにけっこう。是非お稽古再開して下さいませ。

N様

(さきほどはありがとうございました!うれしいです)

やっとお点前を拝見できました。お点前もさることながら、茶席には道具組に人間性や思考性がでるというか、それに惹かれました。物語のある茶席って最高!

一日一花の川瀬さんですね。ほぼ1対1でご覧になられたとは、そのシチュエーションこそすごい。完成品でなく変化の一瞬が見られる、、それもまた贅沢な楽しみでしょうか。

先日似たような体験を。下鴨の川口美術で新羅土器展をやっているのですが、そのままではちょっと汚い土くれ。「花遊び」と称するお客さんによる花生けで、これも見事に美しく変身するのを見ました。

Unknown様

ありがとうございます。
貴重な経験をさせていただきました。こんな茶縁は人生後半の楽しみでもあります。
記事を書くのもちょっと推敲をかさね、力はいってました^_^;

この茶会は気になっておりました。
行ってこられたのですね。お茶の縁ってすごいです。
こうやって自分が行きたいと思う茶会は行けるだけいかれるとお茶も深まりますね。

色々なことがあり お茶をやっていることの意味?を改めて思います。

ひいらぎ様

1年に数回、お茶が本業の方やそうでない数寄者の方の茶会をやっておられるようです。八王子は遠くて通うわけにはいきませんが、今回岡本先生のご縁でなんとか行ってきました。また裏話もあり、その話はいずれまた(^_^;)b

濃茶席での、「お服加減は」までの静謐な時間はどんなにか充実していたことでしょう。またその後は融通無碍に話題が飛び交う岡本先生のお話、私もお聞きしたかったし、武道を極めたお点前も拝見したかったです。ああ、残念。
あの日は東京の海側から、今頃席入りかなあと八王子の方を見やっていました。

そらいろつばめ様

はい、東京の方から視線を感じてました、、、、^_^;
今回はプライオリティを考えると致し方なかったと思います。
またの機会があることを願います。私ももう一度余裕をもって拝見したいし。
ピンチヒッターには、すごく論理派の茶友とご一緒していただきました。(^_^)v


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