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2023-10

5年ぶりの鱒鰹審判茶事〜其中庵 - 2021.06.18 Fri

大正15年、名古屋を代表する若き数寄者五人衆の敬和会で、 かたや木曽川の鱒を天下に匹敵するものなし、とする山内茂樹、かたや遠州灘を越した旬の鰹にまさるものなし、とする粕谷徹三。

ならばその優劣をきそってみようではないか、という話になり、審判をまかされたのがかの益田鈍翁であった。鈍翁は、、、   

 < 鱒鰹 まさりおとりを知りたくば  馳走になった 後に語らむ  >

と詠んで、鱒鰹審判茶事をひらかせることにしたのである。

この逸話をしったのは5年前のこと、其中庵さんが楽々荘時代に鱒鰹審判茶事へのオマージュ茶事をひらかれた時であった。もう5年もたつのか、早いなあ。



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今年久々に鱒鰹審判茶事を開くことにされた其中庵さん、場所も変わり、5年の月日、どんな違いを見せつつ展開されるのか、楽しみにでかけた。

待合の掛け物はもちろんこの茶事の発端となった鈍翁の「鱒鰹、、、」の歌である。


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本席には竜田切(源家長・後鳥羽上皇に仕えた 三十六歌仙の一)、和漢朗詠集「躑躅」である。これはずっと昔、まだ其中庵さんとお知り合いになったばかりの頃から、何度も拝見している懐かしい歌である。

 
IMG_9566.jpeg


珍しく諸飾りで、唐物の末広籠にいれた大山蓮華、紫陽花、ヒュウガミズキの葉

懐石ご担当はもちろん富山の万惣さんである。
向付が讃州窯で初代と二代道八が焼いたという織部風魚(カワハギっぽくてかわいい)の形の焼きもの。公平を期すためこれには鱒鰹ではなく、鱧とキュウリ。
汁に三ツ葉のすいとん、なんだろう、懐かしいような美味しさ(すいとん世代ではないけど。最近の若い人はしらんやろうなあ、すいとんなんて)

いよいよ鮭鱒決戦、名古屋での料理に倣って鱒の蕗の葉(本歌は朴の葉)包み焼きと鰹のたたき。
たたきはおかわりまでご用意くださってたらふくいただく。初戦、私的には鱒に軍配。
第二戦は八寸、鱒の燻製と鰹のアラだきである。八寸のご馳走は本来客がするのだが、用意もなく其中庵さんの「水無月祓」の一節を頂戴する。



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今回お詰めに日ごろお世話になっているNにいさんが入られた。
其中庵さんとは大学も同窓、聞けばほんとうに長いおつきあいなのだそうだ。お隣の美女にすすめられるまま、痛飲されるNにいさん。そして炸裂するダジャレ、今回すっかりもっていかれた感があるわ(^_^;

炭手前では、5年前と同じく、鎌倉彫りの軍配香合。さてどちらに軍配があがったか?
私はやっぱり鱒にあげたいのだが、鈍翁はうまいこと

 < 一度では 勝負わからず 鱒鰹         
      次の年まで あづかりとせむ  >

と引き分けとして、その上次回も催促するというスーパー審判ぶりであったという。



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懐石の器は、勝負に黒白を付ける、という意味で黒白掻き分けの皿、酒器も白磁に黒高麗、お菓子も白黒きんとん(老松製)と徹底的に勝負にこだわる。面白い御趣向だが、これもお蔵が深くないとできないお遊び。



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後座の床には大綱和尚の「○(円相)」、この勝負引き分けと丸く収めた、の意。

濃茶の茶碗は前回と同じく鈍翁の焼物を作った鈍阿の「いわお」
覚々斎原叟てづくねの黒楽「鈍太郎」に憧れて鈍翁が写させた茶碗で、鈍翁が審判をしたこの茶事にふさわしいものであった。これを其中庵方式(練った後、漆の匙で磁州窯鉄絵小杯に分け分け)にていただく。

茶入が其中庵さんの庵銘にちなみ「一楽」(「楽在其中」)。これも高取。(最近高取の茶入をよく目にする。ブームなのか?)
茶杓もおなじみ「楽々百万遍」。稽古用の茶杓を、其中庵さんが白衣観音の真言を唱えながら100万回磨いたという物でなかなか味がでてきている。歴史学者で茶杓を自らも作られる西山松之助先生に銘と書付を拝領されたという茶杓なのだ。(西山先生が100万回磨いたという「百万遍」という茶杓にあやかったものかな)



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薄茶はたくさんの茶碗をだしていただいた。白黒かきわけの古高取(遠州以前とか)、井戸茶碗かと思うような瀬戸唐津、斗々屋、萩の粉引、こちらでは珍しい紫陽花の色絵など。

薄器が「太夫棗」
薬器のような、薄い蓋の棗で、鈍翁が沢庵遺愛の品川東海寺老松をもって、かの喜三郎にいくつか作らせ配ったというものの一つ。秦始皇帝が驟雨にみまわれたとき、松の下で雨宿りをしたので松の木に「太夫」の位を与えた、という故事にまつわる。(中国では松のことを太夫ともよぶそうだ。竹は此君だね)

干菓子器が清朝七宝の盤、これ蓋つけて水指にするにはちょっと深さが足りないか。
干菓子が生のジューシーなマスカットを求肥でくるんだ「ひとつぶのマスカット」というお菓子。

マスカット→ます勝っとう(博多弁)→鱒勝ち

というダジャレ遊びなのでありました。でもやっぱり私も鱒に軍配あげたい。



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楽しい二刻、茶事の道具の取り合わせについて勉強もさせてもらいました。ありがとうございます。

なかなか懐石までに茶事のテーマをからめるのはできることではなく、一人亭主だとよけいハードル高いわ〜。



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