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2023-11

蒔絵の時代〜MIHO MUSEUM - 2021.08.03 Tue

MIHO museumへ行く楽しみは、展示を見るだけでなく信楽の山の中の自然、I.M.Pai氏の建物、を味わう楽しみもある。


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野鳥の声と緑の山々に迎えられて、今回の展示は「蒔絵の時代」


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蒔絵の器は茶器に限らず、私も大好きである。陶磁器にくらべると寿命が短いので残っている物も少ないと思われるが、それでも残った物は、きっと大切に大切に使われてきたんだなあと思う。



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展示は高台寺蒔絵から始まる。
高台寺のねねさんの廟、御霊屋厨子を飾る蒔絵からの命名だが、技術的にはまだシンプル。
当時京都の蒔絵師を率いて、親玉的存在だった幸阿弥家が担ったといわれる。6代長清は秀吉から「天下一」の称号を得ている。


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蒔絵が爆発的に技術的意匠的発展を遂げたのが江戸時代で、この時代の作品が一番ゴージャスで好きだわ。特に大名家の調度、諸道具の蒔絵はもうため息しか出ないすばらしさ。



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桃山時代以降も将軍家の蒔絵師として活躍した幸阿弥家の十代長重がすごい。
展示されているのは岡山藩主池田光政の娘、輝姫が摂関家の一条家に嫁ぐ際の婚礼道具一式「綾杉地獅子牡丹蒔絵」である。地紋は綾杉がびっしりと、ありとあらゆる蒔絵の高度技法を使っており、そこに踊る獅子に牡丹、散らしてある三ツ葉葵の御紋は、輝姫が一時家光の養女となっていたことによるという。まあすばらしい!

そしてこの長重といえばあの国宝「初音の調度」(家光の娘千代姫の婚礼道具)を作った人だったのね!


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また印象に残ったのが「紫宸殿蒔絵硯箱」
実物は硯箱なので小さくて見えにくいのだが拡大写真を見ておおお〜っ!となった。
蓋表には昼の左近の桜、御簾からは女房達の出衣(いだしぎぬ)が並ぶ、どんな女人がおられるのか想像を掻き立てられる。
蓋裏は打って変わって夜の右近の橘、ひそやかにたたずむのは一人の出衣のみ。
解説には「源氏物語」の花宴の巻をあらわしているとも。
これもため息、、、



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意匠的にはびっしり細かく書かれた波の紋様に惹かれる。
また「松葛蒔絵硯箱」のデザインが、ポップに簡略化された松に葛がからまり、そのよこの(葛にからまれて枯れたと思われる)松の切り株がなにやら意味ありげ。

硯箱は現代生活ではほとんど使うことがないが、茶事では書院に飾ったり芳名録に署名するときにあるとおしゃれなんで、いつかいいものを手に入れたいと思いつついまだに、、、(^_^;


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今回の展示でMIHOらしい視点が「嵯峨棗」をはじめとする町衆文化を担った蒔絵の展示かと思う。

大名家の蒔絵に比べると素朴でシンプル、しかしそれゆえに嵯峨棗などは茶人に愛された。(嵯峨あたりで土産物として売られていた町棗の一つとされているが、仙叟在判の柳枝垂桜中次などもある。)
当時財力を付けてきた町衆の間に広がった茶道や香道、謡曲などに使われる道具を、これも実力をたくわえた町方の塗師、蒔絵師が担ったもの。


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最後にMIHOがコレクションしている関係からだと思われるが、江戸後期に活躍した永田友治の作品。一昨年ここで開かれた永田友治展で、初めて名前を知った蒔絵師である。意匠は琳派そのもの、シンブルで、色が多彩(いろんな金属系の材料がつかわれているらしい)、現代の作品といわれても納得できる感じである。(参考作品として光悦の作品が並んでいるところがさすがMIHOである。)



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蒔絵の道具は今でも骨董市などで比較的簡単に手に入れることが出来る(大名出来みたいなのは無理でも)。お値段も古陶磁に比べるとお手頃なのが多い。好きだからちまちま集めているので、今回の蒔絵の洪水にはもう幸福感しかないわ。

胸いっぱいでもお腹はすくので、MIHOのレストランでオーガニック夏野菜の冷製パスタ、いただく。美味しかった。


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図録も買って追想しながら、また感動を反芻している。


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