吉田家無名舎〜最後の吉田塾 - 2021.12.12 Sun
洛中にかろうじて残る伝統的な表家造りの京町家、最近は絶滅危惧種になりつつある。大きなお屋敷が一晩にして更地になってしまうさまを何度も見てきた。

北観音山の鉾町のランドマーク的存在が吉田家住宅だ。ながらく山鉾連合会の会長をつとめられ、前祭後祭の復活の推進力となった吉田孝次郎先生はいまなおかくしゃくと、山鉾巡行全行程を裃つけて歩かれる。
この家はNPO法人の管理もはいり、いずれ京都市に寄贈されるため、町家は残ることに一安心だが、京町家の伝統的な暮らしや文化は継承されていくのだろうか。
(ここで餅つきをした)
それを残しておこう伝えて行こう、と9年前から孝次郎先生のお話を聞く会、吉田塾は始まった。数年前から参加させていただき、いろんなことを教えていただいた。
年末には餅つき、納豆餅を初めてしったのもここだし、祇園祭の山鉾巡行をここの二階から眺め、北観音山の曳き初めもさせてもらった。
宵山の宵に念願の奥座敷でご飯をいただくこともできた。↓ (なつかし〜〜)
一番印象に残るのが、2年前ここでひらかせてもらった新旧乙女茶会である。孝次郎先生もお道具を出してくださったり、炉があくのは10年ぶりだとおっしゃったり、楽しかった〜。
(薄茶席の様子 ↓ )
その孝次郎先生もまだまだお元気ではあるが、少々お疲れやすくなられたこととか、諸般の事情で吉田塾、今回が最終回となった。来年以降はまた新たなこころみをNPOの方々が考えておられるようだが、かなり残念である。後半はコロナであまり参加できなかったし、講座の後の表の間での懇親会が楽しかったのに、それもできなくなっている。
今回は吉田家の建物と先生の歴史を漫談的にお話くださった。
昭和50年ころまで、この大きな表家が看板建築になって下宿屋になっていたとは知らなかった。それを少しずつ元の姿に戻していかれたのが孝次郎先生である。5人兄弟の末っ子で次男だったのに、最終的に最後まで家を守られたのが先生だったのだ。
東京の美術大学で絵画を学び、その審美眼でもって天神市や弘法市で掘り出し物を見つけられる話は何度聞いてもおもしろい。(きっとあちこちの市で先生のお姿は今後も見られると思う。)中でもヨーロッパになくて日本に3枚だけ残されている(北観音山、函谷鉾所有)八つ星メダリオン絨毯の4枚目を発見された話は忘れられない。
(吉田塾の主な開催場所であり懇親会場でもあった表の間)
いつも奥座敷の一番良い場所で晩酌していたお父上が、少し話し相手がほしくなるとベルを鳴らし、相手をすると引き出しにかくしてあったバターをスライスしてご褒美にくれるのが楽しみだった、というお話も印象的だった。
そして!
吉田家で一番私が好きな場所は、、、、
ここなんである。
走り庭。
実は京都に移住する10数年前、一度予約してここのおうちを拝見させてもらった。今より10歳ほどお若い孝次郎先生みずから案内とお話をしてくださったのだ。当時京都に町家風の家を建てるにあたっていろんな町家を見て回っていて、ここの走り庭にどれだけ憧れたことか。残念ながらこんな走り庭は造れなかったが、、、、
それでもこの火袋の準棟纂冪(じゅんとうさんぺき・寺院建築に準じて木組みを見せる工法)は少しだけ取り入れることができた。
このじんとぎの流しも、来年からのイベントとかに備えて新しいユニットを入れることに先生は積極的だ。機能は上がると思うがちょっと惜しい、、、ので写真に残しておこう。
走り庭に面しただいどこの間。昔は使用人がここでご飯を食べた場所だが、この奥の舞良戸に先生の茶道具コレクションがぎっしりなのを知っている。
流しの横には火の用心のお札や正体不明のお札がならぶ。町家のだいどこらしい風景だ。
そして今も現役のおくどさんもこの日は静かにお休み中であった。
現代的機能的生活は快適である。反対に町家での暑い寒いの暮らしは面倒なことも多い。生活していくための作業は多く煩わしい、けれどそこで培われる生活の、ひいては生きるための知恵はなんらかの形で継承していかねばと思う。かといって寒がりの自分に町家暮らしはちょっともう厳しいかなともおもってしまうのだが(^_^;
吉田塾終了で気軽におじゃまできることはできなくなると思うが、また何らかの形でおたずねしたいと強く希望している。
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● COMMENT ●
高兄様
吉田家はかろうじてのこります。
10年ほど前にはここの前に伊勢丹だったかとっても良い町家があったんですがホテルになっちゃいました。
洛中の町家は絶滅危惧種になりましたねえ、、
10年ほど前にはここの前に伊勢丹だったかとっても良い町家があったんですがホテルになっちゃいました。
洛中の町家は絶滅危惧種になりましたねえ、、
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こちらの吉田家さん
本当に、ランドマーク的な存在
京都に残された、先人たちの宝だと感じます^^
京町家の中でも、生活の香りが残っている
生きている場所なんですよね