石州の寺・慈光院〜琉球畳の茶席へ - 2022.03.27 Sun

桜開花をとどまらせるような冷たい雨の中、大和郡山の慈光院へ。片桐石州が建立した寺である。おとずれるのは1年ちょっとぶり。
このたびは奈良に住まいする茶友Yさんの遠大な?茶会計画の一環として。
共通の知人であるご連客の数寄屋建築のIさんと、茶席に入る前の露地に慈光院を使っちゃおう!という企画。
石州の故郷、摂津茨木城の楼門を移築し、茅葺きに葺き替えた門。以前来た時には気づかなかった建築上の見所をIさんの解説付きで、という贅沢さ。やはり見るポイントが全然違う。
庭園に足を踏み入れると早咲きの桜が!
慈光院は茶事を念頭に作られているようなので、書院までもが茅葺きなのである。
中庭には名残の紅梅。
実はYさんはここで石州流のお点前をお稽古されているのだ。当院の観月茶会などご担当されたこともある茶道男子、また奈良(好き)友でもある。
ここの書院からの開放的な眺めは抜群である。学生時代に一度訪れたことがあるが、当時はカタギリセキシュウってだれ?というレベルだったので、、、、(^_^;
周りに遮るもののない眺望。
左手の畑は慈光院のご住職一家が野菜を無農薬で育てておられる畑だとは初めて知った。(後に茶席の点心としてここの作物をいただく)
書院にいけられていた寒アヤメ。
うちのも4本、今年は咲いたがいずれも茶事には時期が合わず、残念。しぼむのも早い花だから。
ここは庭も書院の建物も、いつもきれいに掃除されていて気持ちよい。
こちらが時代、作者、意匠が証明できる茶室の中で最古の茶室といわれる石州の高林庵、二畳台目亭主床である。
ここでもIさんの数寄屋講座、前回気づかなかった見所も、おお、そうだったのか!と。
もう一つの茶室・逆勝手の閑庵の前の紅梅。以前来た時は12月で枯れ木だったが、茅葺き屋根を前に咲いていると里の田舎家の雰囲気があって、これもよいなあ。禅宗のお寺にはみえないわ。
さて、Yさんの茶会の点心席にかえてこちらで蕎麦点心をいただく。(予約しておけばいただけます)いずれも先ほどの畑で育てられた野菜のお精進。
そしてお蕎麦。もう土筆がでているのね。それから橘の実。すっかり体があったまった。
さらに、違い鷹の羽・石州の紋菓子をいただきお先にお薄を一服。
今回のお得?は建築士Iさんがこられるというので、建築上のご相談がお寺さんからあって、普段足を踏み入れることのできない広い寺務所へ入ることができたこと。(Yさんはここでお茶のお稽古をされている。)50年ほど前の建築というがこの天井がこりにこった意匠で実に面白かった!
さて、<初座>のあとは、Yさんのテラスハウスへ場所を移して<後座>へ。
テラスハウスの小さな庭に上手に植栽して良い雰囲気を醸している。美術品にうるさいYさんの審美眼で集めたコレクションなどを拝見しながら、主菓子のお手製黒豆善哉を。黒豆で善哉とはまた目からウロコ。豆が美味しくてちょっと私もトライしたい。
二階が茶席になっているとおっしゃるので上がってみると、、、
おおお!!!
なんと!釣り釜のこんな釣り方があるなんて!頑丈な金属製の突っ張り棒で重さを計算しながら取り付けられたとか。アイデアやなあ。
さらに石州流の炭手前も拝見。以前Yさんが取り扱われていたフィンランドの有名な(実は私はシラナンダ)ガラス工房Iittala(イッタラ)のガラスの小箱を香合に。他流派の炭手前はバリエーションがありすぎてほんとうに興味深い。
さらにぱっと目に飛び込んで印象的なのがこの畳。
ほんまもんの琉球畳である。縁がないだけでなく、今は九州国東半島でしかとれない七島藺(しちとうい)というカヤツリソウ科の植物でできているのだ。藺草の断面が○なのに対して七島藺の断面は△なので、畳の畝が作る陰影がより鮮やかになる。
因縁めいた話をすればこの畳、以前Iさんの師匠が持っておられて、その後京都でドイツ人のギャラリーオーナーの物になり、それからYさんの所有になった、という畳なんである。良いものは巡り巡る。このすり切れ具合も実に美しい。
畳の非定型なところを補ったり、床にもなる板張りを作ったりはYさんとIさんの共同作業、そして多くはYさんのDIYである。すごいわ。この瓢花入れも、慈光院でとれた瓢をもらってきてご自分でペイントして作られたものなのである。後ろの板がまた良い感じで、Yさんコレクションの東大寺某塔頭の扉、これを壁に取り付けるのもDIY工作で。
手作りのアイデアいっぱい、Yさんの美意識あふれる茶室で濃茶、薄茶(浜田庄司の茶碗で。あれいいなあ)いただき、慈光院から始まった空間を凌駕した茶会、楽しく堪能いたしました。
最後に、石州流(実はたくさん流派に分かれているがYさんの流派では)の茶筅のつがり糸が白!というのが物珍しかった。しかも節が下!
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