嵯峨野厭離庵〜桜の茶会 - 2022.04.02 Sat

嵯峨嵐山、秋には人が多くてまだ行ったことないが、桜の季節もはじめてではなかろーか。
こうしてみると桜の嵐山もなかなかのものである。
その嵯峨野にひっそりと建つ厭離庵(えんりあん)、非公開寺院であるが紅葉の頃に短期間一般公開される。(コロナ前まで)そのころの人出の多さを考えると、行きたいがつい遠慮していたのだが、このたび○交社さん主催の茶会で、はじめて中へはいることができた。
厭離庵は通りの奥、普段なら前を通っても素通りしそうな場所にある。
厭離庵は藤原定家が小倉百人一首を編んだ小倉山荘の跡に建つと伝わる。江戸中期、定家塚が残るのみであったのを、定家の子孫である冷泉家が復興し霊元天皇が「厭離庵」と号し、白隠の弟子であった霊源禅師が開山となったという。
その後荒廃したのを明治になって実業家・白木屋が再建、山岡鉄舟の娘が入山してのち尼寺となったが、どうもこの方、お酒が好きで寺の物を売り飛ばして酒代にしていたらしく放逐、紆余曲折あり、現在は若いご住職が守っておられる。
境内は手入れが行き届き、苔の美しい庭園でお手入れされている庭師さんがおられ、嵯峨野の自然をそのまま生かした庭にしているとのこと。
石を積み上げただけの上に五輪塔が乗っている定家塚にもお参りできて良かった。定家が硯を洗ったという井戸(柳の井)もある。現在もきれいな水が湧いており、本日の茶席の水はこちらの水であるそうだ。
本日のお席主はご住職とお親しいという若い方で、その御縁で実現した茶会だそうだ。初めての厭離庵、茶室の時雨亭にもはいれるというのはとてもうれしい。ちなみに時雨亭は定家が建てた時雨の亭(ちん)から由来するものと思われる。
<いつわりのなき世なりせば神無月 誰がまことより時雨そめけん 定家>
(謡曲「定家」にもこの歌でてくる)
時雨亭は大正年間につくられたもので、月見台の上の屋根が高台寺の傘亭にそっくり。月見台でお菓子をいただく。聚洸さんのオダマキでやさしい桜色、銘が「ひさかたの」。
菓子器が宝づくしのそれぞれの文様が焼き印されたかわいい升であった。
(ツンツンでているのは百合の芽)
濃茶席の時雨亭は四畳向切升床である。床には作者は不明ながら冷泉家から厭離庵に贈られたという定家の絵と「こぬひとを まつほのうらの ゆうなぎに、、、」の百人一首の定家の歌。まさにこの場所にふさわしい。
御席主自らがお茶を練ってくださった。茶入が休雪の白い萩、茶杓が圓能斎の「放下」、主茶碗が惺入黒楽、これも銘が「嵯峨野」と場所にぴったりなのである。
濃茶は角田香勢園「駒影」、宇治から戦後天龍寺門前に移ってきたというお茶屋さんだとか。
薄茶は本堂にて。本堂といっても八畳のお座敷的な部屋でご本尊は如意輪観音さま。この御前でお茶を点てていただけるとは。ここの天井は現代絵師の手になる飛天が描かれているのだが、その脱力系のお顔がなごむ。
お菓子がそれぞれにお雛様のお膳ででてくるの、いくつになっても乙女の我々はつい歓声をあげる。しかも載っているお菓子が、叶匠寿庵のあも歌留多、百人一首の絵札の絵が描かれているの。これもまさに場所にぴったり!ちなみに私のは小野小町の「花の色はうつりにけりな、、、」であった。(もともと花だった時代はないけどな)
茶杓の銘が「小倉山」(山科瑞光院前田宗源師)と、これまたよくこれだけ集めましたね、と感心してしまう。
点心はさが一久さんのお精進、一見お肉に見える擬製豆腐や名物らしい筏牛蒡(牛蒡二本に衣をつけてあげて筏に見立てたもの)、美味しゅうございました。
この点心席には復興に尽力した富岡鉄斎が寄付した扇面の絵も飾られていた。
高校生の頃百人一首はすべて強制的に覚えさせられた。若い頃覚えた物はほんとに忘れないね。のちに苦労して覚えていて良かったと思うこと多々あり。あれはやはり日本人の心のふるさとであり、四季を愛でる心であり、美しい日本語を意識させてくれる物だと思う。それを編んでくれた定家様に深く感謝。
せっかく嵐山にきたので法輪寺にもお参り。ここは重陽の節句の時しか来たことなかったから、桜があるなんて知らなかった。
境内は十三参りの親子さんでにぎわう。
13歳、大人でもなく子供でもない。帰りに渡月橋で振り返るとここでもらった知恵をすべてなくしてしまうと言う。みんな真剣に呼ばれても振り返らないように頑張る。これは大人としての約束をまもること、を覚える第一歩だという。
で、嵐山に来たら、これ、琴聞茶屋の桜餅。
ここのは餡がはいっていなくて道明寺をそのまま食べるといった感じ。意外とあっさり感がくせになるのだ。
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