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2023-09

筑紫の国で粥の茶事 - 2022.04.15 Fri

はるばると筑紫の国へ弾丸日帰りツアー!


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先日我が家の茶事においでくださったお客様に粥の茶事にお招きいただいた。特急つばめは快適で、実際下りたところでホンモノの燕が飛ぶのをみる。九州ではもう桜はすっかり終わって初夏の風情であった。


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外観からは想像できないご亭主のお茶室は、動線や使い勝手をよく考えてあり、DIYもあればプロの仕事もある数寄屋である。
初座の三畳小間では清水公照(大仏殿昭和大修理当時の東大寺別当)さんの軸に迎えられる。先日の二月堂修二会の返礼とか、ありがたし。灌仏会も近かったので、その下に誕生仏。

ご当地のお詰さんが板木を勢いよくたたいて粥茶事スタートである。


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一富士二鷹三茄子の飾りのついた鉄製自在に手取釜、炭をいつも以上についであるのでお湯がたぎる中、お米投入!ご亭主の茶事はいつもこのスタイルなのだそうだ。


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しばらくしたら釜を火からおろして、まずは三部粥のアルデンテ。


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おかずをいただきながら、釜の中でむらされて次の五部粥〜全粥に変化していくのを楽しめる懐石である。
向付がアワビで、梅ひじきの入った器が蛤とは。ちなみに向付は美濃の久尻窯古陶だそうだ。なかなか重厚。


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お粥のおともにとでてきたこれが珍しい「川茸(かわたけ)」(のちほどこれに関連する話が)
福岡県朝倉のここでしかとれない淡水海苔なのだ。二杯酢でいただく。海水海苔とちがって海苔の味なのだがほんのりと淡い。これを乾燥して伸ばしたのがあの水前寺海苔だったとは!(懐石で毎度お世話になってます。ちなみに学名がスイゼンジノリなのだそうだ)


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八寸では、懇意にされている京都の京焼作家さんにつくってもらったという別杯をおもちだし。
それにしても粥懐石の進行の手際よく素早くダイナミックなこと!裏では奥様が指令を飛ばしておられるような気配も(^_^;


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湯桶のかわりに各自お湯をお持ちだしいただいたが、その器がなんと信楽の匣(さや)なのである。細々とした焼物を焼くのに直接火が当たらないようにおさめる、いわゆる窯用品のお見立て。そのままでは円錐形の底ゆえ立たないので、ご自作の竹の輪っかに乗せるアイデアがすごい。(ご亭主は竹道具作り、茶杓も含めてマイスターなのである)


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季節柄吉野漆のお皿に、桜餅風味の葛菓子を主菓子にいただいて中立。


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腰掛け待合から見える灯籠には、缶詰缶と食用油と灯心で自作された灯火器が。なんでもこれで24時間持つらしい。試行錯誤であれこれ燃焼実験されたよし、手作りの工夫がすばらしい。


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ふと腰掛け待合の天井を見上げると、、、おお!茶杓によさげな竹がいっぱい干してあるではないか!ご亭主の作られた茶杓や、茶杓の削る前の状態の物を、某流派のお家元もご所望されるそうである。私も先日お越しくださったときに櫂先だけ曲げた良い竹をたくさん(宿題に)いただいた。まだ茶杓に削るとこまでいっていないが(^_^;


後座は、先ほどのお粥をいただいた小間の隣の四畳半である。(茶室2つの贅沢)


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軸が、室町時代の妙蓮華経化城喩品第七の木版経とは渋い。

そしてなによりこの花に感動。ご自宅で咲いた武蔵鐙(ムサシアブミ)、これ自体なかなか育てにくい貴重な花であるが、それを入れる花器がまたいいのだ。なんという焼物だろう?と思ったら、なんと小鹿田焼の陶製湯たんぽだったとはだれも思うまい!実際昭和の中頃までお母上が使っておられたとか。(現在は湯たんぽ自体が死語になっているが、、、)
ある意味「民藝」と言っていいかも。これを花器として生かすアイデアがすてき。


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濃茶は各服立てながら、あとで濃茶のついた茶碗でそのまま薄茶をたててくださるので、茶筅もそれぞれ変えて使われるというお心使い、この御自作の茶筅立てには萌えた。

それから茶筅の後ろは洞庫になっているのだが、その右手にあるのが茶室の各照明のコントローラーなのである。これもまたびっくりのアイデア。初座後座簾巻き上げ、お道具拝見で自由自在に照明を手元で調整できるのだ。

ご亭主がお釜を80余個!もお持ちだとは聞いていたが、ここででた古芦屋はそのうちの一つなのねえとしみじみうらやましい。



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お茶碗のラインナップがもう私のツボでツボで(^_^;
中でもこれがピカイチだった。(写真アップのご許可いただきました)美術館の展示にも貸し出されたという(憧れの「個人蔵」)織部志野。呼継ぎが二カ所あり、見込みに焼成時にできた小さな虫食い穴が多数で良い味だしている。これほんまによかったなあ。
他にも宋代と明代の青磁人形手を並べる当たり渋くてまたすごい。

茶入が南蛮(南蛮水指をそのまま小さくしたような)、茶杓が利休だって(゚Д゚)!
先日私が使った根来薬器の薄器の返礼として、独楽型?の根来。

また静かに感動し、うらやましいと思ったのが高麗青磁の平水指である。形がまず美しい。上から見ると真円でなく、蓋を特注しないといけなかったという朝鮮独特のゆがみ、如窯と言ったら言い過ぎかもしれないがそれに負けない美しい雨過天晴色、良い物をお持ちなのはわかるとしてどうしてここまで私の趣味をご存じなのか〜!?と言いたくなるようである。

最後に水次として輪島の古い合鹿(ごうろく)漆器を見せていただいて茶事はおひらきに。

ここからはエキストラとして、せっかく九州までこられたのだから、とお車でご連客と一緒にご案内いただいたこちらは、、、


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そう、さきほどの懐石にでてきた川茸(かわたけ)の「畑」なのである。
今はもう全国でここ、黄金川でしか採取していない貴重な川海苔を育てて販売されるのは二店だけなのだそうだ。


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川の底にたゆたう藍藻類・川茸をざるに取り上げたところ。


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この箱の中、瓦の上にぎゅうぎゅうに川茸を詰めて乾燥させるとおなじみ貴重な水前寺海苔になる。(かなり体積が減る)この瓦を茶事に使えないかとご亭主はさっそく割れて廃棄するだけのものをゲットしてはった。なにに見立てで使われるのか、きっと楽しんで使われるのだろう。


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これが川茸「畑」
なんだかのどかな風景。ここでしか見られないけしきだな。


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さて、川茸の塩漬けを買って、水前寺海苔も、と思ったら売り切れ中、残念がっていると17代目というご主人が申し訳ながって、切れ端ですけれど、、、といって大量に水前寺海苔、くれはった!うれしい〜〜♪(けっこう買うと高価です)

というわけで弾丸日帰りながら、ほんとうにみのり多かった筑紫の国の茶事であった。
ご亭主ご夫妻、ご連客様、感謝です〜!


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