求月茶会 初秋 - 2022.09.11 Sun
遠州流のイギリスとベルギー人コンビ、S先生とT先生の茶席によらせてもらい、久しぶりにお目にかかった。なんと古式遠州流を家に伝えるMさんがS先生についてお点前を習われはじめた、という偶然!いや、遠州流だからあり得る話か、と思いつつ、聞けば人の数十年分のお稽古を数ヶ月でこなす=一日おきくらいに?お稽古、されているのだそうだ。彼の茶の湯に対する思いはほんとうに熱い。

T先生の日本茶・抹茶のお店の二階にて<求月会>と銘打って月釜を始められた由。ここには茶箱の女王Fさんの茶会で一度きたことがある。すてきな京町家で二階の座敷はなかなか趣がある。
「雲収山岳青」の軸
日本人よりはるかに茶の湯にも禅の思想にも詳しいS先生のご説明。雲は煩悩、それがはれて心はすがすがしい、、とそんな感じか。花はS先生のお庭でとれた秋の七草ヴァリエーション。本来の七草には入らない野菊が可憐であった。
脇床にS先生の持ち物である古い古い阿弥陀様+諸菩薩と経文を描いた版木が飾ってある。裏にも経文が。さかのぼること平安末期、「鎌倉殿」くらいの時代のものとか。これは貴重なものを拝見できた。
釣瓶木地水指で紙弊がかざられ、お、名水点てか?と思ったらやはり藤森神社の伏水(伏見のお酒になる水)をご用意してくださっていた。
お菓子は木屋町の本家月餅屋直正さんの紫蘇の葉でくるんだおはぎ(紫蘇の花付き)である。赤紫蘇もそろそろ収穫を迎えるので秋らしいおはぎだったな。
お道具はやはり遠州好み、ほんまにきれい寂びという感じやわ。遠州流ではお茶が点つまで薄茶と言えど道具の説明はしないとのこと、T先生の流麗なお点前をみながらだまっているのはなかなかツライ。(だって裏千家は道具を聞きまくってナンボ、やし)
そしてお茶碗は高麗青磁シリーズ、これはほぼMさんのコレクション。細かい象嵌の青磁ですごく薄手、持ったときに軽っ!と思う上手の高麗青磁でいただく。時代がくだった粉青沙器が私の専門?(←プロにはおよばず)なんだが、高麗青磁もどうしてどうして。しかも茶席のあとでMさんによる高麗青磁のミニ講座付きで、ほんま勉強になった。さらに道具や高麗来青磁についてまとめた小冊子(Mさん制作)までいただいちゃった。
話は擬宝珠木地香合から、瀬田の唐橋の擬宝珠についての利休と織部のエピソードにいたり、利休の茶会記についてご造詣の深いS先生の「利休は実は気に入った仲間しか自分の茶会によんでいない。道具はけっこうありあわせで何回も同じモノを使っている」とか、はては井上靖の映画にもなった「本覚坊遺文」の話までほんとうに面白かった。そうかあ、利休も気に入った人しかよんでないんだ〜。
S先生は、かねてからやりたかった指導法、Mさんにお稽古するのに、台子(真)から平点前(草)へ、という普通とは逆の教授法をとっ手おられるとのこと。この方法は以前から私もそう思っていたので激しくうなづく。真の点前から草へ下がってくると、なにがそぎおとされたのか、所作にどういう意味があるのか、ロジカルに理解できるのだ!
さて、茶杓、最初床脇に筒だけがおいてあって「雷如」という銘が書かれていて、なんだろ?と思っていたが、茶杓の持ち手に斜めにシャープに走る煤色が、なるほど稲妻に見える。それでか〜と思ったらまだまだ浅い!話は「維摩の一黙雷の如し」からきていたとは!
(維摩居士の病床を見舞った文殊菩薩との問答のあとで維摩は黙した。その沈黙の迫力が雷のようだった、という「碧巌録」)
こちらの一階のT先生の店舗は閉められるそうだが、この町家はいずれお茶のサロンにされるとか。求月会も不定期にされるそうなので、また楽しみに参加したいものである。
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