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2023-06

遠州山里にて古民家で茶事〜無庵 - 2022.11.26 Sat



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遠州掛川から一車両の天竜浜名湖鉄道に乗り換え、ヤマハのロゴはさすがご当地、ここまで来るのは初めてである。


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ノスタルジックな駅舎の遠州森駅から車で少々、あたりはだんだん山里の景色になり、こんなところに精進料理を出す店が本当にあるのか?と現地のタクシードライバーすら疑わしげだった(^_^;
しらなければ、看板もなにもないので通り過ぎてしまうだろう侘びた古民家、ここが精進懐石無庵である。


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主が吊り下げた干し柿の暖簾が山里の秋を感じさせる。

実は無庵さん、ずっとインスタでフォローしていたが、半年ほど前、東京の某茶会にご夫婦でお越しになっていて初めてお目にかかれたのだ。これはもう無庵に行くしかない!と決めて、師匠はじめお茶友有志のありがたいご参加をいただき、お料理ではなく茶事をお願いしたのである。


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精進懐石のお店という抱いていたイメージと違って、まさに古民家の茶友のお家に茶事に招かれた、という感あり。すでによく存じ上げているご亭主のような錯覚を覚える。
普段からお店はご夫婦おふたりできりもりされていて、茶事はご主人と奥様が亭主・半東を。ご主人は懐石も作りながらの亭主なのである。


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ご亭主は堀内長生庵にて表千家のお茶を学んでおられる。亡くなられた先代の宗心宗匠に師事されたとか。よって待合の軸は瓢の炭斗画讃、堀内不識斎(江戸期の宗匠)であった。

露地の延石、四つ目垣、柴折り戸、さらに石垣張りの障子までご主人のお手になるもの。


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もとは玉砂利を敷いていたという露地は自然に地苔が生え、良い感じに育っていた。植え込みの足下には敷松葉も。これから季節が冬に向かって寒くなるごとに松葉を広げていくそうだ。


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この蹲居の向こう側は流れの速い小川が流れていてせせらぎの音がする。山水なのだそうだ。


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茶室は四畳向切。かつて六畳のなにもない座敷だったのを、手を入れてここまでの茶室にされたよし。ご主人ご本職は料理人なのだが、お茶好きがこうじてここまでのものを作ってしまわれたのだ(^_^; (そしてそういうところへ距離もいとわずやってくる同じ穴の狢たち?)山里にふさわしい侘びた景色のほんとうにすてきな茶室である。

本席の軸は蓮月尼
  <ちどり鳴く かもかわつつみ月ふけて 袖におぼゆる夜半の初霜>
京都から来る客のために鴨川堤を掛けてくださったのだなあ。ちなみに私が住む岡崎は蓮月とも縁の深い場所なのである。

炉にはご精進の灰、山里の極わび茶室に合うように、少し粗めに仕上げられたとのこと。表千家の炭手前を興味深く拝見する。



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お料理はご本職だからお手の物。私は全くの精進懐石はあまり経験が無い。だからお出汁が鰹節をつかわず、昆布だけでこれだけ美味しいのか!と驚いた。ご飯は竈で炊いた煮えばなでこれまた美味しい。向付はお手製の胡麻豆腐である。

ここでお給仕は奥様に変わって厨房へ。



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これがまた絶品の湯葉がき。湯葉を蕎麦がきに練り込んだもので、たっぷりのきのこの山の幸、この里山でとれたものだろうか。これも昆布のうまみだけで食べさせる。
あといくらでもお酒がすすんでしまう豆腐の八丁味噌田楽、ねっとり美味しい今期初物の海老芋、次郎柿の白和え、精進でこれだけ美味しくてお酒のすすむものができるとは思わなかった。(ちなみに茶事でなく懐石料理のみいただくこともできます)



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主菓子までお手製の薯蕷。懐紙と比べてみてもらうとわかるが大きいのである。ほかほか♪
どうもこれを見ると師匠とご亭主の坊主頭が並んでいるように見えて(^_^;
ちなみにご亭主は心より尊敬されていた堀内宗心宗匠が亡くなられた時に頭をまるめることにきめられたそうだ。理想的な師弟関係に巡り会われたことがうらやましい。


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後座の花入れは少し凍みが入った青竹、もちろんお手製である。裏山の西王母のつぼみと照り葉。
濃茶を、ゆっくり時間をかけて少し体を丸めるようにして練られる姿がとても印象的であった。師匠が言うにはまさに宗心宗匠の練り方なのだそうだ。ご亭主の誠実なお人柄がにじみ出ているようなお点前であった。


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薄茶はあまり泡をたてない表千家のお茶。
ずっと思っていたが静岡はお茶の一大産地でありながら、あまり静岡産の抹茶ってないなあ、と。実際ほとんど煎茶などになって抹茶にならないそうだが、せっかくお茶の産地にいるのだから、とご当地のお茶を無庵好みにブレンドしてもらっているとのこと、そのお茶を二服もいただいた。

干菓子もお手製で和三盆のふくら雀、中に大徳寺納豆ならぬ浜納豆入り、と晩白柚のほろ苦砂糖漬け。


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遠州森駅、もうこのノスタルジックな駅には心奪われる。
この駅まで最後には車でお送りいただいた。なにからなにまで淡々と誠実に行き届いてされるお茶事は、料理店の茶事などというものではなかったことに深く感動。

露地や茶室の手入れ掃除を自ら行い、客に一服のお茶をさしだすためだけに多くの準備をし、周りにある食材を使って亭主自ら包丁を握る。客が来れば着物を整え迎付にでる。、、、映画「千利休〜本覺坊遺文」の中のシーンを思い出してしまった。これぞ茶事の本来の姿だ。


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最後に、静岡茶の無庵好み「無双の白」を買って帰ったので、今度の茶事にお出ししようと思うのである。



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● COMMENT ●

ご亭主夫妻の心のこもった清々しいお茶事でした。
お誘いくださってありがとうございました。

そらいろつばめ様

こちらこそ遠路お付き合いありがとうございました。
茶事はやはりシンプルが茶の心に通じるなあと思いました。いろいろ反省もあり。
でも楽しかったわ〜。

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鍵コメ様

コメントありがとうございます。ご近所でしたか。
それはまたいつか御縁がありましたらよろしくお願いいたします。


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