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2023-12

狐の茶事〜宗旦狐 - 2022.12.24 Sat

美濃国の狐の茶事に招かれて、新幹線に乗ったは良いが、停電事故で閉じ込められる。いつもは、のぞみが止まらない駅からどうにかこうにか1時間遅れででたどり着くという、はなから狐にばかされたような仕儀とあいなった。

さりながら、たどり着いたときにはこの冬初めての初雪が舞っていて、これはさいさきよさそうな兆し。


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(画像はイメージ うちのお狐さん)


さすがに1時間も遅れたので、待合掛けを見る余裕もなく席入り(どうも徳利もって酒を買いに、、云々の大綱和尚の歌だったらしい)ご連客をお待たせしてしまった。
東京から来る予定だった茶友さんは、ついに来ることかなわず(新幹線結局4時間停止)、急遽30分前に代理でお越しの庵主様が。とてもお茶目で楽しい方だった。(30分前の連絡で駆けつけてくれる茶友がおられるうらやましさよ)

ご亭主は、2年前其中庵さんにお相伴させていただいた時の茶事のご亭主、其中庵さんと一二を争う数寄者でいらっしゃる。今回は役不足の正客でスミマセン、、、

本席は四畳半台目、床に掛かるのは江月和尚の横一行「玄々」
禅に関わる言葉なので深い意味はわからないながらも玄冬のイメージ。これを拝んで早速の炭手前、すごいお道具ばかりがでてくるが、炉縁が東大寺古材というのに萌える。朱鷺の羽もうらやましい。一見白に見えるが真ん中にうっすら鴇色がのこるのがゆかしい。懐かしいクジャクのピーちゃんの落羽根から御自作されたゴージャス座掃にも再会。



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(八寸の伊勢エビ〜!)


伊賀の香合に鈍翁と出入りの道具商・横山雲泉のエピソードがあって、これが其中庵さんのフラッグ的掛け軸、雲泉旧蔵・鈍翁の「茶狂」とつながって、御縁ができたとうかがった。現代の「近代数寄者」的逸話だなあ。
その香合から焚かれたのが香銘「雪花」、徳川美術館元副館長大河内先生が作られたというプライベートな香で、その日に初雪をみるなんて、これはなんという僥倖。


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懐石は広間にて。うれしいことにここに敬愛する久松真一先生(ご当地出身)の軸をかけてくださっていた。例によって読めないが、、、(^_^; (「無量寿如来」だけわかった、、)
酒盗の柚餅子はお手製、ほんまに美味しくお酒がますますすすむ。客は四人ともウワバミでして、(参加予定だった友はもっとウワバミ)



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老舗酒店のご主人でもあるご亭主も苦笑いでしょうか。
急遽ご一緒した庵主さまは松尾流の師匠もされておられるとかで、色々楽しいお話を聞くことができ、これもうれしい御縁。



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前回もここの料亭製のきんとんがべらぼうに美味かったのだが、今回も黒糖味、干し柿?入りのきんとん、絶品であった。これをいただいて中立。


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手燭の灯りの待合で待つことしばし、お鳴り物で、と挨拶したところ意表を突く、喚鐘ではなくて妖しげな笛の音が、、、


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でた〜っ!
お狐様!
迎付にでてきたのは黒い僧衣に絡子(らくす・袈裟 後に庵主さんからの拝領品と判明)、金襴のかぶり物(後に仏壇に敷く金襴と判明)狐のお面である。手に手燭と枯れた大きな蓮の葉を持って。
この狐さまと手燭の交換、そして蓮の葉をいただく。
去って行くときには能の釣狐のように手をまるめて腰をかがめて、、、あっ!尻尾!尻尾まである!しまい忘れてますよ〜。


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宗旦狐は碁が好きで、勝負に夢中になると尻尾をしまい忘れたとか。(のちにこの尻尾は子供さんのフェイクファーマフラーと判明)
相国寺門前の豆腐屋さんが傾いたとき、お金になる蓮の葉を持っていって助けた逸話がある。(皮肉にも後にこの豆腐屋のお礼の油揚げで昇天してしまうのだが)さしずめこの蓮の葉は宗旦狐が採ってきたその蓮なのね。席入り後、これは墨跡窓に挿しておく。


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後入りでびっくりしたのは水指の代わりに大きな酒徳利が置いてあったこと。待合の徳利持って酒を買いに、、、の軸の徳利だ。蓋は酒樽の栓をご自分で加工して作られたそうだ。水指はこうあるべきの発想を軽く飛び越えるご趣向。
広沢手の茶入に、樋が二本入る茶杓が宗旦、もう何が出ても驚かないわ。田中常慶の兄弟である宗味の黒楽(ほぼ長次郎といっていい)。お好きだと聞いて、と出してくださった火入れが志野の筒向、擂座の着いた垂涎もの、いつかこんな志野、手に入れたい。



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ここで曰くの油揚げ!
油揚げに餡を挟んでかるくあぶったお菓子。これを食べて狐は正体を現してしまうが如く、我々の正体も大ウワバミということがバレ、、、いやとっくにばれてるか。狐の趣向がここまですごいか!と感心していたらそれだけでは無かった、、、


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花入れに入れた照り葉の影が、、、狐だわ〜!
もう感服して平伏するしかありません。(しかも花入、一燈だし)

薄器の大棗は江岑宗左、薄茶をいただいた茶碗がこれまた私の好物をよくご存じで、、の半使(高麗・はんす)、他に宗入やら桃山織部やら美術館に迷い込んだようなラインナップが眼福であった。

もう一つの干菓子が、名前は失念したが栗きんとんを作ったあとの鍋にこびりついたパリパリの部分を板状にしたお菓子で、しがむほどにやさしい甘さがあって秀逸なお菓子であった。

最後のご挨拶で茶席を出るときに、お見送りのお謡いまでも「小鍛治(子狐がシテ)」のキリ!
 ♪ また叢雲に飛び乗りて 東山稲荷の峯にぞ帰りける
私も東山の方へ(稲荷よりかなり北だけど)帰ろう。
(おまけ、ご一緒した庵主様の院にも伏見稲荷の末社があるそうで)


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待合にもどると待合がけは巻き上げられていて蓮の葉と実が。同じ物はお目にかけませんの心意気(でも残念ながら私はみそこねた(^_^;)。以前の茶事は大黒様の茶事だったので、結ばれていたのは稲穂だったのよね、と思い出す。ちょっとマネしてみたい(^_^;


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かくして最初から最後まで、うまいこと狐に化かされたような不思議な気持ちで、頭の中をあの狐登場の笛の音が駆け巡っている。でも、たとえ飲んだお酒や手に取った茶道具の名品が実は木の葉であったとしても、悔いの無い一会でございました。ありがとうございました。




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