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2023-12

蝦蟇窟主人の茶事〜鮎尽くし懐石 - 2023.09.03 Sun

昨年末新幹線に閉じ込められて遅参した美濃の国の茶事にまたお招きいただける幸甚、今回は師匠と、師匠の師匠?東京の大御所さんとご一緒でますますテンションあがる。



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いただいたご案内状には蛙(蝦蟇)の絵、そして、お、ウナギ、鮎が食べ放題?いつもお手紙には素敵な絵を描いてくださるご亭主だが、この蝦蟇はなにの謎かけか?


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8ヶ月ぶりの日本料理・須多さんの茶室と内露地、前は初雪の日でだったが、今日は酷暑の茶事である。芳名録の文鎮がまた青銅の蝦蟇。


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蹲居の左手に蒲の穂、、、蒲(がま)、、、蝦蟇?(がま)

寄付には片桐石州の消息、松平織部宛。竹の花入れを送ったがいかがでしょうか云々、、、。(松平織部家という旗本家があるらしいが、詳細不明)


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前回はここの小間を使われたが、


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今回は続きの広間にて。

本席の軸は「蝦蟇窟」

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(ご亭主からいただいた写真、お使いくださいとのことでありがたくアップさせていただく)


鈍翁お気に入りの出入りの道具商であった横山雲泉に贈ったものだそうだ。
ご亭主の茶事を語るとき、鈍翁と雲泉にまつわるお道具の逸話は欠かせない。茶道具を介しての、この年の離れた二人の仲は知れば知るほど親密であったのだなあと思う。



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(汁は奥様お仕込みの味噌)

雲泉のお父上だったか?露地に蝦蟇を放ってそのゲコゲコの声を楽しみながら道具談義をしていると聞いて、その茶室を蝦蟇窟と鈍翁が名付け、その扁額の元になった字がこの軸である。(老稚園といい、当時の数寄者のネーミングセンスが(^_^;) 横山家のご親族からご亭主が譲り受けた軸と聞いた。新しい蝦蟇窟あるじ誕生である(4年前だそうです)。


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(鮎尽くしの最初は鮎のつくね!)


其中庵さんと並ぶ数寄者のご亭主、あちらは雲泉が所持していた鈍翁の「茶狂」が旗印、こちらは「蝦蟇窟」、なんて仲良しな両巨頭!
今日の茶事に先だって過日其中庵さんが正客をされたよし、どんな数寄な会話がなされたのか聞きたかったなあ。


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(鮎の塩焼き 蓼酢  長良川より今は和良川の鮎の方がよいのだそうだ)


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(こちらもご亭主からいただいた写真)

炭手前の羽根が鵜と白鷺、なんと御自作。長良川の鵜飼い、この鮎も鵜がとったのかしら?鵜の羽根は黒く、小さくて、かわいらしい。一番手前に添えた小さな白鷺の飾り羽根がご亭主のセンスである。灰匙が南米インカの匙、というのもびっくりだ。灰器は須恵器、南鐐と銅の紅白捻り鐶も初めて見た。


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懐石の鮎尽くしはまだまだつづく。
これは味噌ダレの鮎、この後もう一回塩焼きがでて、もう1年分の鮎を食べ尽くした感あり。


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鵜難儀(うなぎ)も出ましたよ、白焼と蒲焼きの紅白。
お酒も岐阜恵那市の「女城主」というお酒が水のようにさらさらとして美味しかった。



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(前回もいただいて酒のアテに最高の自家製柚餅子、これで今期最後なんだそうだ)


中立にて、今回の後座入りのお鳴り物はなんだろうとわくわく。前回は宗旦狐の妖しさたっぷりの笛の音であった。

ここ、須多さんのすぐ横を電車が通るのだが、その踏切の音がとまるやいなや ♪ おもしろや〜
のお謡いが。(能「鵜飼」の多分<鵜の段>)そのBGMになんとゲコゲコの蝦蟇の声!
ま、まさか本当の蛙?と驚いたが、実は赤貝の外側をこすりあわせて出した音だった!今回も十分意表をつかれてヤラレタ!


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(主菓子 ほんのり暖めた黒糖葛焼 ここの餡子、ほんまにいつも美味しい)


後座の床は、待合の石州の消息に書かれていた花入れまさにそのものである。一重切の太くて艶のある花入れにいれてあったのは高砂ホトトギスの花と、モミジバハグマの葉。切れ込みの深いこの葉を蝦蟇の手に見立てて。(どこまでも蝦蟇へのこだわり(^_^;)


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(さらにご亭主からいただいた写真)


濃茶の主茶碗は外側がほとんど伊羅保に見えて内側は御本に見える蕎麦斗々屋。了入の黒、井戸脇など各服でたくさんの茶碗の名品を手に取る。茶入はご当地、瀬戸の広沢手。パイナップルの繊維で織った出帛紗が思いのほか美しかった。
煤がはいった華奢な蟻腰の茶杓は小堀権十郎、歌銘が小野小町の歌(色見えでうつろふものは世の中の人の心の花にぞありける)。



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最後のハイライトが薄茶の主茶碗「蝦蟇」

鈍翁が77才にして初めて作った白楽の茶碗であるが、ゆがんでちょっと不格好、よって蝦蟇みたいと揶揄されて開き直って?「蝦蟇」と命名したとか。
この茶碗は流れて最終的に蝦蟇窟の雲泉の元にきたそうだ。そして今ご亭主の手元に軸と茶碗とふたつともという大団円。すばらしいストーリーを聞かせてもらった。

もう一つ印象的だったのがこれも鈍翁が益田家の婚礼の際、引き出物として配ったという手焙り型の横に長い平水指(鈍阿?)。これは一目見てびっくりする意匠だ。
薄器が原羊遊斎の「蝶蒔絵」、茶杓が玄々斎。


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(これが蝦蟇の声の正体、拝領いたしました!)


振り返ればご亭主の、審美眼と教養と郷土愛に裏打ちされた茶事であり、それをわかるには少々役不足ではありましたが十分楽しませていただいた。感謝です。

さて、2年前は福の神(大黒様)、去年は宗旦狐、今年は蝦蟇で、次はなにかしら〜?と早くも厚かましいことを考えているのである(^_^;




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