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2017-08

宗一郎能遊び〜燈火の「鉄輪」 - 2014.06.24 Tue

恒例の弘道館講座シリーズ「宗一郎能遊び」。観世流シテ方林宗一郎さんをお招きしての能遊び。夜の講座です。


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夜ゆえに、今回の会は電灯のあかりを消して、蝋燭の火のあかりのみで鑑賞するというとても贅沢なもの。テーマは「女といふもの」。


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広間の座敷が時がたつにつれどんどん暗くなって、たよりない蝋燭の灯りはゆらゆらと怪しげな影を作る。かつて能がよく演じられた時代はかくもこそあれ。


ご講義いただいたのは「井筒」「道成寺」「鉄輪」「松風」、、、、いずれもむくわれぬ恋、思いをいだく女が主人公。
なかでも「道成寺」は一番激しい。「安珍清姫」に題材をとった話で、報われぬことを恨みに恨みぬいて鬼となり、相手を焼き殺してしまう激しさだが、もっとこわいのが「鉄輪」。


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これはまだ生身の女の体を持ちながら、嫉妬の恨みで鬼になりかけている姿、というおぞましさ。鬼になりきってしまえばもうエイリアンみたいなもので、鬼=般若の面はあっけらかんと鬼だけれど、鉄輪では橋姫、もしくは生成(なまなり)という面をつける。

これがまたこわいんだ。
(参考:橋姫・面生成・面。ちなみに生成は鬼化が一歩すすんで角がうっすらはえてきている。こわ〜〜!)


ところは山深い貴船神社(いまでこそ縁結びの神社だけれど(^_^;)丑の刻詣での女あり。自分を捨てて後妻を娶った夫に、報いを受けさせるため夜な夜な貴船までかよってくる。
夢告げを聞いた社人が女に「鬼になりたいとの願うなら、赤い衣を着、顔には赤い塗料を塗り、頭には鉄輪(五徳)をのせてその三本足に火を灯し、怒りの心をもつならば、忽ち鬼となれましょう。」


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(いらんこと言いの社人のせいで)女は半ば鬼となった姿で元夫のところへ現れる。

今宵は橋姫の面をつけて若手能楽師・河村浩太郎さんが最後の部分を妖しい蝋燭の灯のもと舞われる。薄暗くてはっきりと見えない面はよりおどろおどろしく、白目の部分の金泥のみ、にぶく光るさま、こちらを見据えているようにも見え、鳥肌がたった。凄さと怖さで。

面をつけているがゆえにくぐもった声のうらみつらみは地獄の一歩手前から聞こえてくるようにも聞こえ、こええのなんのって。

  恨めしやおん身と契りしその時は、、、変はらじとこそ思ひしに

         などしも捨ては果て給ふらん あら恨めしや



嫉妬に身を焦がすとき、おのが姿を鏡で見て、その中に鬼の姿をみればまだひきかえせる。こわいのは怒り・ねたみ・恨みで目が曇り、それを鬼と認識できないこと。こわいながらも哀れ。
怖さの行き着く果てにある、哀れさをみることができれば観能者としては上等至極。

鉄輪の女は安倍晴明に調伏されて消えていくが「I'll be back.」的な消え方に、怖さが後を引く。


これを電灯の下、あるいは広い設備の整った能楽堂で見たら、これほど恐くはないと思う。衣裳の金糸は明るい光の下で見るときんきら派手だが、蝋燭の灯りのもとでみるとなんと美しく妖しくなまめかしいことか。

秀吉の黄金の茶室が燈火に見るとびっくりするほど渋くて艶っぽくみえるのと同じ効果であろう。いや、効果というより、昔はそうだったんだから。昔の環境設定でこれらの物は美しく見えるように計算されているのだから。舞妓さんの白塗りを白昼見るとびっくりするが、お座敷の蝋燭の灯りの下で美しく映えるのもまた同じ。

美しさを堪能するという意味では、影のない現代の夜が失った物は大きい。


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最後の「松風」(熊野〈ゆや〉松風米の飯、、、というくらい人気の演目)は燈下で宗一郎さんの素謡い。「松風」は以前の講座でも聴いて、平安神宮の薪能でも見て、もう私もすっかりお馴染みの演目になったなあ。(圓能斎好みの松風棗まで買っちゃったし)

謡い終わった宗一郎さんが、扇で室内の蝋燭をすべて消すと一瞬の闇。


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毎回テーマに沿って出される老松さんのお菓子はこれ。黒糖色の葛に包まれた餡が紅色。
これはなんだろう。
私には中の餡が漆黒の闇をゆく鉄輪の火とも見えるのだが。




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