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2017-09

古稀の茶会〜横浜・三渓園 - 2015.10.14 Wed

約3年の京都暮らしを終えて、A庵さまが横浜に帰られてもう半年たつのですね。横浜に帰ったら秋に古稀の茶会を三渓園(に隣接する隣花苑)でするから、と約束して下さったのが春先のこと、とうとうその日がやってきました。


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はるばる来た横浜は本牧にある三渓園。鈍翁や耳庵と並び称された財閥数寄者・原三渓が作り上げた庭園で、なんと53000坪の広大さ。なんといっても園内に全国から移築された17棟の重要文化財建築が点在するのが見所。

三渓はここの内苑とよばれるプライベート空間以外の外苑を当時から一般に無料公開して散策できるようにしていた、というから太っ腹な方だったのですね。



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茶会は隣接する隣花苑を貸し切っておこなわれました。
この隣花苑は三渓が長女のために静岡の広瀬神社神官西島家を移築したもので、なんと足利時代(600年前)の建築物だそうです。


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現在はそのお孫さん(三渓の曾孫)が原家の家庭料理的な日本料理をだすお店をなさっています。この古いすばらしい伝統家屋を維持するために、とお母上の代からはじめられました。



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こんな囲炉裏のある田舎家、木材部分は長年の時を経てつやつやの黒光りで、いっぺんにここが気に入ってしまいました。ちなみにここは待合。A庵様のお茶友さま、ゆかりのある方々が大勢おいででした。



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囲炉裏のそばにはこんな猫もいました。そういえば三渓園も猫がたくさん闊歩していてこの隣花苑でも見かけましたよ。

さて、A庵様が京都ですごされた3年間、お宅で私はもう一人の方とずっと月イチで奥伝の自主稽古をさせていただいていました。それぞれ違う社中なので、ときには頭をよせあって不明な点などあれこれディスカッションをしたり、なかなか息の合った三人でした。おそらく社中では一年に一回しかお稽古しないであろう奥伝を短期間に何回させてもらったことか。自分でもこの時期すごく成長したと思います。



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それから、関西在住のA庵さまのお茶友さんのところへあちこち、かなり遠方へもつれていっていただき、縁を結んでいただきました。
横浜へ帰られるのはわかっていて、いよいよそれが近づいたころの自主稽古で、ああ、この時間はきっと将来忘れがたい懐かしい時間になるな、とすでにわかっていたことを思いだします。



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まずはこちらの懐石をいただきますが、これが有名な「蓮華飯」です。三渓園でとれた蓮の実を四度皮むきして作られるものでとても貴重なご飯です。今年は蓮の実がやや不作でご心配いただいたとか。

昭和12年に原三渓が予定していた茶会の数日前に、将来を託していた彼の長男が親に先立ち亡くなられた。だれしも茶会は中止になると思っていたところ、どうぞおいで下さいの案内。そして出された懐石が、蓮の葉の上に白いご飯、その白いご飯の上に赤い蓮の花弁が散らしてあり、それぞれその花、ご飯を取って蓮の実をそこに乗せ、その上からお出汁をかけていただく。
どの客も三渓の哀惜の念を深く感じ、黙してそれを食したにちがいありません。それにちなむ蓮華飯。

蓮の実は豆のような芋のような、ほのかに苦くまさに天上のたべものというにふさわしい。


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これは三渓園でとれた蓮の実の枯れた状態。

他にも写真がピンぼけで載せられないのですが、三渓が自らアイデアをだしたというこちらの名物「三渓麺(そば)」も頂戴しました。そばといってもそばの細さのうどんで、上に豚肉・椎茸・タケノコ・ネギなどがのった汁気のない麺で、点心にはぴったりのものでした。三渓はこれをよく来客にふるまっておられたそうです。


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懐石をいただいたあとは足利時代の建物、というのも納得の黒い木の壁のある四畳半ほどの部屋でA庵さまのお友達による香手前を拝見。
お香の炭手前というのは初めて見たので、これは感激です。なるほど、香炭をいれたあとの灰はあのくらいかき上げないといけないのだな、とか。茶の湯であつかう聞香とはかなり違います。より武家手前的なキレのよい所作と公家的な雅さが同居するというか、、、ああ、香道にはまるのはよしておこう、これも奥が深くて時間がいくらあっても足りなくなりそうですから。



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香名が「紫雲」。古稀の色、紫にちなむ名前、とご亭主が命名されました。
そしてこちらでいただく主菓子も紫と白のきんとん。



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茶席に席入りすると大きな床の間には三渓の手になる双鶴図。そして秋の花がいっぱい。

あ、蓮弁の香合が。これは京都にいらしたときにも拝見し、手にもとった懐かしい香合。蓮華飯に三渓園の蓮池、そうくればこれしかない、という蓮弁香合ですね。

こちらで初めてA庵様と久々のご対面。やはり紫のお召し物、よくお似合いです。お客様おひとりおひとりにご挨拶をされる。中にはめったに会えない方や私たちのように久しぶりの方もおられるでしょう。いっしょにすごした時間が懐かしくて、、という客の数だけ、想い出がおありだと思うと、こちらのほうが万感の思いで胸がつまるように感じました。



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(三渓園の蓮池)


京都時代の最後に入手されたと伺っていた楽家の黒楽で濃茶を練られる。懐かしいお点前。あの三年間のいろんな想い出が次々とあざやかに思い出されてきてついうるうるしてしまいました。

この茶碗は「不老門」と銘を。心に好奇心と夢を持っている人は永遠に老いることはない、そしてみんなで手を繋いで不老門をくぐりたいですね、と。まさに古稀にふさわしい銘のお茶碗です。



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(この蓮池から蓮の実がとれる)



同じ人間がふたたび集ったとしても、過去の懐かしい時代は再現できない、その時の輝かしさはその時間だけのもの。A庵様はすでに未来をみすえて前を向いて進んでおられる。私も過去ばかり懐かしがっていてはいけないな、と思うのでした。



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しかしながら自分にできる前向きのことはなんなんだろう?前に歩もうとすれどその方向がいまだわかりません。ただ今は、自分でできることをひとつひとつ丁寧にやっていくしかないのだと思います。無理をしてあらぬ方向に足を踏み出しても長続きしませんものね。



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続き薄は薄紫の帛紗をおつけになって、横浜に帰られてからのお弟子さんにお点前をまかされたので、それぞれのお客さまとも話がはずみました。でてきたお茶碗はいくつか京都時代に見た懐かしいものもあり、これもうれしいものです。

こうしていると初めてお目にかかった時のことがいまでも思い出され、お茶がつないでくれるご縁というものはありがたいと同時にほんとうに不思議なものだと思わずにはいられません。



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こうしてお茶会はお開きになりました。さあ、私も未来をみすえて憧れと夢を持ち、不老門をくぐりたいと思います(気持ちだけでも)。

このたびはほんとうにおめでとうございました。そしてありがとうございました。



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● COMMENT ●

蓮華飯の上にたっぷりと載っている青みは何ですか。
青紫蘇?

良いご縁が繋がって続いて広がって、これもしぇる様の前向きの姿勢の成果ですね。
連休中に根津美術館の庭を夫と歩いていて、こんな日は三渓園に行くのもピッタリね、と話していたのです。その頃きっとしぇる様は参席中だったかもしれないですね。
根津は嘉一朗の名品展で、ほとんど今までに見たものですが、改めてまとめてみると圧巻でした。

いいお茶会

いいお茶会だったようですね。
しぇる様と席主様の交流の思い出が綴られていてほんとうにうらやましいお茶会。
いいですね。


Mariko Ishii様

そうです、青紫蘇!
いいアクセントでした。

そらいろつばめ様

お茶のご縁はまた格別です。(そらいろつばめ様もふくめて)
私は第一印象はあまり重きをおきません。長くじわじわつきあってお人柄もわかって築いていく人間関係が大切なのです。A庵さんとも3年間の積み重ねがあればこそ宝と思えるご縁となりました。

N様

ずっと楽しみに待っていたのに、いざ茶会がきてしまうと終わるのが惜しくて惜しくてさびしいくらいでした。
ご亭主に手をひっぱってもらって足を踏み出したこともいろいろあり、今度は自分が誰かの手を引いてあげる番だと思いつつも、若干こころもとないです。


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