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2023-10

宇治にて陽春の茶事〜縣神社 - 2016.03.28 Mon

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宇治川は流れも速く水量も豊か。宇治の七名水といわれるくらいによき水脈があり茶業をはぐくんだ気候風土だ。



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平等院の参道と平行して縣神社の参道がある。平等院と比べて人通りは少ない。
宇治の茶仕事は五月初め八十八夜の茶摘みからはじまって、6月5日の縣祭で打ち上げとなる。
かつて、5月中に製茶作業をすべて終えた製茶業のひとびとが、縣祭の日に遅くまでそぞろ歩きを楽しみ境内はおおいににぎわったそうだ。



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(参道沿いには大きなお茶屋さんがならぶ)


このたび、この縣神社の茶室・棠庵での茶事にお招きいただいた。招いてくださったのは藪内の若武者。いつも茶事茶会に関するあれこれでたいへんお世話になっている。



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(参道沿いにある橋姫神社。宇治橋、、といえばやはり和歌は橋姫よね。なぜか住吉社とならんでお祀りされている。かつては宇治橋《少し飛び出た》三ノ間に祀られていた。
     
       さむしろに衣かたしき今宵もや 我をまつらむ宇治の橋姫   )


お若いのに、いつもちゃっちゃと懐石を作ってしまって、ご自宅で茶事をしょっちゅうされているお茶人さんなので、今回もあれこれ勉強させていただいた。



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(縣神社)


神社は前は通ったことがあるが社務所の深く中まで入り込んだことはないので、こんな機会はなんとありがたい。御連客はほぼ茶友の4名様。

まずは点前座がほぼ燕庵!という小間・棠庵(とうあん)にて炭手前。ここでは秋に毎年藪内流家元による献茶式がおこなわれるそうだ。間取りは三畳台目+相伴席の燕庵に遠慮して四畳半+台目(だったかな、、?)と少しヴァリエーション。しかし上下2つの下地窓を通した光が点前する亭主をシルエットにしてしまうのは燕庵(というか香雪美術館の燕庵写しの玄庵しかいったことないが)と同じ。
織部好みの窓多用、下地窓は障子にプリズムの光をつくり美しい。

藪内十二代猗々斎(先々代)作。


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(今年はじめて花見した!縣神社の枝垂れ桜)



藪内の炭手前。なんといっても灰がアラレ灰、四隅の蛤型。炭の切り方もちがうし、五徳の置き方もちがう。
床には何代か前の家元による茶業にまつわる内容の消息の一部。う〜ん、宇治にふさわしい。



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ここで広間に移動して、懐石をいただく。広間の軸は森寛斎の蕨に鳥。春のけしきやなあ。
ほんまにようこれだけひとりで上手に作るわ、、、の懐石にひとしお感心する。



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今年の初物、鰹の向付、玄米茶などによくはいっている煎った玄米いりご飯、これは湯をそそぐと湯の子と同じで香ばしく、ナイスアイデア。
なかでもね〜、この汁の実に私、感激しました。
実にする予定の麩を買い忘れ、冷蔵庫を探してカボチャと小麦粉を混ぜてすいとん状にしたもの。これがおいしかったし、「水屋をみつくろいまして懐石をさしあげたく、、、、」を文字通り地でいくではないか!これがわび懐石のほんとうの姿だよね。



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(神社本殿 御祭神は木之花開耶姫・このはなさくやひめ)



ご本人も利休の時代の懐石をめざしている、とおっしゃり我が意を得たり、の感あり。藪内では八寸のあとにさらに強肴が出てくるのだが、ほとんど精進のような干し大根の煮物や山芋の焼いたのとか。こういうの若い男の子が作ること自体が驚き。



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(梵天。縣祭の深夜、明かりのない暗闇の中で、梵天渡御と呼ばれる儀式があり、町内の男集がこれを宇治神社まで担ぐ。この神輿の通過する間は、家々も明かりを落として、それを迎えるため「暗闇の奇祭」と呼ばれている。ちょっと内紛があり、2グループがそれぞれやっているらしいが、、、)


懐石については私も常々悩みのタネ。お茶がメインなので懐石はぐっと質素なものでよいのでは、と常々思っている(料理の腕にも問題あるが)。しかし、中には会費に料理が見合わないとか、ご馳走がなくてがっかりとか、直接言われたことはないが、そういうことを言われた、、という話も聞く。利休百会記では一汁二菜か三菜が多いというのに。
高級料亭からとった料理ばかりをありがたがるのは本末転倒ではなかろうか。




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老松さんのわらび餅の主菓子をいただいて中立、再び棠庵にもどって後座。
口の広い竹の花入には、枝先に行くほど花が大きく咲いている梅のような白い花。(普通根本が花で先が蕾だが)からもも?といわれたか?錆の出た黒い床壁にこの白い花が実に見事に映える。

茶花を扱う花屋さんでいっときバイトしていたらしく、茶花についてあれこれ、花入との映りとかたくさん勉強して入れてくださったそうだ。
濃茶も藪内お好み「憶昔(いくじゃく・同名の茶室が西本願寺にあり)」、おいしくいただいた。なにせ(ナンチャッテ)正客なので一番に熱々をいただけるシアワセ。

座をあらため薄茶席。
新たに軸と花を代えて。小さい深い赤の紺侘助の花色が好き。

「陽春布德澤(ようしゅんとくたくをしく)」、対句は萬物生光輝(ばんぶつこうきをしょうず)
春は蘇り輝く季節。

煙草盆もこちらの流儀では火入れ灰吹きにキセルはもちろん香箸香袋までセットされるらしい。火入れの灰も白い藤灰。(風炉も藤灰)

おいしかったのでお薄をそれぞれ二服ずついただく。きんかんグラッセの干菓子もおいしかった。
水車もしくは片輪車紋(牛車の車輪の乾燥を防ぐために川に車輪を沈めてた平安時代の風習)の棗が宇治川を連想させてよい〆だった。(茶杓も水にちなんだ銘だったが、スンマセン忘れました、、、、)




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(宇治川にかかる朱色の橋)



お手伝いの水屋の方にもご苦労様。でもほとんど一人で切り盛り、すごいなあ、、、、。私なんか一人でよたよたでもできるようになったの、ごく最近だもの。これから先どんな茶人になるのか、末恐ろしくもあり、楽しみでもあり。
また今後ともよろしく。そしてありがとうございました。




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我がテリトリー、岡崎にかえったころに満月近い月が東山の上に出ていた。宇治川で眺める月も美しいだろうなあ、、、、




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