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2023-10

金沢・陽春の茶会〜11代大樋長左衛門襲名を記念して - 2017.03.26 Sun

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もしかして10年ぶりくらいかしら、金沢。
北陸新幹線は関西にはまだきていないので、恩恵にあずかれないが、京都からサンダーバードだと途中福井にしかとまらないので意外と楽であった。




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今回は金沢日帰りで○交社(^_^;主催の茶会旅行へ。
昨年大樋長左衛門を襲名された11代と、先代の陶冶斎さんが席主をされる茶会である。

まずは中村栄俊記念館にて陶冶斎さん席主の濃茶席。
中村栄俊翁は金沢の中村酒造の社長でお茶を愛したお茶人でもあった方。昭和初期に建てられたその旧宅が記念館となってここに移築されたのが昭和40年だったそうだ。




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桧をふんだんに使った邸宅だが、やはり京都の町家とは趣が違う。なんとなく雪の多い土地のお屋敷という印象。

こちらのお屋敷の二階の大広間(一生懸命勘定したが27畳??という中途半端な畳数)にて濃茶席。
土壁はベンガラ色でこれも京都ではあまりお目にかからないが、金沢の東茶屋街のお茶屋さんで同じ色の艶っぽい壁を見たなあ。




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欄間がまたゴージャスで、金沢っぽい。盃をかかえている猩々と酒の瓶から酒を汲んでいる猩々が見事な浮き彫りになっていた。もしかしたら中村翁もお茶だけでなく能楽もお好きだったのかな。(野村得庵さんみたいに)




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(なんとりっぱな一枚板!)



お点前は、、、、やっぱり業躰の奈良先生(^_^;)(大樋陶冶斎の次男さん)。
お菓子が金沢と言ったらここよね、の吉はし製のきんとん。薄紅色で黒糖がしっかりきいたとても美味しいお菓子だった。(京都の和菓子と遜色ありません)


陶冶斎さんも奥様とご挨拶されたが、御年90歳になられる。ますますお元気で11代との合作もされておられる由。



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待合の軸が、鉄斎が描いた蓮月尼(鉄斎が師事していた)の作陶図というのが珍しくてとてもよかった。老境にはいった蓮月さんが轆轤を前に削り?の道具を持ってすわっているところ。彼女は引っ越し魔であったが、今私が住んでいるところの岡崎にしばし寓居して作陶に励んだというので、なんとなく親しみを感じている。


あとはもう初代から当代までの大樋オンパレードである。茶入は飴釉の棗型、初代大樋が印象深い。釜が5代寒雉となれば茶杓はやっぱり仙叟よね。なにせ三千家に別れた後の裏千家の初代だものね。

古銅の花入が八百善旧蔵(宗和箱)というのも興味深い。酒井抱一に所縁のある八百善、仙叟より少しあとになるが。

大広間のこれまたりっぱなベンガラ色の床にかかっているのが、加賀前田家5代藩主綱紀候の一行「登楼万里春」というのも土地柄を考えるとぴったり。




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記念館の前にはまだ梅がこれから、というころあいでやはり京都より北陸の春はゆっくりなんだなと思う。




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記念館の前には金沢市立中村記念美術館があって、これが思いの外すばらしいコレクションであった。
中村栄俊翁は表千家でお茶も習われていたそうで、お道具数寄の方は金沢へ行かれたときには是非行くことをおすすめする。




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たぶん根津の井戸茶碗展にもでていた青井戸「雲井」はここのコレクションであったか!!
長次郎の赤楽「手枕」をはじめ、名品の本にのっているようなものがたくさん。

一番心ひかれたのが龍泉窯の砧青磁平水指「青海波」。宋時代の名品、六弁の輪花になってきれこみがくっきりきっぱりの鋭角、これは美しい。輪花にあわせて誂えた塗蓋もまた美しかった。




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濃茶のあとは貸し切りバスにて移動、金沢といえばここ、というくらい有名な料亭つば甚へ。創業からこのかた約260年というからやはり金沢はすごい。ここも京都と同じく戦災をまぬかれた土地だからなあ。




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こちらでいただいた点心。おいしゅうございました。



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大広間。真ん中に仕切りの舞台があるのだが、これをあけはなつとなんと200畳敷!
舞台は金沢の花街の芸妓さんが舞ったりするのに使われるとか。さすが古都だわ。





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大広間の片隅には古い由緒有りそうなお雛様の寝殿飾、そこに据えられていた金沢の祝菓子・金花糖の鯛。
やはり金沢も御雛飾りは旧暦でしはるんやね。




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こちらは今の女将さんが生まれたときのお雛飾のそばにいた可愛い子。これも江戸を下るまいと思われる。




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玄関から入ったときは、ここは二階のはずが、犀川の土手側からすると5階になるこの不思議。犀川が流れる遙か向こうに雪をかぶっているのが医王山。あの向こうはもう富山かあ。




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最後のお見送りは女将さん以下みなさんで。ご覧のように男性スタッフはみんな袴姿なのがツボであった。(茶席では珍しくはないが、料亭でこういうのは初めて)みなさんとても感じが良かったし、いろんな質問にもすらすら答えてくださる。さすがつば甚である。




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最後の薄茶席は大樋長左衛門窯・美術館・ギャラリーにて。
かつてここは窯場であったが、清水坂と同じく、環境問題にて窯場は田舎へ移転されたとか。
この左手の大きな松は金沢市指定樹木、樹齢500年の赤松。数十年前火災にあったとき、枝を落としながらも切り口を自らの松脂で塞ぎ長らえたという。その名も「折鶴の松」。


こちらのお屋敷内には茶室がたくさんある。玄々斎命名の「芳土庵」と、前田家当代利祐命名の「松濤間」をつなげて薄茶席に。席主は当代大樋長左衛門さん、お点前は奥様。

ちなみに火事にあったあと、このままではいけない、と自ら設計し再建に尽力されたのが鵬雲斎大宗匠であった。やはりそこは仙叟の力よね。「陶土軒」という小間で、真珠庵の庭玉軒みたいに蹲居が室内にある。金沢は雪国だしね。

他にも 隈研吾設計の立礼席もあるらしい。

当代大樋さんはほぼ同じ年代なので、なんとなく親しみを覚えるし、またトークもお上手だ。作品を拝見するにどこか当代の楽さんと同じようなテイストを感じるわ。どちらも実はモダンアート好き?!

床の軸がたくさんの現代アーティストの合作というのもモダンアートっぽい。
今はなき伊住宗匠・グラフィックデザイナーの麹谷宏・俳人の黛まどかの三人の連句に糸桜の描き表装が千住博、軸先がご当人、箱書きが坐忘斎お家元という。

          いとさくら 日毎の風に 色つむぐ

            野点の夢に 風船の影

              旅立ちの 空の深きに 蝶生まれて


お道具もご本人の作品と現代作家の作品が主。
伊住宗匠手づくねの飴釉茶碗もでていた。生前の交友関係がうかがえるようなお道具。ご存命なら当代の大樋さんと同じくらいのお年であったはず。

脇床で清水公照さんの(東大寺元管長)土仏に出会えたのがうれしい。公照さん好きなんだ。


ギャラリーで大樋の茶碗も拝見したが、ほしいな、と思うのはどれもお高くて、、、(^◇^;)



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現地解散後、他をどこも見物せず金沢をあとにした。
日帰り弾丸ツアーだったので、金沢観光はほぼできなかったのはちょっと残念。

こういう金沢らしい古いお家を見たり、タクシーの運転手さんにここが旧制四高、兼六園、21世紀美術館、、、、と車中でガイドしてもらったのだけが観光といえば観光であったかな。
またゆっくり訪れたいものだ。北陸新幹線がはやく京都まで来ればいいのだけれど。


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● COMMENT ●

しぇるさん、お早うございます!金沢へのハードスケジュールですね!でも素敵なお茶会、良いですね!!金沢、昔父が単身赴任で行き遊びに行ったこと思い出します。あれから行っていないのでまた行ってみたいですね!若い頃と年を取ってからでは同じ町でも見るところが違って来ますね!!お茶席の床の間、古い骨董物も素敵ですが新しい今の作家さんのお軸などもまた素敵ですね!!千住さんの表装見てみたいですね!私は昨日姉と青山にある根津美術館に「高麗の仏画」を見に行きました。アップしています。気が向いたら見てみてくださいね!

みゅうぽっぽ様

昨年の今ごろは根津の大師会行きました。よかったなあ、あの庭園とお茶室。
高麗の仏画は昨年京都の泉屋博古館(だったかな?)でやっていたのを行きそびれたんです。今は東京ですか。
4月以降東博弾丸ツアー予定ですが、それまでには終わってますね、残念。


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