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2017-06

紫〜染織史家・吉岡幸雄+染師・福田伝士 ドキュメンタリー - 2013.05.18 Sat

murasaki_chirasi.jpg

ぎりぎり京都の上映に間に合った。

川瀬美香監督・撮影 映画「紫」。(公式サイト

日本の伝統色=植物からだけもらった色の再現をライフワークとする、京都の染司よしおかの五代目、吉岡幸雄さんと、試行錯誤しながら染色の実際を担当する先代から仕える染師、福田伝士さんの二人三脚のドキュメンタリー。

縦軸に、東大寺二月堂お水取りのときに十一面観音を荘厳する椿・糊こぼしの材料となる和紙をおさめるまで。横軸に植物染料による染めの色の豊かさ、自然からもらった染料にこだわるがゆえの困難さなど。

吉岡さんは40歳までは美術工芸関係の出版にたずさわっておられた。家を継ぐことになったとき、すべての化学染料を放棄、すべて植物由来の染色にきりかえるという決断をくだされた。
化学染料ができるまでは、日本では古来の色をすべて植物で染めていたわけで、いにしえの染師の仕事をみるにつけ、その色の独特なニュアンス=化学染料では表現できない、、や淡い色の中にさえある豊かな色彩に惹かれ、それを再現したいと思われたそうだ。

正倉院の時代から、古来の染師のわざはすでにMAXであって、現代においては、それに追いつくことができないと言われる。さらに夾纈(きょうけち)といわれる、現代ではすでに失われた高度な染色法すらあったと。それらを復元すべく仕事をされているうちに出会ったのが薬師寺玄奘三蔵大祭、東大寺二月堂お水取りにまつわる染色物。

失われていた伎楽を復活させた薬師寺玄奘三蔵大祭()。その伎楽の衣裳50組をすべて新しく染色して再現したのが先代だったという。その縁で吉岡さんは今でもその衣裳、小道具を古典から再現した紋様、古来の染料による色彩、古来の縫製の技術にのっとって担当されておられるとか。

薬師寺や東大寺の幡(仏教寺院でたてられる幟のようなかざり)も担当され、さらに二月堂お水取りの椿の造花を作る和紙を毎年奉納されている。

P1020455.jpg

これはニセモノですが、こんなイメージね。

その和紙を染めるのに芯の黄色は梔(くちなし)を、そして赤は山形、伊賀上野の紅花を。
昔はどこででも栽培されていた紅花が、いまではほとんどが山形でしか手に入らない。紅花染料を確保するために吉岡さんは山形や昔の産地だった伊賀上野で、頼み込んで栽培してもらう契約農家を開拓までされている。(九州竹田の紫根、工房近くの蓼藍なども農家との交渉で栽培してもらっている)そこからしないと、もう植物による染色は日本ではむつかしくなってきているのか、、、

しかし、必要な紅紙を作るのに紅花60kgがいりようなのに、日本でかき集めて集まるのは15kgほどなんだとか。そんなに少ないのか?!とびっくりしてしまった。残りは残念ながら中国からの輸入紅花となる。
吉岡さんが言うには、紅花の色素含有量が年々減ってきているらしい。かつて自然と共存してきた人間が、近代になってさんざん大地を痛めつけたツケがまわってきていると言われる。そういえば日本の農業自体が疲弊をいわれて久しい。こんなところにも影響がでているのか、と暗澹たる気持ちにはなるが、私は農業の苦労を知らないのでそれをいう資格はない。

自然からもらった日本古来の色を復元したい、その吉岡さんのつよい意志を実際の形に変えているのが染師・福田さん。どこか飄々としたおじさんだが、この人なしでは染司よしおかはなりたたない。染めの技術は大筋は成書があっても、実際には役に立たず、経験と勘だけがものをいう世界なのだそうだ。
工房の染めの道具はボールやお皿、スプーン、、となんだか料理を思わせる。料理の味付けもスプーン何杯、では再現できない+αがある点で共通しているのかも。
そして京都の豊かな水が染めの色をいっそう冴えさせるのかな、と思う。

タイトルの「紫」は、吉岡さんの一番好きで、一番染めるのがむつかしい色からきている。
紫色は、紫ではなくて白い花をさかせるムラサキ草の根からとれる。この草は脆弱なので生育がむつかしく、古来より貴重な染料であり、これで染めた紫の衣裳は高貴な人しかまとえなかった。紫の物語といわれる源氏物語のように、高貴で奥深く、そして妖艶な色、、、それが紫根の紫。
(ちなみに私は下々のものなので紫のものは洋服も、着物もございません^_^; 似合わないし)

映画の最後、染め上げた椿の造花用の和紙に「奉 吉岡」と墨書した熨斗をかけ、丁寧に風呂敷でくるんでお水取りの練行衆の潔斎所である別火坊(ここでお水取りにさきだち練行衆たちは協力して造花をこしらえる)へ自ら運ぶ吉岡さんの姿が。
紅で染めた和紙は、もとは同じなのに梔で染めた黄色い和紙より重いという。紅花の命がたしかにそこにこめられていて、それでこそ、十一面観音に献げられるにふさわしい荘厳となるのだな、と思う。
(ああ、一つで良いからおさがりの椿、ほしい、、、)



*京都での上映は終わりましたが、18日から神戸の映画館(元町映画館)で上映されるそうです。吉岡さんの舞台挨拶がある日もあるそうですよ。





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● COMMENT ●

こんばんは

食い入るように読んでしまいました!!
予告編の中でちらちらと見える染料のなんと美しいこと。。。
私も見たい~~~。(涙)

お水取りの椿、憧れですよね。
手に入れられなくても一度手にとってしげしげと眺めてみたいです。

ご無沙汰しております。
自分も読んでしまいました・・・
古代から続く色とは本当に自然に則した
良き色ですよね。
糊こぼしの椿、今年は、自分も紅花と梔子で紙を染めて
真似て作り「なげいれ」てみました。
できれば、お下がりが縁あって出会えないかなと
切に思っております。

先日、「モンサントの不自然な食べもの」という怖い映画を観ました。
遺伝子組み換え作物を使って世界の食物市場を支配しようとする巨大企業の悪行を淡々と暴くドキュメンタリーです。
今は日本の農業でも種の取れない一代限りの種ばかり販売されているそうですね。
これほど農業を無茶苦茶にしてしまって、果たして取り返しはつくのでしょうか?
暗澹たる気持ちになります。

cox様

さすがにそちらでは上映されないでしょうね〜今のところ(^_^;
こちらでもミニシアターでしかやってません。もっとたくさんの人に見てもらいたいと思うのですが。
映画では、染め上がった布を水にさらしてさらして、、、の画像と工房に満ちる水の音が印象的でした。

nageire様

拝見しました、その椿。ご自分で紅花から色をつくられたのですか?
すばらしい!!
やはり化学染料とは色の複雑さがちがうのでしょうね。

東大寺関係者のツイッターで造花を手に入れた、、というツイートをみたことがあります。
なんとか関係者、、、いないかな〜、、、(^_^;

relax様

(今日のコメントは横文字のかたばかりですね^_^;)

より見栄えの良いもの、より嗜好にあうもの、効率性、、、を求めすぎた私たちのあやまちなんでしょうね。かといって、いまさら昔のような生活にはもどれない、ジレンマをかかえた時代です。

化学染料よりも植物染料の色にひかれるのは人間として本能みたいなものかもしれません。


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