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2023-10

陽明文庫〜虎山荘・紅葉の茶会 - 2017.10.26 Thu

台風が来て、大雨が降って、でも茶人は行くのだ。雨が降っても槍が降っても(*^^)v
なにしろ相手は近衛家の名宝を擁する陽明文庫であるから。




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陽明文庫はご存じ、近衞文麿が戦前に宇多野に建てた近衛家伝来古文書、典籍、記録、書状、古美術などおびただしい資料を保管している施設。
5年前、京博であった陽明文庫名宝展に行ったとき、あまりの古文書の多さにびっくりしたものだ。




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敷地内の虎山荘は、そのお宝を展覧するための数寄屋造りの建物。

今回、ここで釜を掛けられるのが堀江宗蓬先生。今年3月孤篷庵で雛の茶会をされた遠州流の女流茶人であらせられる。
亡くなられた御夫君は古筆研究者であり書道史家の堀江知彦先生、古筆の鑑定家でもあり、箱に「知彦」と書いた軸をみたことがある。さらに我が敬愛する會津八一先生の書道のお弟子さんであったとか。
ご本人も負けてはいない。書道、茶道、華道、箏曲それぞれ一流の先生に師事され、号を持たれている多彩な文学博士なのだ。




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寄付

こちらには陽明文庫所蔵の後陽成天皇宸筆の竹雀図。

第2寄付である三畳台目の小間には七回忌をむかえられる遠州茶道宗家の先代・宗慶さんの遺影が飾られ花が手向けられていた。堀江先生は茶道をはじめたときからずっと宗慶さんに師事しておられたのだ。こちらにも陽明文庫の後西天皇宸筆狂歌詠草。この中回しの裂が小袖の裂のようでとても美しかった。





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奥座敷は遠州茶道宗家・小堀宗実家元による濃茶席。

なんと!国宝がかかってましたよ(;゜0゜)
後鳥羽上皇宸筆熊野懐紙。(もちろん陽成文庫所蔵)1201年に書かれたことがはっきりしているもので、深山紅葉、海辺冬月をうたったもの。

そしてその前には、、、重文の砧青磁「千声」が!(国宝の「万聲」はただ今京博にいてます)これにシランをいけていたが、花を実際にいけて床の間に飾ってある様子をみるのは初めてだ。なんとまあ贅沢なこと。万聲に比べると一回り小さく、釉薬の貫入もけっこうみられるが、四畳半くらいの部屋ではこのサイズがふさわしい感じ。

一席の人数が多かったので、床の間の横の付け書院の裏にすわることとなったが、お茶を飲むには不便な場所ながら、目の前、息がかかるくらいの至近距離で蒔絵伽羅箱「物かは」をじっくり拝見できることになったのはかえってありがたかった。足利義政所持といわれる小箱で、脇の金具が葦手で「物」「かは」の文字になっているところまで、はっきり見えた。
(「待つ宵に ふけゆく鐘の聲聞けば あかぬわかれの 鳥はものかは (小侍従)」

写真は主菓子で亀末廣製、銘を「面影」
中の餡が大徳納豆風味で、これ普通の餡より好きかも。お家元がお父上の宗慶宗匠を偲んで面影とおつけになった。




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広間での薄茶席は堀江先生と孤篷庵ご住職小堀亮敬和尚の席。

まずは書院の床の間に飾られた春日鹿曼荼羅(重文・陽明文庫)に打たれる。鹿島明神を春日大社に勧請した時の鞍に榊の木をのせる白い鹿の曼荼羅はよく見るが、これはそのなかでも最古のものなのだそうだ。春日大社は藤原家の社であり、近衛家はその藤原家の宗家的存在だからね。
さらにその前に、東大寺転害門古材(天平時代)の花器に生けられた大きな紅葉した楓の枝の迫力にもおどろかされる。そう言えば雛の茶会の時にも、床の間に奄美大島から取り寄せたという枝垂れ桜が天井から降り注ぐように青竹にいれられていたっけ。さすが、華道も極められただけある。

しかもそのオチが「鹿(鹿島明神)といえば紅葉でしょ?」なので、思わずガッテンガッテン!

風炉がペルシャの香炉だそうで、まわりぐるりにアラビア語で恋の歌が書かれているのだそうだ。
主茶碗が井戸脇「さとり」。御本の入ったとても優しい感じの茶碗であった。点出の茶碗はそれぞれ違って、先生が亡き御夫君といっしょに旅をされた世界各国の器。イギリスあり、スペインあり、トルコあり、ちなみに私のはアメリカのボウルであった。一見唐三彩にもみえるものであった。
煙草盆はパリで求めたアンティークの箱で、内側にインド古代裂を貼った物。堀江先生のお道具はいつもダイナミックで楽しい。お話しも楽しい。




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点心を中座敷でいただいたあと、お待ちかね、陽明文庫の中へ。




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(あ、手前の傘を畳んで折られるのがお家元です(^_^;)


ここでは荷物をおいて、マスクをして、20分だけの時間限定で入庫できる。湿気がはいらぬよう、ドアも半開きという徹底ぶり。
館長の名和修先生の解説の語りがまた洒脱。

名宝展でも見た国宝・御堂関白記(中宮彰子が親王を出産の場面とか)、同じく国宝倭漢抄、小倉色紙も!

でもでも、一番のお目当てはこれだ!

近衞家煕公(予楽院)遺愛の茶杓箪笥!名宝展ではガラス越しであったが、ここでは目の前で見ることができる上、31本をまるっと全部共筒といっしょに展示(うち1本、後西天皇のは茶室に)。
後西天皇宸作、利休、紹鷗、光悦、織部、宗旦、瀬田掃部、佐久間将監、金森宗和、細川幽斎、三斎、、、なんとため息のラインナップである。
これで心の中では台風も土砂降りもぶっとんだヽ(≧∀≦)ノ




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帰りに記念品にといただいたのが、堀江先生と茶道との関わり、特に小堀宗慶宗匠との出会いとエピソード、幼少期からの家庭のエピソード、ここ数年に催された茶会の美しい写真集でもある「茶艶」という書籍である。

面白くていただいてすぐ全部読んでしまった。お茶との向き合い方の真摯さ、御夫君の深慮、広い方面でのお茶の交友、そして特に感動したご家庭での母上のすばらしい子育ての姿勢、先生のお茶はだからダイナミックでインテリジェンスに富み、グローバルで(うわ〜外来語の羅列、、、)おもしろいのだな、とその秘密を垣間見た,,,気がする。




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● COMMENT ●

詳しいご報告、ありがとうございます。
中々ゆっくり読めなくて、楽しみにしていたのにコメントが遅くなってしまいました。
本当に本当に凄い宝物だったのですね。近かったらどんなにしても行ったのですが残念です。JRは動かないと分かっていたので、モンペで運転しようか、洋服で行こうかと悩みましたが、風が強かったので諦めました。次を期待します。堀江先生がどうぞいつまでもお元気でいらっしゃいますように!

そらいろつばめ様

ほんとうに残念、だけれど台風には勝てません。無理して怪我でもされたらもっと大変です。正しい選択だったと思います。そらいろつばめ様のぶんまでしっかと見てきましたので(^_^; うまく言葉にできかねることもありますが、こんな感じで。

陽明文庫内に入るの初めてで、興奮しました。それまでここと堀江先生と深いつながりがあるとはしらず、これからもお元気であれば、こちらで茶事をなされることもまたあるだろうと、私も期待しています。
来年はいよいよ不昧公没後200年で、松江らしいです。行けそうですか?


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