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2023-09

観世会五月例会・2013〜「賀茂」 - 2013.05.28 Tue

京都に移住したらするぞ〜!と思っていた数々の事の中に、もう3年になろうとしているのにまだ完遂していなかったものの一つが観世会館デビュー。

お能を拝見する機会は何回かありましたが、せっかく徒歩圏内にある観世会館なのに、まだ行ったことがない。だって他のことがいろいろと忙しくて〜、、、、(^_^; ようするにプライオリティがちょっとお茶より低い、、、

で、今回は強制的に行くべく、早めに五月例会(毎月日曜日に例会がある)のチケットを入手。

P1030519.jpg

やっと観世会館デビューです。
五月の演目は「賀茂」、狂言「附子(ぶす)」、「籠太鼓」、「昭君」。(残念ながら所用あって昭君のみ見られず。)
座席は行ってから選べますが、中央の席はお能をご自分でもされているとお見受けする熱心なファンでほぼ満席。
私は前の方だから、と柱の影を選んでしまって、失敗!と思っていましたが、いやどうしてどうして、斜めながらも本舞台も、橋掛りなどま正面にみえる案外よい席でした。
今回は「賀茂」の話題を。

さて、時は五月、賀茂の祭(葵祭)もあったのにちなみ、初夏にふさわしい大作は「賀茂」。
舞台正面に白羽の矢をたてた「矢立て台」がおかれています。

都の賀茂神社と同一明神をまつる播州・室明神の神職が賀茂神社へ参詣を志し、御手洗川の清流に二人の里女が神にそなえる水を汲んでいるところにいきあたります。

  御手洗の聲も涼しき夏陰や 糺の森の梢より 初音ふりゆく ホトトギス

神職は川辺に立てられた白羽の矢のいわれをたずねます。里女は「ご神体とも御神物ともとにかくありがたいものだ。」と矢のいわれについて語ります。
昔この賀茂の里に「秦の氏女(うじにょ)」という女性がいて、朝な夕なこの川で水をくみ、神にささげていたところ、ある日白い矢が流れてきて水桶にとまった。

   ある時川上より 白羽の矢一つ流れ来たり この水桶に留まりしを 取りて帰り庵の軒に挿す

すると思いがけず氏女は懐妊し男児を産んだ。この子が三才になったとき、「父は?」と問えばこの矢を指し、たちまちこの矢は鳴る雷となって天に昇り別雷(わけいかづち:ちなみに上賀茂神社の正式名称は賀茂別雷神社)の神となり、その母子も神となった。

   賀茂の川瀬も変わる名の 下は白川 上は賀茂川 、、、瀬見の小川の清ければ 月も流れを尋ねてぞ、、、

都の川づくしの歌を歌いながら里女は姿を消します。

IMG_1387.jpg

ついで末社の神があらわれ今一度、賀茂明神のいわれを語り舞を舞います。
ほどなく御祖(みおや:ちなみに下鴨神社の正式名称は賀茂御祖神社)の神が神々しい天女の姿で現れ美しい舞を舞います。御祖神が袖を川にひたし涼んでいると、

  山河草木動揺して まのあたりなる別雷の神体来現し給えり

大飛出の面をつけ、赤髪に四手のついた唐冠のおどろおどろしくも神々しい別雷の神が雷鳴をとどろかせてあらわれ、五穀豊穣、国土守護を予祝しあばれまわります。

そうこうするうちに御祖神は糺の森へ飛び去られ、別雷神も天へ上がっていき、舞台はおわります。

IMG_1384.jpg

能楽を見る人が少なくなっているのは否めません。理由のひとつは現代劇をみなれたわれわれには進行のテンポがあまりに遅い、ということがあると思います。場面の切替の間の地唄があまりに長くて、ふと意識を失ったりして(^◇^;) 考えれば、これだけの単純なストーリーを1時間以上かけてやるのですから、早い生活リズムに慣れた現代人には普通の演劇としてみるのはちとつらいかも。

でも、能楽しろうとの私でも、この「賀茂」は登場人物が多いし、衣裳は美しいし、雷神の舞はケレン味があって気持ちよいし、楽しむのはストーリーではなくて、その時空間を味わうことなのではなかろうかと。

御祖神をやっていたのがあとで男前能楽師・吉田篤史さんだったと気づきました。まあ、面をつけておられたので、お顔を拝することはできませんでしたけどね。とても気品のある舞姿で、あでやかな瓔珞冠の天女を演じておられました。
後シテの雷神は前シテとして里女を演じた橋本光史さん。前段とうってかわってかっこいい雷神を演じられました。ややユーモラスな狂言方の末社の神、荘厳で優美な御祖神、そしてやはりオオトリにふさわしいのはこの雷神でしょう。見ている方も雷神が最後にでてくるのがわかっているので、いまかいまか、とドキドキします。

この能では、軒に挿した矢=別雷神になっていますが、上賀茂神社由緒ではこの3歳の子が別雷ということになっています。ここで秦の氏女となっているのが由緒では玉依姫、では別雷の父=白羽の矢は一体だれ?ということになりますねえ。乙訓神社の火雷神とか、松尾大社の大山咋神とか説があるようです。

観世会の会員になっておられる茶友のO様にもお目にかかることができ、能談義も楽しかった。こんなお仲間は貴重です。

さて、この「賀茂」の檜書店(二条通りの能楽専門出版社)の謡本を買ったのはこの日の演目を確かめたかったのと、もひとつ、

P1030517.jpg

きたる6月最初の週末に平安神宮である薪能の演目でもあるからなのです。(昨年の薪能
多分1回みただけではとらえきれなかったものを、何回も見ることによってさらに深く味わえるのではないかと期待しつつ。

かつて京都では室町の旦那さんなど、お茶とお能はかならず嗜んでおられたらしいです。そういえば武士もそうだった。一人前のおとなには必須な教養だったのですね。私は茶道はともかく、まだまだ能楽ファンともよべない素人ではありますが、能の演目は茶の湯の道具の銘や画題とも深く関わりがあり、興味はとてももっているのです。せめて題名を聞いて、どういう内容なのか思い浮かべられるくらいにはなりたいな、と思うのであります。


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● COMMENT ●

ぼくもお能は初心者の域を出ませんが(域を出ているものは何もない・笑)、年に何度かは観に行きます。
ずっとお謡いを習いたいと思いながら一歩が踏み出せず…。
お茶の先生は先日、国立能楽堂での発表会でお謡いになられました。
今年こそ習いに行きたいです。

ご無沙汰しております。
狂言は好きなんですが、シェルバンさんがご指摘のように、あのスピードについていけなくて、何度か意識を失ったことがありました(笑)
右から左に向きを変えるのに、何分かかるんだ??と…^^;
日本芸能にはもっと親しまなくてはいけないですよね。その心を一番知っている日本人なんだから♪
平安神宮の薪能は6月1日からではなくなったのですか?

relax様

謡は私も習いたいのです。でも時間的にリタイヤしないと無理っ!
先をこされそうです〜〜。
発表会でも出られるときは是非ご一報を!

こまち様

薪能は1日・2日ですよ〜。雨が降ったら順延なんでちょっと困るんですけれども。
昨年は雨がぱらついてさぶかった、、、
あまり動きのない演目は私もつらいです。よく意識を失います。(おほほ、、)

最近能楽離れに危機感を感じたわかい能楽師の方々が、もっと能に親しんでもらおうといろんな試みをされています。これがけっこう楽しいのです。東京の能楽界でもきっとそんなイベントあると思います。また一度京都観世会館へもどうぞ。

しぇる様
その「もっと能に親しんでもらおうという若手能楽師の試み」に見事にはまった一人です。
一昨年の大連吟に出たのがきっかけで、お謡を習い始めて1年あまりになります。
大連吟でご指導いただいた京都の若手能楽師の先生が
横浜に月一回教えに来られててそこに入れてもらってます。
来月発表会なので、本当は毎日稽古しなければならないのですが、
謡うのはとてもエネルギーがいるので、おなかが空いているとできません、私の場合。
お茶との関わりもおっしゃる通り深いのでとても勉強になります。
正座が必須なのも共通してますね。(でも、私は座椅子をつかってます^^;)
先週西本願寺の親鸞上人御誕会法要で祝賀能がありましたが、
「敦盛」とてもよかったです。国宝の飛雲閣でのお茶席もありました。

ハマミケ様

>もっと能に親しんでもらおうという若手能楽師の試み」に見事にはまった、、、

あははは、、、はまりましたか、能・トラップに!
能楽師さんも甲斐がありましたね。謡い講なんかにもでられるのですね。いいな〜。
またそのうち私も、、、(何年先かな〜、、、、、)できれば仕舞なんかも。あの足さばき、上半身をゆらさない歩き方は、茶道でもつかえそうです。

飛雲閣、行きたかったんですがね〜、、、、(T_T)

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鍵コメ様

この日の講演の狂言が「附子」でした。小学生の頃、国語の授業でこれをやりました。私は主人役をやりましたので今でもはじまりのセリフを言うことができます。「このあたりのものでござる。こんにった(今日は)所用あってやまのあなたにまいろうと存ずる、、、」子供の頃に刷り込まれた物はいつまでも残るのですね。是非今の子供にも音読させたいものです。
大連吟については調べてみましたが、いずれも平日なので残念ながらリタイヤするまでは無理そうです。


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