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「心理学者の茶道発見」 岡本浩一・著 - 2018.01.19 Fri



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著者の岡本浩一先生は、社会心理学者であり裏千家茶道文化賞もとられた茶人でもある。現在裏千家雑誌淡交に「茶道心講」を連載しておられる。
茶道心講の連載は毎月楽しみで、それをまとめた「茶道を深める」、「茶道に憧れる」は茶の道に精進する上での心の座右の書であるのだが、本書は20年前の連載開始のころの最初のころのをまとめたもの。実はこれは未読であった。今回新書版として加筆修正された復刻版を読む機会を得た。

本書の読み始め、「茶道を深める」などとくらべると心理学的専門用語も多く、やや難解な印象もあったのだが、読み進めるうちにああ、やはりいつもの茶道心講だ、とうれしく感じた。むしろ茶道心講の、最初からキビシイ刃を突きつけられている感じではなく、ご自分の経験、日ごろお茶をしていて私たちも遭遇しがちな具体的な状景やなどからはいっていて、やさしい感じだ。ところが2回目読み直すと、こうした経験や具体的事例を、実は心理学的に解析し、より納得させてくれる本ではないかと思い始めた。

例えば、茶事茶会の亭主として、毎回いろんな失敗をくりかえして落ち込むことも多いという事例から、自己受容(不完全も受容する)という概念、自己受容からひいては他者受容、茶の湯は他者受容の場である、という解説、自分では言葉にしたくてもうまくいえない感情の動きも、理論的に解説されると、ああ、そういうことだったのか、と妙に納得がいくのである。そうなるとあれほどむつかしくてスルーした専門用語もなんとか理解しようと思えるのだ。

特に他者受容という概念。
「他者受容が高い人と接すると、自分一人でいるときよりも、自分のことが素直にわかる。ゆがみなくありのままに受容された自分の姿をその人の態度に感得するからである。その雰囲気の中にすわるだけで、自分の本心が自分にわかり、自己受容がはじまる。」
いっしょにいて楽しいのにあとで妙に疲れる人というのは他者受容の低い人なんだそうだ。なんとなくどきっとする。他者受容の低い人は自己受容も低いという。そして、数少ないけれど他者受容の高い方を何人か思い、ああいうふうになりたいなと思う。
それに比べ自分は、、、といじいじ悩むのだが。


もちろん学問的なことばかりではなく、お茶の稽古をするときや、茶事茶会の亭主となるときの自分を励ましてくれる座右の銘にしたい言葉がちりばめられている。

「個性発揮のためには型の習得が必要なのである。型にはまって個性が発揮されないように見える人は型の習得が未だ不十分なことがほとんど」

「稽古と平行して知的好奇心(茶道具にまつわるすべて)を充実させようとする人は、単に点前の手順だけ習えばよいという気持ちで稽古にのぞむ人とでは大きな差がついてくるのは当然である。その差はたんに知識や点前の差だけにとどまらない。全人格的な属性としての教養的態度に通じる。」

自分がめざすことはまちがっていない、言葉にあらわせなかったが、言いたかったことはこれだ、と思う一節。


背筋をのばしてまた勉強、そしてお茶の自己鍛錬をしようと改めて思う。ただ熱しやすくさめやすいのが欠点でいつまで続くか問題だが(自己受容(^_^;?)、本書がくれるような刺激を自分に継続的に与えていかないといけないようだ。




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● COMMENT ●

改訂版が出たのですね。
以前のは読みましたが、覚えているのは茶室での亭主と客の距離のこと。緊張と緩和の距離感をうまく使い分けているというのに納得した記憶があります。

他社受容、自己受容、個性発揮と型の習得、稽古と並行しての知的好奇心、みんなバチバチと響いてきます。私も、直ぐに注文します。

『稽古と平行して知的好奇心を充実させようとする人』
非常に耳が痛いです…
点前の稽古はお休み中。並行してお茶のことをいろいろ知りたいと思いますが、時間的金銭的にきつくなってしまいました。
しぇるさんのお茶三昧のブログを拝見して、憧れています。

そらいろつばめ様

感情の問題も、科学的に理論的に解明できたり,コントロールできたり、というのが目からウロコでした。
茶道をするなかで、感情(主にネガティブ)に支配されることなく自分をコントロールできるようになったら、、、どんなにかいいか、と思いますが、どうもまだ修行が足らないようです。でもお茶をやっていなかったら、もっと偏屈な人間になってたかも〜、、という確信はあります。

ひいらぎ様

リタイヤするまでは、自分でかせいだお金だし、がんばって知りたいことやりたいことは追求したいと思っていますが、リタイヤ後がほんとうの茶の湯の勝負なのかも知れません。
経済的に豊かとはいえなくても若い人たちは勉強もし、すてきなお茶をしています。私も老後はかくありたいものだと、、、思っているんだけれどなあ(^_^;どうなるやら。


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